かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:R.シュトラウス 管弦楽作品全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、9回シリーズでリヒャルト・シュトラウス管弦楽作品全集をとりあげていますが、今回はその第2集を取り上げます。

実は、第1集と第2集は、音源がワーナーへ移ってからは最後の第8集と第9集と、半ば押しやられている感じなのですが、もともとのEMIでは最初の二つなんですね。これ、編集者の意図を感じます。

ワーナーだと、まずは交響曲交響詩がくるんですけれど、もともとのこのEMIのでは、協奏曲が最初に来るんです。え?以下の文章読んでも協奏曲だとは思えないんだけどって?

第2集に収録されているのは、ブルレスク、家庭交響曲余禄、そしてパンアテネの行列の3曲ですが、この3つ、じつはピアノ協奏曲なんです。これ、再度私も今回聴いてみて、ああそうだったのか!と目からうろこなんです。

どれほどの人が、リヒャルト・シュトラウスがピアノ協奏曲を書いていたなんて、知っているでしょうか?私たちは確実なものしか見ようとしないので、「ピアノ協奏曲」と題されていなければ協奏曲ではない!と断定しがちです。しかし、リヒャルトの交響曲が必ずしも伝統的な様式の範疇に入らないように、協奏曲もまた、必ずしも伝統的な協奏曲の様式に則らない、ということだと理解すれば、なーるほど!という作品がずらりと並んでいるんです。

まず、ブルレスク。もともとは「ユーモレクス」とおなじ意味を持つ音楽なのですが、実態はピアノ協奏曲です。幻想曲風というほうが正確かもしれませんが、交響曲をピアノ協奏曲へと編曲したチャイコフスキーのピアノ協奏曲第3番のようにカデンツァがあります。

ja.wikipedia.org

2曲目の「家庭交響曲余禄」。これはもともと有名な家庭交響曲の「子供の主題」を協奏曲の主題として採用したものです。腸チフスにより重体に陥った息子フランツをめぐる体験がテーマになっており、余禄となっていますが視点を変えれば引用だとも言えるでしょう。

ja.wikipedia.org

最後の「パンアテネ祭の行列」。1926年~27年にかけて作曲され、初演は1928年。初演の団体は二つ説があります。

www.age.ne.jp

パンアテネ祭に関しては、上にご紹介したURLのほうが詳しい説明がついているのでそちらを参照していただきたいんですが、いずれにしても古代アテネで行われていたお祭りであり、パルテノン神殿に描かれているんです。リヒャルト・シュトラウスはそのレリーフからインスピレーションを得て作曲しています。それを単なる管弦楽で表現するのではなく、ピアノ協奏曲とするとは、なかなかおしゃれだと思います。

いずれにしても、ここまで協奏曲なのですが、古典的様式を保ったものは3つほどしかないんですね。あとは交響曲と同じく、単一楽章になっているのがリヒャルト・シュトラウスの作品の特徴である、と知ることになります。となると、そのあとの大有名作品群の様式は、リヒャルト・シュトラウスにとって当たり前のことであると理解できます。そうなると、がぜん作品に素直に耳を傾けることができるというものです。こういった編集、私は素晴らしいと思います。長いけどとにかく聞いてみてね、目くるめく音楽による万華鏡を楽しめますよ!と初心者にいえますから。

最近、某SNSのグループで、初心者には作曲者名を略すなとか、なんだか不毛な議論が行われていますが、初心者がストレスに感じるのはそのほとんどが「マウンティング」であって、省略することではないと思います。このアルバムの編集方針がマウンティングをしない方向なのであれば、まさにこの全集は初心者向けだといえるのだろうと思います。神奈川県立図書館の司書さんのセンス、毎度のごとく絶妙だと思います。

さて、演奏するのはオケと指揮者は第1集と変わらずケンペとシュターツカペレ・ドレスデン。ピアノが、ペーター・レーゼルと、オケとピアニストは旧東独を代表するアーティストたちです。そう、面白いなと思うのは、もともとEMIなのに、タレントは旧東独勢なんですよね~。EMIなら自国でいくらでもタレントがいるはずなのですが、これ、あえてなのか、当時の東ドイツ演奏家たちを採用しているんですよね。これはあくまでも推測ですが、もともとはドイツ・シャルプラッテンだったのは?なんて思うのは私だけなのでしょうか。

いずれにしても、この3者がそろえば、その表現もダイナミックさと繊細さを兼ね備える、名演になるのは自明の理と言ってもいいかもしれないくらいです。まさにそこに「音の万華鏡」が広がり、ただ耳を傾けるだけでも、さらに対話をしても楽しめる演奏だと言っていいでしょう。音質もハイレゾ対応のスピーカーだと明確で、CDからリッピングしたとは思えないようなクリアな音質で、そこから考えてもこいつはもともとドイツ・シャルプラッテンだったんじゃないの?って思うんですよね・・・・・いや、EMIを貶めるつもりはないんですが。ドイツの技術というのは、それほどヨーロッパの中では抜きんでているんですよ。それは対米従属していると、わからないかもしれないですよ。

 


聴いている音源
リヒャルト・シュトラウス作曲
ブルレスク
家庭交響曲余禄 作品73
パンアテネの行列(交響的練習曲)作品74
ペーター・レーゼル(ピアノ)
ルドルフ・ケンぺ指揮
シュターツカペレ・ドレスデン

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