かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:実力をつけた中大オケ

今回はコンサート評です。12月10日にミューザ川崎で行われた、中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部の第64回定期演奏会です。

このオケは私が学生の時から聴いているアマチュア(学生)オケなのですが、一言で言いますと、よくぞここまで・・・・・と、今書いていましても感動で涙が出てきます。

まず、1曲目はブラームスの大学祝典序曲。以前マイ・コレでもご紹介しましたが、この曲は私が学生時代入学式で聴いた曲です。そして、その時のオーケストラこそ、この中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部なのです。

そう、私は中央大学の卒業生なのです。この演奏会に行ったのは間違いなく母校のオーケストラだからです。

ブラームスのこの曲は、入学式等公式行事で演奏されてきた伝統ある曲です。それだけに、この曲からオケは全開で演奏してきました。多少、アインザッツが合わない点がありましたが、ほぼ完ぺき。特に金管は素晴らしく、美しいアンサンブルを聴かせてくれます。

最後、ふわっとホールに余韻を響かせるところなどは以前には見られなかった点で、オケの成長が見てとれました。こういう点はいいホールであればあるほど重要で、恐らく指揮者の指示でしょうが、それをやりぬくオケは本当に素晴らしいです。普通の学生オケやアマオケではなかなか聴けません。

しかし、最初からこれだけ飛ばして大丈夫なのかと心配するほど、集中していました。

第2曲目はベルリオーズの劇的音楽「ファウストの劫罰」からハンガリー(ラコッツィ)行進曲です。これがとても音が柔らかく美しいのです。アンサンブルが秀逸ですし、アインザッツは最高。突っ込みどころがないと言っていいと思います。ベルリオーズをこれだけやれるオケは少なくとも私が聴いた限り、中大オケが初めてです。

フランスものは特にどれだけやわらかく表現して美しく聴かせるかが勝負です。それが完璧なのですから、メインの第九も楽しみというものです。

そして、その第九です。まず第1楽章。木管がちょっと唐突なのは仕方ないかなと思います。それを補って余りあるアンサンブルを聴かせてくれます。とにかく、今日は気合がはいっているなと感じました。まずそれを表していたのがティンパニです。強くたたくその表現は、プロも含めなかなか聞くことはできません。第九のティンパニは強く叩くことでとても緊張感を音楽に与える役割を持っていまして、それをアマチュアである学生がやるのは私は初めて聞きました。

特に、主題展開部のティンパニ連打は、第九の中でも聴かせどころの一つですが、そこで鳴り響くティンパニと、フォルテあるいはフォルティシモでアインザッツを強めるオケは、一つのクライマックスです。それは第1楽章最後の部分でも十二分に表現されていました。

第2楽章はスケルツォですが、アマチュアオケですとここで崩壊寸前までいってしまいます。ところが、中大オケはなかなか崩壊しません。ちょっと危ないと感じるとコンサートマスターを中心にすぐ立て直しますので、まったく危なげないのです(第1楽章のほうがはるかに危ない場面が実はありました)。これには感心するとともに、それだけで感動してしまいます。途中リフレインを強調していたのはおや?と思いました。結構びっくり箱があるなあ、と。それがまたそろっているので文句のつけようがありません。

第3楽章からソリストが入ります。え、合唱団は?はい、最初から入っています。これは実はとてもよかったと思うのですが、それは第4楽章で。第3楽章はベルリオーズで感じた「予感」が見事的中です。やわらかくアインザッツがそろった、すばらしいアンサンブル。特にそれは金管で顕著でした。特に泣けてくるのは、ホルン。ベルリン・フィルですらひっくり返ることがあるのに、全くひっくり返らず、完璧。思わず「よくぞここまで・・・・・よし、いけ!」と小さくつぶやいてしまいました。

終盤のトランペットが入る神々しい場面も完璧。天上から音楽が降ってくるようで、涙が止まりません。

さて、第4楽章。これも冒頭ティンパニの強打!そう、こうでなくっちゃ!という表現は本当に私好みです。ここまで突っ走ってきているはずなのにさらにヒートアップしてきています。こういう第九は本当に久しぶりに聴いたように思います。熱い血潮がたぎっているような。

歓喜の調べがだんだんフォルテになってゆく場面では、低弦から始まりユニゾンに至るまで、どこに突っ込みどころがありましょうや!冷静なテンポながら、聴き手であるこちらは感動の渦に巻き込まれてきます。

そして、バリトン・ソロ。それとオケとの掛け合いも完璧。私はプロオケを聴いているのでは?と錯覚するほどです。合唱団も秀逸で、最初の合唱では楽譜上はソプラノだけ実は参加しませんが、今回は参加させていました。が、その必要はなかったように思います。男声も十分厚いですし、アルトが多少かき消されるほど。そのためにソプラノも入れたのかもしれませんが、その部分は十分私には聴こえていました。

vor Gott!の部分でも天上から音楽が振るようでなおかつ力強い合唱が柔らかく終わるという、本当に私は学生オケの演奏会を聴きに来ているのだろうかと錯覚するほどです。その後のテノールと男声のアンサンブルも秀逸。それを引き継いだオケも、熱くなりつつアインザッツアンサンブルともに崩れることがありません。

そして、練習番号M。ここも金管がひっくり返ることが多いですが、これも全くひっくり返りません。思わずここでも「いけー!」とつぶやいてしまいました。合唱団もそれがわかったのか、ちょっとだけ自分たちで感動してしまって遅れ気味に。しかし、それをすぐ修正する点は素晴らしいです。

続く「抱きあえ、いく百万の人々よ!この口づけを全世界に!」の男声もやたら力任せではなくて素晴らしいですね。続く「兄弟たちよ、この星空の上には親愛なる父が必ず住みたもう」ではさいごの部分を弱めにするなど、細部にこだわった演奏はアマチュアのレヴェルでは百点満点でしょう。オケもそれをしっかりと支えていますし、やっぱりアマチュアだなあという点は合唱団がフォルテとピアノのコントラストが弱いくらいで、後は全くアマチュアという感覚はなかったです。

そして、一番素晴らしかったのが二重フーガ。オケも合唱団も全く崩壊しません。とてもゆっくりとしたテンポに指揮者が落としているのですが、それに完全について行っています。私も第九は何度も歌いましたが、それをやるのはとても大変なのです。第九の中でも最大集中をもとめられる部分です。

最後も、集中力が途切れることなく、特にオケは最後音の一つ一つが聞き取れるほど正確な演奏をしていて、一番疲れているはずですがそんなもの関係ないかのように、きれいに終わってくれました。余韻が残るほど。しかし、聴衆は待ちきれず「ブラヴォー!」

うーん、もう1秒だけ待ってほしかったな・・・・・・気持ちはすごくわかりますけどね。実際、私もその5秒後「ブラヴィ―!」を掛けましたから。

これにブラヴィ!をかけないで、なんとする!

終わってもしばらく、感動がどんどん押し寄せてきて、動き出すことができませんでした。演奏からほとばしる情熱、そしてオケと合唱団の絆・・・・・

マチュアでこんな経験は本当に初めてでした。母校に誇りを持つとともに、そんな素晴らしい演奏を聴かせてくれた、オケ、合唱団、ソリスト、指揮者、その他関係者に、感謝申し上げます。

実は、この演奏をまだ聴くことができます。12月26日、こんどは多摩市のパルテノン多摩において、全く同じプログラムで演奏会がありますので、興味のある方はいかがでしょうか。このオケはお勧めです!



聴いたコンサート
中央大学創立125周年記念・中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部 第64回定期演奏会
ヨハネス・ブラームス作曲
大学祝典序曲 作品80
エクトル・ベルリオーズ作曲
劇的物語「ファウストの劫罰」作品24より「ハンガリー(ラコッツィ)行進曲」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
平井香織(ソプラノ)
井坂惠(アルト)
大槻孝志(テノール
鹿野由之(バス)
多摩市民第九をうたう会
コール・ミレニアム/四季の会
東大和市民合唱団「第九を歌う会」
中央大学混声合唱
中央大学創立125周年記念合唱団
佐藤寿一指揮
中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽