かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 室内楽全集7

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、メンデルスゾーン室内楽全集を取り上げていますが、今回は第7集を取り上げます。

収録されているのは、ピアノ四重奏曲第1番と第2番。これは第6集にある意味引き続いていると言えます。

この二つの作品は栄えある作品1と2なのです。そう、メンデルスゾーンが最初に作品番号を付けたものです。それだけ、メンデルスゾーンが自信をもって世に出した作品です。

メンデルスゾーンと言えば、管弦楽が我が国では想起されることが多いわけですが、そのメンデルスゾーンが最初に作品番号をつけ、世に問うたのは管弦楽作品でもなく、交響曲でもない、室内楽、しかもピアノ四重奏曲だったわけです。

前回取り上げた第3番が作品3であり、作品番号が付いている最初の3作品はすべてピアノ四重奏曲であることになります。これはメンデルスゾーンの才能を示すものだと言っていいでしょう。

なぜならば、この当時の音楽シーンを考える時、ピアノ四重奏曲というジャンルを書くという事は、私はピアノ協奏曲も書けますと言っているようなものだからです。で、メンデルスゾーンは実際書いたのですか?という質問が出るかと思いますが、実は書いています。しかも、このブログで以前取り上げているのを覚えていらっしゃいますでしょうか。

今月のお買いもの:メンデルスゾーン ピアノ協奏曲第1番・第2番、2台のピアノのための協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/478

ピアノ協奏曲第1番 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

ピアノ協奏曲第2番 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

実際、ピアノ協奏曲第1番は、ピアノ四重奏曲第1番の9年後に作曲されています。もっと先に完成させることもできたでしょうか、諸事情でこの時期になったと推測できます。そう考えるのはなぜか。なぜ当時の音楽シーンを考えればすでにピアノ協奏曲が書けると私が考えるのか。このエントリを覚えていらっしゃいますでしょうか。

今月のお買いもの:モーツァルト ピアノ協奏曲第12番から第14番 ピアノと弦楽四重奏ヴァージョン
http://yaplog.jp/yk6974/archive/617

メンデルスゾーンなど、前期ロマン派の作曲家たちが、ベートーヴェンだけではなく、モーツァルトにも影響を受けていたとすれば、ピアノ四重奏曲というジャンルがどういうものなのかは、よく分かっていたはずです。ピアノ協奏曲を新しいフェーズへ誘ったベートーヴェンも、作品番号はついていませんがピアノ四重奏曲を作曲しています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E3.81.9D.E3.81.AE.E4.BB.96.E3.81.AE.E5.AE.A4.E5.86.85.E6.A5.BD.E6.9B.B2

1785年ですから、ピアノ協奏曲第1番が作曲される10年前なのです。メンデルスゾーンもほぼ同じ期間を要して、ピアノ四重奏曲を作曲した後にピアノ協奏曲第1番を書いています。そしてベートーヴェンができなかった、ピアノ四重奏曲に作品番号を付けるということをやってのけているのです。まるでモーツァルトのように。

モーツァルトのピアノ協奏曲をピアノ四重奏曲に編曲した時に説明していますが、第12番〜第14番はモーツァルト自身がピアノ協奏曲をピアノ四重奏曲に編曲しています。それはモーツァルトの時代はフルオーケストラが贅沢だったからで、自分の作品をより多くの人に聴いてもらうためにピアノ四重奏曲に編曲したわけで、その編曲の素晴らしさは絶品です。

メンデルスゾーンが最初に作曲したと確認できているのは、オペラ「私メンデルスゾーンは」で、1820年。その2年後にピアノ四重奏曲第1番を作曲しているのです。本当はピアノ協奏曲を作曲できるけど・・・・・という、自信と控えめな謙虚さが交差する作品だと思います。さらに第2番はその翌年で、最初の作品から3年後でさらに深みのある作品が登場するのです。

これを考えれば、ピアノ協奏曲を書く準備は、私は整っていますよ、でも、まだ若いので謙虚にピアノ四重奏曲にしてみました、是非ともピアノ協奏曲に編曲したいですという意思が伝わってきます。ただ、第2番はより室内楽的であるのでピアノ協奏曲にした場合、多少静謐すぎるきらいがあるようには思いますが・・・・・

でも、弦とピアノのオーケストレーションのバランスが第1番、第2番とも素晴らしく、特に第1番の第3楽章はピアノ協奏曲を意識したような変化があり、明らかにピアノ協奏曲への編曲も意識している作品だと言えます。一方第2番はより室内楽的に作曲していますが、全体的なまとまりは第1番よりさらに素晴らしくなっています。それでも、第4楽章ではところどころピアノ協奏曲的な部分も散見されます。

それを聴いた当時の人は驚いたことでしょう。室内楽なのに、もう管弦楽作品を書くだけの用意ができているのか、と。最初の作品であるオペラには作品番号が振られることはありませんでしたが、その2年後と3年後に作曲された、ピアノ協奏曲編曲を念頭に置いたと考えてもいいようなピアノ四重奏曲の2作品には作品番号が振られることとなりました。それにふさわしい、堂々とした作品だと二つとも思います。

しかも、ピアノ四重奏曲と同じ数だけ、ピアノ協奏曲も書いています。残念ながら第3番には作品番号が振られることはありませんでしたが、これを見ますと、メンデルスゾーンがピアノ四重奏曲を3曲作曲した当時の心意気が、わたしにははっきりと伝わってきます。

どれも生き生きとした、若いながらも唸らせるその作品は、作品1だと思えない、完成されたものを最初から持っています。

コンツェルトシュトゥック作品114は、前回の作品113と対を成す作品ですが、作品113と比べますと少し砕けた作品です。ピアノ協奏曲を意識したプロ向けとも言えるピアノ四重奏曲とは一転して、まさしくサロン向けの作品であると言えます。作曲の動機、そして依頼人を考えれば当たり前と言えますが、実際そのサロン向けであるはずの作品が、今日管弦楽版が存在することは誠に示唆的です。サロン向けの作品でありながら、協奏的なさくひんであるがゆえに管弦楽作品として編曲されるということは、それだけ各パートがオーケストラ的なものを持っているわけです。

作品114はここに登場する二つのピアノ四重奏曲からは9年〜10年たって作曲された作品ですが、その時期はピアノ協奏曲第1番や第2番を書いた時期に重なります。それだけ、管弦楽作品を書くだけの自信というか、環境が整ったと言えるでしょう。勿論、ピアノ四重奏曲を書いた時よりもさらに実力が付いたとも言えますし、またキャリアを積んだとも言えます。その結果、名声もついてきたと言えるでしょう。

こういった室内楽作品を聴くことは、再びメンデルスゾーン管弦楽作品を聴いてみたいという気持ちにさせてくれるものです。実際、私はこのあと交響曲全集を借りてくるのですが・・・・・それはまた後の話しにしましょう。

久しぶりに、棚からメンデルスゾーンのピアノ協奏曲を出してきて、聴いてみたくなりました。こういった編集は本当に素晴らしいなあと思います。がんばれ国内盤!

演奏も端正な中、生き生きとしています。ピアノ四重奏曲は特に第1番は協奏曲と言ってもいい作品ですが、ピアノと弦楽部が会話しつつ、対等に渡り合うという時代の移り変わりを感じる作品です。それが前面に押し出され、みごとに調和しているのはさすがだと思います。四重奏団の実力の高さを物語りますが、決して日本ではさほど有名な団体ではありません。それでも、ステディな演奏が紡ぎだす端正かつ伸びやかな、生命力ある演奏は、ソリストに負けることなく、かつ適切なサポートもしていて、変幻自在。メンデルスゾーンの才能が作品1からあふれ出ていることを、しっかりと演奏で示した名演であると言えるでしょう。




聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
ピアノ四重奏曲第1番ハ短調作品1
ピアノ四重奏曲第2番ヘ短調作品2
クラリネット、バセットホルンとピアノのためのコンツェルトシュトゥック ヘ長調作品114
ライナー・シューマッハークラリネット
ゲルハルト・アルベルト(バセットホルン)
ローランド・ケラー(ピアノ)
ロンドン・シューベルト・アンサンブル

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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