今月のお買いもの、平成28年1月に購入したものをご紹介しています。シリーズで、ディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作品集をご紹介しています。
今回は第9集の御紹介なのですが、第10集と一緒にしようか、かなり迷いました。というのは、第9集と第10集は、カール・フィリップの代表的な受難カンタータである「救世主の最後の受難」だからです。
ネットで検索しますと、このCDがまだ分売していた頃のものがヒットします。それはそれでありがたいことです。何せ、歌詞すらこのボックス、ないためにそれぞれの歌詞の冒頭がどんなものなのかすらわからないからです。ですがこの分売されていたもののページなら、少なくとも各セグメントの冒頭歌詞の日本語訳があるので、大体の内容が類推できるからです。
キリストの最後の受難 S.クイケン&ラ・プティット・バンド
http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%E3%80%81C-P-E-%EF%BC%881714-1788%EF%BC%89_000000000034570/item_%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%80%80S-%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%B3%EF%BC%86%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89_2694880
キリストのって訳すのが適切かどうかは疑問なんですが・・・・・・というのは、原題はDie letzten Leiden des Erlosersだからです。
キリストに相当する言葉は、原語ではErlosersです。これは救い主を意味するので、そこから意訳してキリストと訳していますが、基本的な訳は救い主です。ですから、救世主という訳の方が適切です。ただ、それではわかりにくいので、HMVのサイトは「キリスト」と訳したのでしょう。
いずれにしても、これは受難カンタータとありますが、要するに「受難曲」です。そう、息子カール・フィリップも受難曲を書いていたのです。
作曲年代はいくつか説があるようで、作品表では1765年になっていますが、ウィキやHMVではむしろそれより後の、ハンブルク時代に書かれたものとされています。
http://t-yoko.sakura.ne.jp/cpe_bach.html
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%9E%E3%83%8C%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F
キリストの最後の受難 S.クイケン&ラ・プティット・バンド
http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%E3%80%81C-P-E-%EF%BC%881714-1788%EF%BC%89_000000000034570/item_%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%8F%97%E9%9B%A3%E3%80%80S-%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%B3%EF%BC%86%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89_2694880
私は、ハンブルク時代を採りたいと思います。なぜなら、かつてモーツァルトで語ったことがあるかと思いますが、宗教曲を書くということは一つのステイタスで、それなりに認められませんと書くことすらあまりよく思われなかった時代だからです。実際、宮廷楽団員にしか上りつめられなかったベルリン時代は世俗曲、特にカール・フィリップが得意とした鍵盤作品が主として作曲されましたが、ハンブルク時代になりますと、宮廷楽長となったためか、宗教作品が多くなってくるのです。
ということは、勿論ベルリン時代という可能性もありますが、ハンブルク時代と考えるほうが自然であろうと思います。こういう事であれば、この作品だけでも国内盤を買ってもいいなあと思います。
さて、この作品、第9集と第10集に分かれていると言いましたが、それだけ大きな作品であるわけなのです。第9集は前半を取り上げており、キリストが縛につき、連行されていくところまでが描かれます。その点では、父ヨハン・セバスティアンの「ヨハネ受難曲」と同じ構成になっていると言えます。HMVの日本語訳を参照する限り、この受難曲はヨハネ受難曲と呼んでいいのではと思います。歌詞の内容が所謂「かっこいいイエス」となっているためです。この作品では、父のヨハネ受難曲よりも前半が長く充実したものになっています。
ヨハネ受難曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E5%8F%97%E9%9B%A3%E6%9B%B2
むしろ長さとしてはマタイにより近いものと言ってもよく、カール・フィリップの自信のほどがうかがえる作品です。
様式としてはバロックではなくまさしく多感様式となっています。レチタティーヴォが入るなどはまだまだ古風ですが、音楽はもうバロックではなく多感様式となっています。もしバロック風だとすればそれは父ヨハン・セバスティアンよりはむしろヘンデルに近く、前半最後のバスのアリア「克服したる者とほめ讃えよ、救われし罪人らよ!」はヘンデルのメサイアのような雰囲気すら持っています。
そう、父を意識しながらも、決して父のマネはせず、当時の先進の音楽で紡ぎだしていった作品であると言えます。この作品こそ、父を尊敬しながらも師事したのはテレマンだったという、カール・フィリップの人間性を表わしている物はないと思います。
様々な特色がある作品なので、今回は作品の紹介にとどめ、演奏などは第10集、つまり後半を採り上げる時に触れることとします。
聴いているCD
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ作曲
受難カンタータ「救世主の最後の受難」Wq233
グレタ・ド・レイゲーレ(ソプラノ)
バルバラ・シュリック(ソプラノ)
カトリーヌ・パトリアス(アルト)
クリストフ・プレガルディエン(テノール)
マックス・ヴァン・エグモント(バス)
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド
(deutsche harmonia mundi 88843021622-9)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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