第6集には、弦楽四重奏曲第2番とピアノ四重奏曲第3番が収録されています。この二つの作品はいずれもメンデルスゾーン若かりし頃の作品です。
特に、弦楽四重奏曲第2番はメンデルスゾーンが作曲した弦楽四重奏曲としては最初のものです。ベートーヴェンの影響と語られることが多いですが音楽としては前期ロマン派です。あくまでも引用がベートーヴェンからだったりして、いかにベートーヴェンが先進的だったかを証明するために作曲された意味合いが強い作品です。
弦楽四重奏曲第2番 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)
ベートーヴェンの影響というか、ベートーヴェンが前期ロマン派の音楽の中に取り込まれると、全く遜色ないことがはっきりしている作品であると言えます。メンデルスゾーンはベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲が斬新なものであることを、自らの作品にて証明してみせたと言えるでしょう。
視点を変えれば、こういった引用は時代が下りますとショスタコーヴィチもやっていますが、そのショスタコも遜色なかったように、メンデルスゾーンも遜色ないと証明できるだけの実力を、18歳にて持っていたという事にもなります。
それだけの作品が、あまりコンサートピースに載らないことは少し残念だと思います。
次のピアノ四重奏曲第3番は、実は弦楽四重奏曲第2番よりも2年先の、1825年に作曲されており、その分作品番号も3と古いものです。では弦楽四重奏曲第2番よりも若書きなのかと言えばそんなことがなく、むしろ短調の陰影とそこから滲み出る哀愁はむしろこのピアノ四重奏曲第3番の方が存分に存在するとい言えるでしょう。それだけの作品がかけるからこそ、メンデルスゾーンは自信を持って自作に引用することで、ベートーヴェンの後期作品がいかに優れた先進性を持つ作品であるかを証明してみせたと言えます。
その意味では、この二つが並んでいることは決して偶然ではないと思います。じつはこの音源はたしかブリリアントだったと思うのですが、ブリリアントであるという事はライセンス先があるという事を示しており、弦四はARTS、ピアノ四重奏曲第3番はイギリスASVレコードがライセンス先になっています。それだけ寄せ集めであるわけですが、当然ですが寄せ集める時に編集するわけで、その方針がベートーヴェンとメンデルスゾーンの関係性であることは、これら二つから見れば明らかであるわけです。
この全集、必ずしも番号順に並んでいませんが、ブリリアントは意外と番号順に並んで編集するのです。それをあえて破るためには理由があるはずで、所謂「メンデルスゾーンの初期室内楽はベートーヴェンの『影響下』にある」という言説を検証したかった、或は覆したかったと言えるでしょう。実際、演奏を聴きますとどこにベートーヴェンの影響が強く出ているんだ?と訝しることがほとんどです。勿論、様式的に習っていることもありますが・・・・・
音楽は完全に前期ロマン派なんですよね。その上で、むしろベートーヴェンの再発見に資力していると言うほうが適切なのではないかという気がします。その上でこの「実演」は実に端正でいい貢献をしています。
そうなると、やはりメンデルスゾーンの室内楽作品はかなり冷遇されているような気がします。ドイツ音楽はブラームス・・・・・・なんかそんなっ固定観念があるような気がしますが、本当にそうなのでしょうか。メンデルスゾーンが活躍したのがライプツィヒであり、その都市が冷戦時は東側であったために、戦後冷遇されていたのではなかったのでしょうか。そして、冷戦が終わった今、それは適切なんでしょうか。
そこまでの社会的メッセージまではこのアルバムが含んでいるとは思いませんが、音楽シーンに投げかけるものは大きいのではないかと思います。
さらに3曲目はクラリネット、バセットホルンとピアノのためのコンツェルトシュトゥック。作品番号は113で、1832年と、弦楽四重奏曲第2番からは5年しかたたない時期の作品ですが、ヘ短調である故か、さらに哀愁に味わいが出ており、深みがついた作品です。その上で、各楽器のアンサンブルがじっくり聴けますので、まさにコンツェルトシュテュックと言える作品です。後に管弦楽版に編曲されていますが、このオリジナルも味わい深いものです。
コンツェルトシュテュック (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%A5%E3%83%83%E3%82%AF_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)
演奏は前述しましたが端正で味わい深いものです。ライセンス先が3曲ごとに異なることから、演奏団体も3曲で異なりますが、どれも気をてらわず、楽曲の深い部分を掘り下げ、でも過度にロマンティシズムに沈むことなく、端正であることでむしろロマンティックな部分が強調されているのが素晴らしいです。その上で各作品とも生き生きと演奏されており、演奏者が作品に対して喜びをもって演奏しているさまが見て取れます。
メンデルスゾーンだから面白くないよ・・・・・そんな部分はみじんもありません。むしろ、こんな部分のあったのか!という驚きと喜びが演奏全体を支配しているように思います。ですから、どの作品を聴いても飽きることはなく、気を抜いていますとそのまま聴きほれて、他のことができなくなりそうです・・・・・いや、ここで何とか現実に戻らないと!
勿論、きちんと現実に戻してくれます。それだけ、「情熱と冷静の間」のバランスは素晴らしくとれており、その上で前期ロマン派という作品が音楽史上属する時代区分がしっかりと現出されているのです。そこがたまらなく私には魅力的です。
是非とも、こういったメンデルスゾーンの初期作品も聴いてほしいなと思います。
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
弦楽四重奏曲第2番イ長調作品13
ピアノ四重奏曲第3番ロ短調作品3
クラリネット、バセットホルンとピアノのためのコンツェルトシュトゥック ヘ長調作品113
ライナー・シューマッハー(クラリネット)
ゲルハルト・アルベルト(バセットホルン)
ローランド・ケラー(ピアノ、ピアノ四重奏曲第3番)
シャロン弦楽四重奏団(弦四第2番)
ロンドン・シューベルト・アンサンブル(ピアノ四重奏曲第3番)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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