かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:グリーグ 室内楽作品全集1

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回から3回に渡りまして、グリーグ室内楽作品を収録したアルバムをご紹介します。

グリーグと言いますと、ピアノ協奏曲やペール・ギュントなどの管弦楽作品が有名なのですが、しかしグリーグが作曲した作品のほとんどは、管弦楽以外であるということを、以前ピアノ作品をとりあげたときに言及しているかと思います。

その延長線上に、この全集を借りてきたことはあります。それほど管弦楽以外が多いのなら、徹底的に聴いてみたい!という衝動は常にありました。神奈川県立図書館の膨大なライブラリは、その機会がくるのを待ってくれていました。

まず第1集は、ヴァイオリン・ソナタです。作品番号が若い二つのヴァイオリン・ソナタ。そもそもピアノ作品を多く書いているグリーグだからか、第1番はピアノから演奏が始まるんです。これ意外とびっくりしました。たいていはユニゾンかヴァイオリンが最初なんですよね。それがです、ピアノが先なんです。さすがはピアニスト・グリーグの作品だと思います。

ソナタの歴史を紐解けば、そもそもピアノは伴奏であり、ヴァイオリンが主です。それをベートーヴェンが同等にして、そのあとをロマン派の作曲家たちが同等で音楽を紡いでいきました。なら、ピアノが先、つまり、主みたいでもいいよね?というグリーグの発想。これを独創的と言わずして何でしょうか?

第2番は哀愁漂う作品。構造的な独創性は第1番と比べればありませんが、今度は歌謡性を存分に湛ており、疲れた私の魂にすっと音楽が入ってきます。

第1番が1895年、第2番が1867年と、若い日の作品なのですが、その生きのよさというか、はつらつとした音楽は、この新型コロナウイルスで悶々としている私の心を明るくしてくれます。特に第2番は結婚してすぐの作品。つまりは、ピアノ協奏曲とほぼ同じ時期の作品ということになります。ですが、この二つの作品、楽章数が3楽章なんです。ソナタは別に楽章数は決まっていませんが、多楽章というのが前提なので、通常は4楽章になることが多いのですが、これはともに3楽章なんですよね。これは意味深だって思います。通常、3楽章というのは「自由」がキーワードになることが多いのですが、一方で3という数字はキリスト教の三位一体。交響曲のように一つだけで断念したのではなく、ヴァイオリン・ソナタに関してはさらに最も有名な第3番も作曲しているということを考えると、このヴァイオリン・ソナタというジャンルで、何かを訴えたいのか?とも考えてしまうんです。それが何かは、まだぼんやりとしか浮かびませんが、ちょうどドイツ流というところから脱却しようとしている時期だとはいえるので、そのあたりの「パトリオティズム」と関係があるのかも?と思っています。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

最後に収録されている「ピアノ三重奏のためのアンダンテ」は、アンダンテ・コン・モートとして知られているもの。これら二つのヴァイオリン・ソナタからは10年ほど後の作品で、作品番号ではなくEG番号が付けられていますが、可憐な作品です。若き日のグリーグの、どこかはにかむような感じ。

これらを演奏するのが、ロシアのソリストたち。若きグリーグの気持ちに寄り添うような、カンタービレはまさに作品にぴったりな感じを受けます。アンサンブルを合わせてみたら、どうやっても喜びしか出ませんでした!みたいな。もちろん鼻歌交じりなんてことはないはずなんですが、演奏者たちが楽し気に弾いているのでは?と感じるんですね。魂から喜んでいる演奏というか。

でも、それは大切な要素です。演奏者が作品に対して共感を持って演奏できるか否かは、最も大切な要素と言っても過言ではありません。グリーグに対してどこか固定観念を持っているとこのような共感は難しいかもしれません。囚われのない演奏は、私自身の魂まで動かし、癒して行きます。こういう演奏こそ、プロの仕事ですね!

 


聴いている音源
エドゥアルド・グリーグ作曲
ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ長調作品8
ヴァイオリン・ソナタ第2番ト長調作品13
ピアノ三重奏のためのアンダンテ ハ短調
アレクサンドル・ヴィンニツキ―(ヴァイオリン、ソナタ
ウラディーミル・オフチンコフ(ピアノ、ソナタ
モスクワ・トリオ
 アレクサンドル・ボンドゥリャンスキー(ピアノ、アンダンテ)
 ウラジーミル・イワノフ(ヴァイオリン、アンダンテ)
 ミハイル・ウトキン(チェロ、アンダンテ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。