コンサート雑感、今回は平成27年2月15日に聴きに行きました、東京カンマーフィルハーモニーの第10回定期演奏会を取り上げます。
最近、私がコンサート情報を得るのはツィッターが多いのですが、この演奏会もツィッターで知ったものの一つです。
カンマーフィルハーモニーという名称の通り、室内オケなんですが、プロではなくアマチュアなんです。
http://www.kammerphil-tokyo.com/
多分、多くの方が驚きを隠せないでしょう。室内オケでありながら、アマチュアだって?と。しかし以前、ブルックナーのミサ曲でもアマチュアの室内オケを取り上げていますし、最近増えてきているように思います。
ただ、今回このコンサートに足をはこんだのは、例えばそれがモーツァルトだったからではないんです。アマチュアの室内オケでありながら、ベートーヴェンの第九を採り上げるからこそ、だったのです。
ですから、曲目は以下の通りになります。
�@ベートーヴェン レオノーレ序曲第1番ハ長調作品138
�Aベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
まず、第1曲目のレオノーレ第1番ですが、おそらくベートーヴェンが作曲した唯一のオペラ「フィデリオ」につけた序曲の中でも、演奏機会が少ない方の作品だと思いますが、情熱的かつ冷静に弾いていたように思います。ただ、少し硬かったかなという気がします。その前週に聴きに行きましたダスビの団員の、体を揺り動かしながらリズムに乗りつつ演奏していたのとは対照的でした。
それが、第九に入ると一変します・・・・・
とその前に。実はこの演奏会、会場は杉並公会堂でした。となると、ここでかつて第九を演奏した団体との比較でどうしても聴いてしまうことになります。その団体とは、中央大学音楽研究会混声合唱部と、アレクテ室内管弦楽団という事になります。
というのも、合唱団はもう一つ比較になってしまいますが、コア・アプラウスと異なり中大混声同様、舞台に降りていたのです。その上、第1楽章から参加という形です。これを見た時、いやー、気合入っているなあと思いました。合唱団も交響曲のパートの一部なんだよという、指揮者の意向かどうかはわかりませんが、そういう意味にとれるような配置であったように思います。
第1楽章が始まって、レオノーレで見えたような硬さはなくなり、適度な緊張感が演奏にみなぎっていました。特にティンパニの音が硬く、「ぶっ叩いていた」のは素晴らしかったです。アンサンブルも全体を通して崩壊しそうになることすらなく、安心して聴いていられたのも、奇跡というか、素晴らしかった点だと思います。
特に第3楽章のホルンは全く裏返ることなく演奏できていたのには、私はプロオケを聴きに来ているんだろうかと錯覚を起こしてしまいそうになるくらいでした。途中、少しやせた音が聴こえてきてようやく「あ、アマチュアだ」と認識できるくらいです。
第2楽章スケルツォをきちんと繰り返していたのも近年の演奏では珍しかったですし、指揮者やオケが第九という作品を学究的に真正面からとらえている証拠であり、これも高評価です。
オケも体全体でリズムを取り、力強くも美しい演奏が、そこに存在していたのは、感動しました。
第4楽章。ティンパニが本当に素晴らしい!冒頭と、さらに二度目バリトン・ソロが入る直前の劇的な演奏は、聴く者を引き込まずにはいられません。
で、第4楽章と言えば、実は待てど暮らせどソリストが入ってきません。え、もしかして演奏中に入ってくるのかと思っていたらその通りで、「歓喜の調べ」をオケがユンゾンで演奏する部分で合唱団がまるでソリストを迎え入れるかのごとく立ち上がり、ソリストがワーグナーの「タンホイザー」の「ヴァルトブルクの歌合戦」の場面における貴族の入場のような雰囲気を持っていまして、荘厳さすらありました。
そして、バリトン・ソロの後の男声合唱の、太く素晴らしい発声ときたら・・・・・元合唱団員の私としましては、うならざるを得ません。声が上から降りてくるのです!2階席だったのに・・・・・
そう、それは中大混声と殆どかわらなかったのです。いや、そう書いてしまうと失礼でしょう。中大混声よりも高いレヴェルで、声が上から降りてきたのです。力強くも軽いその発声は、ホール全体を包み込んでいました。最初、ソプラノが入らないのも楽譜通りで素晴らしかったですし、その後ソプラノが入ってからというのは、舞台に乗っている演奏者全員が音楽を奏でる喜びを全身で表現しているのが、聴き手の私としてもとても喜ばしい時間でした。
何時も私が問題にする、vor Gott!の部分は何と変態演奏!vor1拍としてGottは7拍だったのです。しかも、残響有。このあたりは指揮者にきいてみませんと何とも言えませんが、思わずだったのかな〜と思います。けれども、全員がそのタクトについていったのは素晴らしいですね〜。思わずうるうる来ました。
ナポレオンマーチもオケ、ソリスト、合唱団とも素晴らしいアンサンブル!アマチュアだなんていったいどこが?というかんじです。その後のオケのみの部分ではすでにダスビ状態。ノリノリというか、中大オケの時のように、まえで音楽の使徒という感じで必死になって演奏しているのが印象的です。その後の、練習番号Mでは軽い発声なのに喜びが爆発していて、じーんと来ました。
最後の最後まで合唱、オケ共に素晴らしく、またソリストものびのびとしていて、聴いていてなんの不安も感じることなく、最後の「喜びよ、それは神々が放つ花火」まで感動の渦に巻き込んでいきました。歌詞を「しゃべっていた」のも素晴らしかったです。Alle menschen!をさっと切るだとか、最後の「抱きあえ、いく百万の人々よ!」も、いずれもしゃべることを念頭に置いた歌唱で、合唱指揮者及びオケの指揮者ともに、指導力の高さが見受けられ、また聴きに行きたいと思わせるに十分でした。
最後、ブラヴォウ!が飛ぶのは当然であったと思います。もう少しだけ残響を楽しみたかったなという気がしますが、それだけ、聴衆が感動していたという証拠でもありましょう。私も2度もブラヴォウ!をかけてしまいました・・・・・いやあ、本当に素晴らしかったですから。
室内オケのいい点は、私は「他人に頼れない」という責任感が、各パート各演奏者に芽生えることだと思っています。自分がしっかりと弾くことが、全体にとっていいことなのだという意味で、室内オケは大規模オケにはない緊張感が生まれます。勿論、大規模オケにはまたそれなりのいい点があるので、すべてが室内オケになればいいとまでは言いません。ただ、時代の流れは室内オケへと移って行くでしょう。それは財政などオーケストラが置かれた環境が変化してきているためです。その意味でも、アマチュアでこういった団体が存在することは誠に喜ばしい箏であり、時間が許す限り、私も応援していきたいと思います。
責任感のある、素晴らしい演奏を届けていただいて、オケ、ソリスト、合唱団、その他各位の方々に、感謝申し上げたいと思います。
聴きに行った演奏会
東京カンマーフィルハーモニー第10回定期演奏会
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
レオノーレ序曲第1番ハ長調作品138
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
経塚果林(ソプラノ)
木下泰子(アルト)
渡辺大(テノール)
浅井隆仁(バリトン)
東京カンマーフィルハーモニー合唱団(合唱指揮:山本義人)
松井慶太指揮
東京カンマーフィルハーモニー
平成27(2015)年2月15日、東京杉並、杉並公会堂大ホール
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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