かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:Orchestra & Chor AGORA 第12回演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和7(2025)年7月19日に聴きに行きました、Orchestra & Chor AGORAの第12回演奏会のレビューです。

Orchestra & CHor AGORAさんは、室内管弦楽団と合唱団が一緒になって活動している東京のアマチュア団体です。以下、このエントリではアゴラさんと記載します。演奏会はほぼ年1回で、昨年の第11回、そして11年前の2014年の第6回にも足を運んでいます。

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アゴラさんは大田区民第九合唱団で一緒だったソプラノの女性もいらっしゃることから、第6回以降も行くことをいろいろ考えていたのですがなかなか予定が合わず、ようやく昨年に続いて今年も足を運ぶことが出来ました。このアゴラさんの公演があったことから、万博行きは7月14日にしたという側面もあります(そのおかげで京都ふじのもり管弦楽団さんの第22回定期演奏会に足を運ぶことが出来ました)。

さて、今年はハイドンの「天地創造」。ハイドンのオラトリオですが、名前は知っているけれど聴いたことはないという人もクラシックファンでも多い作品です。キリスト教の聖書がテクストになっていることと、同じ聖書をテクストにしているのであればヘンデルの「メサイア」のほうが断然有名だからということもあるでしょう。アマチュア合唱団もなかなか取り組まない「天地創造」を取り上げたのはさすがアゴラさんだと思います。

ja.wikipedia.org

私も過去にエントリを挙げております。

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上記エントリではオーケストラは約30名でしたが、今回のアゴラさんはオーケストラは46名です。オケはモダンですが室内管弦楽団の基本的な人数そのままという編成です。合唱団は48名。管弦楽と合唱団は非常にバランスが取れていると言えます。その点では、合唱団に合わせた編成と言えるでしょう。

今回ロケーションは世田谷区民会館。昨年12月に第九を聴きに行ったホールです。残響も比較的いいホールです。区民会館となると多目的ホールが多いので残響としてはあまりよくはないホールもありますが、この世田谷区民会館は昨年リニューアルしたばかりで多目的ホールの割には断然残響時間が長くなっているホールです。2秒まではいかないと思いますが1.8秒程度はあると思われ、その点は先日足を運びました京都府長岡京記念文化会館と同じか若干長い残響時間になっています。

その長い残響時間が、ふくよかな響きを生み、今回のような宗教を題材とした作品にぴったりなホールだと言えます。よくぞ選択したなあと思います。値段の点もあったのだとは思いますがなかなか選択できないですよ、多目的ホールは・・・とはいえ、昨年はタワーホール船堀だったわけで、行政が管理するホールを選択しがちな団体だとは思います。その方がいろんな縛りに合わずに公演ができるというメリットはあります(例えば、横浜みなとみらいホールだと、ある程度の人数以上客が入らないと優先的に貸してもらえなくなるということもあると、オーケストラ・ラム・スールさんの公演で指揮者平林さんが述べていました)。

指揮者はオーケストラ・ダスビダーニャでもおなじみの長田雅人氏。アゴラさんはこの長田氏が振っておられるという点も、私は足を運ぶ理由の一つです。今回も全体的に生命力ある演奏になっていました。また、第1部において第1日目の場面では、und es ward Licht.の部分でそれまで座って歌っていた合唱団が立ち上がって歌い出すという仕掛け!最初なぜ合唱団が座って歌っているのだろうと思っていたのですがそういう趣向だったか!と目からうろこ。それにしても、座って歌うということは合唱団にとってはなかなか難しいことで、かつその部分はピアニッシモで上わないといけない部分。最も難しいのですがそれをやすやすとやり遂げてしまうのがもうアマチュア離れしているのですよね。

オーケストラにはやせた音は全く見られないのも相変わらずレベル高いですし(しかも両翼配置でヴァイオリンが対向配置!)、合唱団も伸びやかかつ力強く繊細。聖書の創世記で記されている一日が過ぎていくたびに、賛美と歓喜の歌が歌われていきます。ソリストはソプラノがダブルキャスト。第1部と第2部の大天使ガブリエルは山崎千恵さん、第3部のイヴが本宮廉子さんが担当されましたが、山崎さんは調子が悪かったのか、高音部では多少ぶら下がり気味な印象を受けました。一方のイヴの本宮さんは高音部でも素晴らしい声でしたが、多少くぐもっていたような・・・なかなか調子を本番に合わせるというのは歌でも難しいことなのですが、それでもプロらしい歌唱を聴くことが出来ました。バリトンテノールは伸びがあり豊潤。もしかするとソプラノの両名は子供から何かもらってしまったのかもしれません・・・その点は多少残念でした。

むしろその意味ではソプラノをダブルキャストにしたのは大正解だったと言えるでしょう。なかなかソプラノを2人呼ぶというのは予算的に難しいと思うのですが。違うキャラクターだから別にするのは当然とも言えるかもしれませんが(実際私の上記エントリだとソプラノは二人です)、アマチュア団体ってそんなにお金ないんですよ・・・その中でダブルキャストが実現したのは良かったと思います。細かいところではいろいろあるにせよ、やはりキャラクターの色が分かれているのがはっきりするというのは、物語性のある天地創造においては重要だと思います。

また、ホールの世田谷区民会館もそれほど大きい「箱」ではないのも、今回良かったと思います。オーケストラも合唱団もソリストも思い切った表現ができますし。特にフォルティシモの部分においてはホールを満たす音響が体を包み込むかのようで、とても感動的でもありました。まさに作品が語る世界を表現するにはぴったりな大きさだったと思います。

次回何をやるのかはパンフレットには記載がありませんが、また次回も足を運びたく思います。

 


聴いて来たコンサート
Orchestra & Chor AGORA第12回演奏会
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲
オラトリオ「天地創造」Hob.XXI-2
山崎千恵(ソプラノ、ガブリエル)
本宮廉子(ソプラノ、エヴァ
谷口洋介(テノール、ウリーエル)
春日保人(バリトン、ラファエル、アダム)
春日万里子(チェンバロ
長田雅人指揮
Orchestra & Chor AGORA

令和7(2025)年7月19日、東京、世田谷、世田谷区民会館(せたがやイーグレットホール)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。