かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルの「第九」

今月のお買いもの、平成28年1月に購入したものをご紹介しています。今回は銀座山野楽器本店にて購入しました、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルの「第九」です。

またかあと言う方もいらっしゃるかと思いますが、このCDは実はずっと欲しかったものだったのです。

録音は2009年ですから、もう7年も前になるのです。それでも、このCDの演奏はとても瑞々しいものだと言えます。

このCDの存在を知ったのは今からもう3年以上は前だと思います。某SNSで知り合いが紹介していたのがきっかけです。この演奏はすごい!と書かれたのでした。

その当時、私はやたら第九を買うのはやめていましたし、他の作曲家の作品を追いかけるのに精いっぱい。その間に健康状態も優れなくなりそこからの回復に集中せざるを得なくなるなど、山あり谷ありで、このCDまで手が回らない状態だったのです。それでも、このCDを買いたいと言う想いを捨てることはありませんでした。

そうこうしているうちに、実はこのコンビの第九は、youtubeにアップされるようになります。一度はそれでもいいかなと思ったのですが・・・・・

youtubeはやはり、著作権の問題があるんですよねえ。正式のであればいいのですが、場合に寄っては手順を踏まずアップされているものもあるので、消されることも多いのです・・・・・

https://www.youtube.com/watch?v=xbZjAxqHYSg

取りあえず、今はまだ消されていないようですが、これはCDと同じ音源とは断言できません。ただ、雰囲気はとてもよく伝えていると思います。日時がクレジットであれば突合できるんですけどねえ・・・・・ないんですよね。

その意味では、同じである可能性もある訳ですが、そこまで聴き比べていないので、何とも言えません。バリトンソロの声は似ていると思いますが・・・・・

で、この演奏はかなり激しいものになっています。ある意味、古楽演奏にかなり影響を受けたものであると言えます。そもそも、カンマーフィルですから、室内オケであるわけです。日本語に訳せば室内管弦楽団ですから。

こういう室内オケが、今のヨーロッパでは増えてきています。それは金銭的な理由と共に、オーケストラが巨大化してきた反省とも言えます。それでは、マーラーブルックナーを演奏するときは困るであろうと思うかと思いますが、すでにアマチュアを中心に小さな編成で後期ロマン派の作品を演奏する試みが始まっています。日本ではプロではまだそれほどの広がりになっていませんが。アマチュアはCDを聴いてかなり刺激を受けていると感じています。

ブックレットには、20世紀の第九の祝祭とは距離を取った演奏だと書かれていますが、それは確かでしょう。だからと言って、例えば第1楽章がアレグロ・マ・ノン・トロッポではないというのは違うような気がします。むしろ、かなりアレグロでありながら、そこからウン・ポコ・マエストーソを紡ぎだそうとしていると感じます。

そこが、私が言う古楽演奏に影響を受けていると言う点なのです。それでいて、完全には古楽の影響下でもない。それがこの演奏のたまらない魅力です。第九という作品が持つ優しさや激しさを、きちんと表現しようとしたらこうなりましたという演奏だと思うのです。

古楽演奏の物足りないものの一つに、激しさの欠如があると思います。勿論、例えば第1楽章は激しさだけが楽譜で指示されているわけではないので、今までの演奏が間違っているわけではありません。ただ、一見すると相反する指示がここには存在するわけですが、それをどう両立するのかという課題に、果敢に挑んでいったと言えるでしょう。

第2楽章と第3楽章はそれほど他の演奏と比べ特に異なる点はありませんが、第4楽章に入ると、激しい部分はとことん激しいのが特徴です。特に、テンポはかなり速めであるのですが、それが全く気になりません。それが一番よく表れているのが、私が常に注目するvor Gott!の部分だと言えます。vor一拍に対し、Gott!は4拍・・・・・

いやあ、ものすごい変態演奏です!これははっきり言って、20世紀の巨匠たちを超えたと言っていいと思います。ですから、CDの帯には「新しいスタンダード」とありますが、これはスタンダードな演奏ではありません。21世紀の爆演誕生というべきなのです。フルトヴェングラートスカニーニなどと並ぶ演奏が、ここに誕生したと言うべきだと思います。ただ、それは確かに、深いスコアリーディングの上で誕生したと言えるでしょう。ただ、楽譜に忠実ではないのは私が述べた通りです。

え、楽譜通りではないのかという指摘も、プロの方からはあるかと思いますが、フェルマータとは、「その音の一つ前の音に対して記号が付いている音を6拍伸ばす」という意味の記号です。それを見事にヤルヴィはオケに破らせています。ところが、それが全く聴き手には支障がなく、むしろ感動と情熱はさらに高まっていきます。その効果は絶大だと言えましょう。その「譜読み」と「現実にどう合すのか」の判断が絶妙なのです。

ですから、このCDは明らかに変態演奏であり、爆演だと言えますが、それが誠に心地よいのです!かといって、ロマンティックに流されているわけではなく、あくまでも知的で冷静な部分も多い演奏です。このバランスの素晴らしさ!一見すると「ぶっ壊れている」ようにすら聞こえる演奏ですが、いやいやどうして、実に全体としては引きしまっています。とても古典派的な演奏でありながら、ロマン派として演奏した過去の巨匠たちに引けを取らないどころか、超えたとも言うべき内容になっているのです。これを評価しないでいったいどこを評価するのでしょうか。

合唱団も室内合唱団でありながら、激しい表現にしっかりとついて行っているのが素晴らしい!力強くかつ美しいその発声は、もう何もいう事はありません。特に最後の「兄弟よ!」の部分はまるで叫んでいるのに、それが全く気になりません。合唱指揮者やヤルヴィの実力がここに花開いたと言えるでしょう。今、第九のCDならどれを買うべきかと言われれば、これはどう?と提案する一枚です。


さて、今週は土曜日を仕事の関係でお休みします。次のエントリは来週の火曜日になります。お楽しみに!




聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ)
ペトラ・ラング(アルト)
クラウス・フローリアン(テノール
マティアス・ゲルネ(バリトン
ドイツ・カンマーコーア
パーヴォ・ヤルヴィ指揮
ドイツ・カンマーフィルハーモニーブレーメン
(BNG JAPAN BVCC10004)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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