神奈川県立図書館所蔵CD、シリーズでメンデルスゾーンの室内楽全集を取り上げていますが、今回はその第10集を取り上げます。
第10集に収録されている作品は、ピアノ六重奏曲と、弦楽八重奏曲です。有名なのは八重奏曲だと思いますが、ピアノ六重奏曲もまた素晴らしい作品です。
ピアノ六重奏曲が作品110で、八重奏曲が作品20ですが、ともに1820年代の作品で、ピアノ六重奏曲が1824年、八重奏曲が1825年と実はそれほど差がない時期に作曲されているうえに、初期の作品という事は、まだベートーヴェンが存命の時代に書かれているということも注目点です。
どれも4楽章形式を持つ古典的な様式を持ちますが、旋律線は確かにロマン派で、メンデルスゾーンらしさが存分に出ている作品だと言えるでしょう。
この二つの作品には共通点があります。それは、編成が独特という事です。ピアノ六重奏曲はピアノ、ヴァイオリン1、ヴィオラ2、vチェロ1、コントラバス1という編成ですし、八重奏曲はヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2という編成です。
メンデルスゾーンの「ピアノと弦楽のための六重奏曲」ほか
http://blog.zaq.ne.jp/Kazemachi/article/694/
弦楽八重奏曲 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%85%AB%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)
※なお、上段のURLで記載されているウィキの間違いは訂正されています。以下に載せます。
メンデルスゾーンの作品一覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%BD%9C%E5%93%81%E4%B8%80%E8%A6%A7
八重奏曲は単純に弦楽四重奏曲を二つにしたと考えていいわけですが、それでも二つというのは八重奏曲でもあまりないのです。例えば、シューベルトの八重奏曲はベートーヴェンの七重奏曲からインスパイアされているので、むしろオーケストラの編成に近くなっています。
八重奏曲 (シューベルト)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88)
メンデルスゾーンのが、単なる八重奏曲ではなく、正確には弦楽八重奏曲と言うべきですが、その理由が複弦楽四重奏という編成にある訳です。その上で、ピアノ六重奏曲の編成はさらに個性的であることはうなります。
第9集ではピアノ三重奏曲が取り上げられていましたが、それに似た編成であるという事なのです。一見すると冒険していないように見えて、実は冒険しているという編成は、実に伝統的であるにも関わらず、瑞々しさを持っています。メンデルスゾーン若かりし頃の作品だからなのかもしれませんが、ベートーヴェンが第九を書いたころに、メンデルスゾーンはこれほどの充実した弦楽室内楽作品を書いていたという事なのです。
その上でも、この二つは重要な作品だと言えますし、八重奏曲がよく演奏されるのも当然だと言えますが、ピアノ六重奏曲はその編成故に難しいようです。わたしからすれば、人数さえ揃えられればそれほど難しくないはずだけどなあと思いますが・・・・・・
この二つの作品は、当然ですが室内楽作品としてはしっかりと作られており、それは通奏低音部があるという事なのです。特にピアノ六重奏曲にはコントラバスが導入されています。これがメンデルスゾーンの新しさだと思います。つまり、かつてはチェンバロが通奏低音を担当していたのが、やがてピアノの登場とともにチェロへと変わり、そのチェロも旋律を担当するようになり、さらに低音楽器を導入する・・・・・時代の動きに合わせた編成であると言えるわけです。
つまり、ピアノ六重奏曲は、その後ピアノ協奏曲を作曲するための通過点だった、と言えるでしょう。アンサンブルの基本をきちんと積み上げていくメンデルスゾーンの、天才というレッテルからはうかがい知れない隠れた努力をこの作品にみることができます。その点では、シューマンが言ったようにまさしく当時のモーツァルトだったと言えるでしょう。モーツァルトも初めは、室内楽を編曲してピアノ協奏曲を書いたのでした・・・・・
演奏は、実に生き生きとしていて、ダイナミックさすらあります。ピアノ六重奏曲の第1楽章や弦楽八重奏曲の第1楽章や第4楽章は実にダイナミックで、これは本当に室内楽だろうかと思います。それは編成故だろうと私は思いますが、それを実に自然に表現しているのが素晴らしいです。
アインザッツはきつめで近代的。だからこそ二つの作品の「先進性」が丸裸になります。つまり演奏者はその近代性を掴み取り、そのために必要な技術をあますところなく演奏につぎ込んでいるわけです。ピアノ六重奏曲のピアノ協奏曲を目指したであろう点や、弦楽八重奏曲の、後に弦楽交響曲を書くに至る点などが充分に考慮されているのです。
そう言った専門性を、実に自然に演奏という形で表現する・・・・・・素晴らしいです。店頭でCDを見つけましたら、是非とも聴いてみて下さい。管弦楽できくメンデルスゾーンが、そこにはいることを発見することでしょう。二つのシンフォニックな室内楽作品。お勧めです!
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
ピアノ六重奏曲ニ短調作品110(ピアノ、ヴァイオリン、二つのヴィオラ、チェロ、そしてダブル・ベースのための)
弦楽八重奏曲変ホ長調作品20
ダリア・オウジール(ピアノ)
ジル・シャロン(ヴァイオリン)
ロン・エフラット(ヴィオラ)
リイザ・タンミネン(ヴィオラ)
アレクサンダー・ヒュールスホフ(チェロ)
ジャン・サッセン(ダブルベース)
アマティ弦楽四重奏団(八重奏曲)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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