かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:グリーグの弦楽四重奏曲、間奏曲とチェロ・ソナタ

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、グリーグ弦楽四重奏曲と間奏曲、そしてチェロ・ソナタを収録したアルバムをご紹介します。

グリーグと言えば、多くのピアノ曲と、ペール・ギュントなどの管弦楽作品で有名ですが、作品の数からいえばピアニストであることを踏まえますと、実は室内楽作品のほうが多いとも言えます。このアルバムはそんなグリーグ室内楽作品を収録したとも言えるものです。

その中でも純然たる室内楽曲というのは管弦楽作品に匹敵するほど少なくもありますが、このアルバムにはその中から弦楽四重奏曲と間奏曲、チェロ・ソナタが収録されたことになります。

まず、弦楽四重奏曲ですが、グリーグは3つほど作曲しているそうですが、実際に完成されたのはこのアルバムに収録された弦楽四重奏曲1曲のみだそうです。4楽章形式でどこかブラームスを髣髴とさせる音楽。しかしブラームスにもない激しさも持つ作品です。1877年から78年にかけて作曲され、曲を献呈されたロベルト・ヘックマンの弦楽四重奏団によって初演されました。

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どことなくドイツ的な雰囲気を持ちますが、真似ではないところがグリーグらしさとも言えるかもしれません。4楽章が連続して演奏されるとされていますが、この演奏ではそれほど連続して演奏されておらず、ところどころで切られています。完全に終止するのではなく、短い休符で開始されるのではないでしょうか。この点では楽譜を見てみたいところです。

2曲目が間奏曲。チェロとピアノのための作品でソナタ的作品です。作曲は1867年。その20年後に、チェロ・ソナタが作曲されました。実は、チェロとピアノのための作品は間奏曲とチェロ・ソナタの2曲だけです。そのため一緒に掲載されたり、収録されることも多いようです。このアルバムでは成立順に間奏曲、チェロ・ソナタの順で収録されています。

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間奏曲は優しく静かな曲ですが、チェロ・ソナタは一転厳しさもある曲です。グリーグの作品の基礎にあるのはやはりドイツ音楽だなあという気がします。一方でグリーグはそのドイツ的な影響から逃れたいと作曲をした人でもあります。ノルウェーという国は確かにドイツとは異なる国ですが、歴史的にはドイツ文化圏の影響を強く受けている地域でもあるため、ドイツ的なものとそうでないものの区分けはさぞかし難しいだろうなあと思います。ドイツの作曲家でもうまれはデンマークとかノルウェーという人もいます。

演奏するのは、弦楽四重奏曲がガルネリ弦楽四重奏団、間奏曲とチェロ・ソナタがチェロのジュリアン・ロイド・ウェッバーとピアノのベンクト・フォシュベリ。ガルネリ弦楽四重奏団の演奏はまるでアルバン・ベルク四重奏団のようなアインザッツの強さがあり、ウェッバーとフォシュベリの演奏は間奏曲とチェロ・ソナタでは正反対。このことで浮かび上がるのは、グリーグの作品はドイツ的な色合いが強いものはどこかグリーグの意志が強く反映されたような曲であり、比較的薄いものはグリーグの意志がそこまで強く反映されていない曲なのかもと思わせることです。ちょうど年齢的には弦楽四重奏曲とチェロ・ソナタグリーグが30代半ば、間奏曲はまだ10代のころの作品だということです。この年齢差がどれだけ作品に影響を与えているかははっきりと言えませんが、ドイツ的なものとの格闘をしているような印象は持ちますし、演奏者もそこにフォーカスしているような気がしないわけでもありません。ドイツ的な色合いが出たりでなかったりという感じ。

でも、そこがグリーグの精神性だとも言えるのかもしれません。チェロ・ソナタは同じくライプツィヒ音楽院に学びつつもアマチュアとしての道を選んだ兄のために作曲された作品ですが、グリーグ国民楽派といいつつも、やはりライプツィヒで学んだことは人生に於いて大きな影響を占めていたのかもしれません。そもそも国民楽派とは、後期ロマン派の一派ですし・・・完全に影響から逃れることは難しかったのかもしれません。

その内面性を、演奏者たちはしっかりとスコアリーディングの上捉えていると考えてもいいように思います。やはり、いろんな作曲家の曲を聴く場合、室内楽は外せないなあと思う次第です。

 

 

聴いている音源
エドゥヴァルド・グリーグ作曲
弦楽四重奏曲ト短調作品27
間奏曲(チェロとピアノのための)
チェロ・ソナタ イ短調作品36
ガルネリ弦楽四重奏団
ジュリアン・ロイド・ウェッバー(チェロ)
ベンクト・フォシュベリ(ピアノ)

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