かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書~:Morgen R.シュトラウス、ドヴォルザーク、ソナタ集

東京の図書館から、今回は小金市立図書館のライブラリである、リヒャルト・シュトラウスドヴォルザークソナタ集のアルバム「Morgen」を取り上げます。

リヒャルト・シュトラウスと言えばどうしてもオペラや交響詩というジャンルを想起してしまいますが、ソナタも作曲しています。そして、ドヴォルザークもまた、交響曲のイメージが強い人ですが数多くの室内楽曲を作曲した人です。

まずは、リヒャルト・シュトラウスの「チェロ・ソナタ ヘ長調作品6」。作品番号からわかるように若い頃の作品で、1882~83年にかけて作曲されました。まだ18歳という若い頃の作品であるだけに、ベートヴェンなど先人の様式が強い作品ですが、それでも颯爽とした第1楽章、渋い第2楽章、壮麗な第3楽章と、若書きを感じさせない作品でもあります。

続く「ロマンス ヘ長調」は実は上記チェロ・ソナタと同時期に作曲された作品で、チェロ協奏曲の緩徐楽章になる予定だった作品。味わい深い旋律なのですが、しかしシュトラウスはチェロ協奏曲の作曲を断念。幻想曲風の作品となりました。しかしこのアルバムはソナタ集。つまり、オーケストラは参加していません。実は、この作品は現在はピアノとチェロによって演奏されます。ある意味、古典派は前期ロマン派に於いて、ピアノ協奏曲がピアノ四重奏曲で演奏されたのと同じように、オーケストラがピアノに置き換わっています。

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続く3曲目から5曲目まではドヴォルザーク。第3曲目は「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ」。1893年に作曲された、彼の子供の教育を念頭に置いた作品です。4楽章の作品なのでソナタとしてもいいところですが、様式的には簡単なものになっているためソナチネとなっているそうです。そのあたりが子供を念頭に置いたところなんでしょうが、とはいえバッハの平均律クラヴィーアや、ショパンエチュードなどは学習とはいえ結構高いレベルを要求しています。おそらく、ドヴォルザークの娘が当時10歳だったと言うのがあるんでしょう。

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第4曲目は「4つのロマンティックな小品 作品75」から第4曲。この曲はかなり紆余曲折な経緯を経て成立した作品です。まずドヴォルザークが当時住んでいた住居に居候していた学生クルイスのために三重奏曲を書きましたが難曲過ぎて別の作品を書くのですが、それが「ミニアチュール」と呼ばれる弦楽三重奏曲です。そのミニアチュールをヴァイオリンとピアノのためにドヴォルザーク自身が編曲したのが、「4つのロマンティックな小品 作品75」なのです。

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第5曲目は、有名な「ロンド ト短調」。1891年の作品で、ドヴォルザークの友人であったチェリスト、ハヌシュ・ヴィハンに献呈され、ヴィハンのチェロを念頭に置いて作曲されたと言われています。

最後はリヒャルト・シュトラウスに戻り、「明日の朝」。「4つの歌」作品27の第4曲で、もともとはソプラノとピアノ、ヴァイオリンのための作品ですが、ここではチェロとピアノで演奏されています。

さて、演奏するのはチェロがミッシャ・マイスキー、ピアノがパーヴェル・ギリロフ。あれ?演奏者はそれだけですかって?ええ、そうです。つまり、第3曲「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ」と第4曲「4つのロマンティックな小品」、そして最後の「明日の朝」は、ヴァイオリンではなくチェロで演奏されているのです!特に、第3曲目「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ」」はマイスキーの編曲だそうで、違和感ありません!記載がないものであっても、マイスキーの校訂が入っている可能性は高いと思います。さすがに出せる音の高さが異なりますから。

マイスキーの演奏が素晴らしいのは言うまでもないことですが、編曲あるいは校訂者としても、マイスキーは能力がある人だということを意味しています。特に最後の「明日の朝」は本来声楽しかもソプラノが入っている作品であるにも関わらず、ソプラノとヴァイオリンという2つのパートをチェロで置き換えてしまうという・・・原曲を聴いていないので何とも言えませんが、ピアノパートも校訂がはいていてもおかしくないと思います。こうなると、原曲が聴きたくなります。

以前の私であれば、原曲オンリーだったのですが、特にラ・フォル・ジュルネでいろんな楽器によるアレンジが楽しいと知ってからは、原曲はもちろん好みますが、そのうえでアレンジを楽しむという方向に変わっています。特にそれに転じたきっかけは、mixiにおける「同時鑑賞会」だったと思います。あれがなければ、今頃まだ原曲原理主義だったことでしょう。さらに、モーツァルト自身の編曲におけるピアノ協奏曲第14番のピアノ四重奏曲編曲を聴いたことが決定的となりました。そうでないと、リストのベートーヴェン交響曲アレンジとか聴けませんでしたし、バッハ・コレギウム・ジャパン小川典子による第九ワーグナー版も聴けることはなかったでしょう。

そういった経験が、アレンジものも抵抗がなくなり、音楽を本当に楽しめる人生になったと言えます。マイスキーがこのアルバムでなぜ「Morgen」という、最終曲に因んだアルバム名を付けたのかと考えるとき、室内楽曲を楽しむというのは原曲を楽しむだけではなく、アレンジも楽しむと言うことを意味していないか?ということなのではないかと思う次第です。

 


聴いている音源
Morgen シュトラウスドヴォルザークソナタ
リヒャルト・シュトラウス作曲
チェロ・ソナタ ヘ長調作品6
ロマンス ヘ長調AV.75
アントニン・ドヴォルザーク作曲
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ト長調作品100B.183(マイスキー編)
4つのロマンティックな小品 作品75第4曲
ロンド ト短調作品94B.171
リヒャルト・シュトラウス作曲
明日の朝 作品27第4曲
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
パーヴェル・ギリロフ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。