かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:第36回多摩市民第九演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年12月14日に聴きに行きました、第36回多摩市民第九演奏会のレビューです。

12月に入り、クラシックのコンサートではベートーヴェン交響曲第9番を演奏するコンサートが増えてきました。私もすでにトラウム・ズィンフォニカーさんの第九を聴きに行っています。

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これに続く2つ目のコンサートとして、今回多摩市民第九を選択しました。じつは他の演奏会を予定していたのですが、様々な理由がありましてどれもチケットが取れず、最終的に多摩市民第九が残っていたため選択したというところでした。ただ、しょうがなく選んだということでもなく、実は主体である多摩市民「第九」を歌う会さんは、2010年12月に、中央大学管弦楽団第64回定期演奏会に合唱団として参加しています。この時もベートーヴェンの第九でした。

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じつはこの時、多摩市民第九も担当オーケストラは中央大学管弦楽団でした。中央大学創立125周年を記念して大学オーケストラがベートーヴェンの第九にすることで、多摩市民第九にも参加するということになったようです。そうすれば練習は基本的に一回で済みますから(本当に第九の練習は大変なんです、合唱団もオーケストラも)。

この時の演奏を聴いて実力のある合唱団であること、多摩市という近場での演奏会であること(特に今年は府中市民第九がお休み)、さらに会場のパルテノン多摩も比較的響きのいいホールであることが、選択した理由です。そもそも、クレセント・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会がこの秋パルテノン多摩でありましたが、その時すでにチラシを見ており、バッティングだから無理だなあとなかばあきらめていたところ、思わぬ形で聴きに行くことになった次第です。

さらに言いますと、今回のオーケストラにも興味があったのです。今回の担当オーケストラば、日野市民オーケストラ。以前からアマチュア・オーケストラを聴きに行きますとチラシが入っているのを見かけるのですが他にひいきにしている団体とバッティングしたりして、なかなか聴きに行けない団体でして、ちょうどいい機会だと思ったのでした。

日野市民オーケストラさんのフランチャイズは、今年の秋に府中市交響楽団さんも使った、ひの煉瓦ホール(日野市民会館)。ここも多目的ホールの割には響きのいいホールでして、響きが近いパルテノン多摩だとどんな演奏をしてくれるのかも楽しみだったのです。

指揮は、日野市民オーケストラの指揮者のひとりでもある、古谷誠一氏。多摩市民第九の場合、指揮者は担当オーケストラの指揮者が務めることが多いように思われます。実際、2010年の多摩市民第九も、指揮者は中央大学管弦楽団音楽監督である佐藤寿一氏でした。

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じつは、多摩市民「第九」を歌う会さんと中央大学管弦楽団とは関係が深く、1998年以降4年ごとに共演を重ねています。最近はその傾向が薄くなっているようで、中央大学管弦楽団が多摩市民第九に参加するというケースを見ません。おそらく、中央大学管弦楽団少子化で中大生だけではなくなってきていることも関係しているのでは?と思います。そのため今回は、日野市民オーケストラさんが選択されたという側面もあるかもしれません。

一方の日野市民オーケストラさんは何と、今回ベートーヴェンの第九初演奏だとのこと。一回は演奏していてもよさそうなものですが・・・びっくりです。そうなると、どんな演奏なのか、とても気になります。

今回の曲目は以下の通りです。

ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」序曲
ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」より「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」
ベートーヴェン 交響曲第9番

いやあ、すごい曲を第九の前に選択したなあと思います。「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」は、実は私も川崎合唱連盟合唱団「アニモ」の一員として神奈川フィルと一緒に歌ったことがありますが、まあ息継ぎが大変な曲なんです。フレーズが長く、その間でどのように息継ぎをすればいいのか、楽譜を見て固まったのを昨日のように思い出します・・・

ナブッコの序曲と当該合唱で、15分ほどで、合唱は4分ほどしかありません。ですがその4分がものすごく長く感じるのです・・・ですが、多摩市民第九を歌う会さんは、軽々歌ってしまうんです・・・それでいて力強い。さすがです。

オーケストラも驚かされます。やせた音が全くない!それでいて、アインザッツも力強くしなやかで表現力豊か!これは力のあるオーケストラだと唸りました。ナブッコは正式には「ナブコドノゾール」という題名で、旧約聖書をテクストとした、バビロニアの王ネブカドネザル王を主人公にしたオペラなので、どうしてもその勇壮な物語が頭の片隅に入って邪魔をするものですが、全くないのも素晴らしい!むしろノビノビ演奏していて、感動すら覚えます。

そして、第九では、テンポも正確である上に、各パートがしっかり聴こえてくるんです!リズム感もよく、これ本当に市民オケ?って思うくらいです。アンサンブルの乱れもほとんどなく、第九を演奏するのが初めてだなんて思えません。古谷さんの解釈はオーソドックスで、どちらかと言うとオトマール・スウィトナーに近い演奏。なので第1楽章の最後でリタルダンドしますがオーケストラがついていっているのも素晴らしい!若干崩壊しかけますがすぐに立て直すなんざあ、正直すでに宮前フィルと同じレベルです。

正直言いますと、6日に聴きに行きました、トラウム・ズィンフォニカーさんよりも相当うまいです。あのオーケストラにはプロも入っているんですが・・・市民オーケストラでここまでの実力を持っているのは、もう圧巻です。

唯一アマチュアらしいと思ったのは、第3楽章のホルン・ソロ。ちょっとだけもたついてしまいました・・・でも、ひっくり返らなかったのは称賛に値します。ベルリン・フィルですらひっくり返ったことがある部分ですし、私がかわさき市民第九で歌っていた時にはホルンがひっくり返るのはしょっちゅう。それが最初の第九の演奏でないと言うのは、本当に高い実力を持ったオーケストラだと思います。オーケストラが実力あるのは勿論、恐らく指揮者の古谷さんのタクトの打点が高いということもあると思います。やはり、生前、宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」音楽監督で、宮前フィルハーモニー交響楽団の元音楽監督だった守谷弘が言っていたことは正しかったなあと、今回も実感しました。

第4楽章で合唱団が入ってきますが、そこからオーケストラはさらに安定した演奏に入りました。むしろ合唱団のほうが多少お疲れだったかも・・・特に、ソプラノが多少ぶら下がり気味なんですよね~。やはり、ナブッコも歌ったのは、ちょっとだけ失敗だったかも?しかし、そのチャレンジ精神は称賛に値します。第九ではさらに力強い合唱が聴けたのは良かったです。

最後のプレスティッシモは力強く盛大に終わったのも素晴らしかった!ブラヴィが飛んだのは当然だったと思います。合唱指揮も素晴らしかったと思います。平均年齢は高めになって来た多摩市民第九を歌う会さんを率いた合唱指揮者は、かなりの実力者だと見受けました。確かに中大との時も素晴らしい合唱でしたし。オーケストラに負けない声楽を続けられるのも、「好きこそものの上手なれ」を体現して来たからこそなんでしょう。

今回、特に日野市民オーケストラさんの素晴らしい演奏を聴いて、定期演奏会にも興味を惹かれています。万障繰り合わせて、是非とも足を運んでみたいと思っています。来年は府中市民第九がある年なので、さて多摩市民第九を聴けるか分かりませんが、バッティングしないことを祈っていたいと思います。

 


聴いて来たコンサート
第36回多摩市民第九演奏会
ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
歌劇「ナブッコ」序曲
歌劇「ナブッコ」より「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
竹村真美(ソプラノ)
三輪陽子(アルト)
中井亮一(テノール
斉木健詞(バス)
古谷誠一指揮
日野市民オーケストラ
多摩市民「第九」を歌う会(合唱指揮:松村詩史、佐藤秀義)

令和6(2024)年12月14日、東京、多摩、パルテノン多摩大ホール

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