東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、3つのヴァイオリン協奏曲を収録したアルバムをご紹介します。
この3つの協奏曲とは、ブルッフ、ブゾーニ、リヒャルト・シュトラウスの3人が作曲したヴァイオリン協奏曲のことを指します。それぞれあまり有名ではない作品が収録されているのも特徴です。
ヴァイオリン協奏曲は協奏曲の歴史に於いても比較的古い時期に成立したジャンルです。故に、様々な作曲家が作っているわけですが、それにしても、この3人と言うのは意外かもしれませ仙。特にブルッフはヴァイオリン協奏曲は有名ですし、リヒャルト・シュトラウスも管弦楽では有名な交響詩をたくさん作曲した人でもあります。ですが・・・
まず、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第2番。え?第2番ってブルッフにあったんですか?と訝しがる人もいるかもしれません。そう、実は一つではなくブルッフは2曲ヴァイオリン協奏曲を作曲しており、ずっと前から私は聴きたかった作品だったのです。このアルバムでその願いがかなったのでした。1877年に作曲され同年11月4日に初演された作品です。ヴァイオリンの名手サラサーテとゆかりが深い作品で初演もそのサラサーテがソリストを務めています。
比較的演奏時間が短いのは第1番同様なのですが、味わい深い旋律も多く、第1番に引けを取らない作品です。もっと演奏機会が多くてもいいと思います。
2曲目はブゾーニのヴァイオリン協奏曲。ブゾーニと言えばピアノ曲で有名ですし実際ピアノ協奏曲も書いていますが、ヴァイオリン協奏曲も書いています。1896年~97年にかけて作曲された作品で、ヴァイオリンの技巧的な部分も見せつつ、甘い旋律もあり、ザ・ロマン派と言った作品です。それにしても、ピアニストとしてはリストを尊敬していたブゾーニですが、ヴァイオリンでも技巧的な作品を書くというのは、ブゾーニの才能の一端を示すものとして重要な作品なのではないかと聴いた限りでは思います。一応第1楽章と第2楽章はつながっていますが、第3楽章もほぼアタッカで始まっており、事実上連続して演奏される曲だと言っていいでしょう。
そして3曲目がリヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン協奏曲。作品8というだけあり17歳のころ(1881~82年)の作品であり、上記2曲が楽章が繋がっておりロマンティックさが前面に出ていることに比べますと古典的な作品で、3楽章にしっかりと分かれているのも特徴。リヒャルト・シュトラウスと言えばその生きた時代の割には古い様式から出なかった人でもあります。その特徴、あるいは将来における自分の理想の音楽像と言うのが、ここに見えるように個人的には感じます。
これらの作品を聞きますと、いかに現代のコンサートピースが偏っているかが分かります。よくドイツものばかりで他が演奏されないと不満を述べる人たちがいますが、そもそのそのドイツものであっても偏っているわけで、ドイツものにおける偏りが是正されない限りドイツものばかりという傾向が是正されないと私は思っています。なぜなら、有名曲じゃなくてもいい曲あるよね!という興味がなければ、フランスものも聴衆は聴くだろうか?と思うからです。いい曲であればドイツものだろうが他であろうが聴くのは喜びであるという意識が広く醸成されなければドイツもの、しかも有名曲ばかりに偏るのは当たり前であると言えるからです。特にプロオケは自分たちの活動が継続していくためにはある程度の利益を上げねばならないため、どうしても市場の要求に応えざるを得ません。私がアマチュアオーケストラを聴くために足を運ぶのも、その市場の意志から離れた作品が数多く演奏されるから、です。なぜ不満を持つならアマチュアオーケストラを聴きに行かないのだろうとずっと思っています。
実際、このアルバムはClavesレーベルで、指揮はリオール・シャムバダル、ヴァイオリンはインゴルフ・トゥルバン。わが国ではあまり有名な演奏者たちではないですが、検索してみれば華々しいキャリアの持ち主です。さらに、トゥルバンはチェリビダッケが尊敬したヴァイオリニストでもあり、その実力は折り紙付きであるわけです。海外レーベルではこういったメンバーによるアルバムが普通に出ているわけで、当然このようなアルバムをアマチュアオーケストラの団員たちは聴きまくっています。アマチュアオーケストラのメンバーがナクソスのヘビーユーザーであることは結構SNSなどで交流すれば当たり前に話されていますし、そう言った話を聞かずに不満ばかり言っている人が多ければ、日本は変わっていかないだろうなあと思っています。
このアルバムではさらにオーケストラはバンベルク交響楽団。甘く切ないヴァイオリンの旋律、そこに内包される内面性と精神性、さらにサポートするオーケストラの生命力、指揮者の解釈が加わって、見事な演奏に結実しているのは聴いていて楽しいですし喜びを感じるものです。こういったものが図書館にあり、手に届くのになぜ足を運ばないの?としか私には見えません。図書館は何のためにあるのか・・・今一度私たちは振り返ってみる必要があると思います。
聴いている音源
3つのヴァイオリン協奏曲
マックス・ブルッフ作曲
ヴァイオリン協奏曲第2番ニ短調作品44
フェルッチョ・ブゾーニ作曲
ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35a
リヒャルト・シュトラウス作曲
ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品8
インゴルフ・トゥルバン(ヴァイオリン)
リオール・シャムバダル指揮
バンベルク交響楽団
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