かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:フライハイト交響楽団第53回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年7月6日に聴きに行きました、フライハイト交響楽団さんの第53回定期演奏会のレビューです。

フライハイト交響楽団さんは東京のアマチュアオーケストラです。昨年の第51回定期演奏会に私も足を運んでいます。

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昨年の「わが祖国」の演奏も頭にあり、さらに今回の演目と指揮者で行く決断をしました。しかも、時間も遅かったのも幸いです。私のコアな読者の方であれば「またはしごしたんですねw」と思われるかもしれません。はい、その通りで昼間はOrchestra & Chor AGORAさんを聴きに行っています。幸いなことに場所も近かったのもありました。一方は船堀ですが、このフライハイトさんの会場は今回錦糸町すみだトリフォニーホールでした。バスが1系統あってさほど時間もかからないのもはしごした理由です。鉄道でも都営地下鉄東京メトロで乗り換え1回。当日は大雨でしたが錦糸町に着くまでは何とか持ってくれたのが幸いです。

さて、今回フライハイト交響楽団さんを聴きに行った大きな理由は、プログラムが名前とは裏腹にフランス物特集だったこと、そして指揮者が女性である湯川紘恵さんだったこと、です。

プログラムは以下の通り。
イベール バッカナール
プーランク 牝鹿
ベルリオーズ 幻想交響曲

実はすべて、私がこのブログで取り上げたことのある曲ばかり。今回プーランクの「牝鹿」は全曲版ではなく組曲が採用されています。幻想交響曲も数回私も取り上げていますが、今回は最初に取り上げたエントリをご紹介。

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イベールのバッカナール。いきなり祝祭的な音をかっ飛ばしてくれます。それが力強く安定した金管!いやあ、昨年聴いた時も思いましたが、フライハイトさんのレベル高すぎです。全体的にも生き生きとしているんですよね。すみだトリフォニーということもあって響きも素晴らしいですがそもそも演奏が素晴らしすぎます。そもそもバッカナールとはバッカスを讃える酒宴の踊りのことです。バッカスとはローマ神話におけるワインの神様。それを讃える踊りはやはり酒宴でということになるわけで、そりゃあ踊り狂うということになるわけですから、はっちゃけた演奏をしてなんぼということになります。かといって支離滅裂で音程が不安定では芸術を演奏しているとはなりにくいですから、高いレベルで実現する必要があるわけですが、それがしっかりとできているのが聴いていて大満足です!ちなみに、私はお酒飲めませんし現在飲んではいけないのでご縁はないんですが・・・飲める時は酒宴のそのバカげた雰囲気が大好きだったので、その雰囲気が存分に表現されているのがアマチュアだということにもう感動なのです。

プーランクの牝鹿はそもそもはバレエ音楽ですから舞曲。その舞踊性もしっかりと表現していたのはさすがです。なので聴いていてとても楽しい!しかも気持ちいいんです。牝鹿には隠語でかわいこちゃんという意味があり、少し卑猥な匂いすら感じるのですが、しかしそこに果敢に切り込んでいく女性の湯川さん。少し恥ずかし気な女性に、追いかける男性の様子をしっかりと高い芸術性で表現されていることをスコアリーディングで掬い取っている様子がありありと見て取れました。湯川さんは自分が追いかけられている立場だったらどう感じるんだろうという意識も解釈の中にあったのかなと思います。それにしても指揮者の指示を受けてしっかり表現するフライハイトさんのレベルの高さをこの曲でも感じます。

そして最後の幻想交響曲。いろんな団体の演奏を聴いてきましたが、このフライハイトさんの演奏も力強くしなやかで美しい!特に最後の二つの楽章においては、幻想というよりは幻覚と言っていい内容の表現が絶妙!アマチュアらしいやせた音が全く聞こえず、若干金管がひっくり返り気味かなあという程度でそれも全く問題ないレベル。なので幻想交響曲という作品が持つドグマと美しいが故の危うさが演奏に同居しています。これをアマチュアの演奏で体験できるなんて、それだけで感動ものです。いや、この美しいが故の危うさが幻想交響曲のテーマだと私は個人的には考えているのですが、指揮者湯川さんの解釈も同じであるように感じましたしその解釈に対するオーケストラの共感もまたそこに存在していたように感じました。

マチュアオーケストラもここまでのレベルに達したかと思いますと、アマチュアオーケストラを聴き始めた当初に比べ本当にレベルが上がっていると感じます。そしてそれは、プロオーケストラのレベルも上がっているということなんですよね。NHK交響楽団も含め日本のプロオーケストラの実力は本当に上がりました。この恩恵を私たちは受けているんだと思うと、私自身は海外オケの実力の高さは認めつつ、日本のオーケストラを貶める発言はしたくないなあと思います。そういう人にはぜひともアマチュアオーケストラを聴きに行って欲しいなあと、このフライハイトさんの演奏を聴きますとさらに強く感じる次第です。

 


聴いて来たコンサート
フライハイト交響楽団第53回定期演奏会
ジャック・フランソワ・アントワーヌ・イベール作曲
バッカナール
フランシス・プーランク作曲
バレエ組曲「牝鹿」
エクトル・ベルリオーズ作曲
幻想交響曲作品14
湯川紘恵指揮
フライハイト交響楽団

令和6(2024)年7月6日、東京、隅田、すみだトリフォニーホール大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。