かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:東京カンマーフィルハーモニー 第22回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和3(2021)年7月17日に聴きに行きました、東京カンマーフィルハーモニーの第22回定期演奏会を取り上げます。

このオケの名はずっと前から知っていたのですが、なかなか機会がないオケでした。以前からプロアマ関係なしに室内オケには興味があり、コンサートには足を運びたいと思っているのですが、なかなか機会がないのでした。

そんな折、たまたま7月土曜日が午後空いているという情況が続いており、それならばと足を今回運んだ次第でした。

特に新型コロナウイルス感染拡大という時代を迎えて、室内オケの存在は注目を浴びていいと思っています。まあ、私は以前から財政的な側面から、室内オケ乱立の時代が来ると預言してはいましたが・・・・・

ドイツ・カンマーフィルがあるせいで、プロオケなのかと間違ってしまいそうですが、アマチュアオケです。しかし、実際にアンサンブルを聴けばセミプロなのか?と間違ってしまうことでしょう。

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このオケはプログラムを見てみると、「トラ」がほとんどいないんです。これもまたすごいことだと思います。せいぜいトレーナーの先生が入っているくらい。まあそれがエキストラだと言えばそうなるかもしれませんが、少なくともトレーナーの先生方は音を作り上げているわけなので、むしろ団員というほうが近いのではないかという気がしていますので、それほど驚きません。実際私が合唱団員だった時も、指導されている先生が入るということもしょっちゅうでしたし。

当日の曲目は、以下の通り。

モーツァルト 交響曲第31番「パリ」
ベートーヴェン 交響曲第2番

交響曲二つでおなか一杯って感じですが、これでもコンサートの所要時間は1時間25分。モーツァルト交響曲が20分ないので、ベートーヴェンはある程度長くてもそれくらいで終わってしまいます。というか、コンサートがこれくらいで終わるくらいのヴォリュームじゃないと、おそらく団員がしっかり練習できるということは現在のコロナ禍では難しいと言えるでしょう。

第31番「パリ」はモーツァルトがパリに滞在していた時に書いた作品ですが、ことさら明るい作品でもあります。その明るさを存分に楽しむ演奏は見事!自然と喜びが湧き上がってくる演奏は本当に素晴らしいと思います。しかもアマチュアらしいやせた音がないのも見事です。テンポが多少どっしりとした感じなのに、躍動感がみなぎっているのも聴いていて楽しいものでした。練習時間としては第2版を使ったほうが楽だったはずですが、あくまでも初版を使うことを貫いたのはよかったと思います。

ja.wikipedia.org

それは、当時のモーツァルトを自分たちに投影したのかもしれません。聴いていてどこか、演奏できる喜びを感じるんです。母を亡くして本来なら悲しいはずのモーツァルトですが、仕事と割りきって、作品を発表できる喜びがあったであろうと想像されますが、そんなモーツァルトの姿が、コロナ禍で十分に練習もできず、発表もできないという自分たちの姿とダブっていたように思うのは私だけなのでしょうか・・・・・

それはベートーヴェン交響曲第2番でさらに増幅されていたように思います。標題がついている作品の中では第1番に続いて演奏機会が少ない作品だと思いますが、当時のベートーヴェンはすでに難聴に苦しみ始めていた時期です。現代医学では、どうやらそれはベートーヴェンの「酒飲み」としての副作用であったというのが定説となりつつあります。それを現代風に言えば、依存症。アルコール依存だったかまではわかりませんが、依存気味であったことは文献から明らかだと思います。さらに当時次々に教えていたご令嬢たちと恋に落ちていくさまや、その後の甥カールを追い詰めて自殺未遂させる点などから、共依存が強かった人であることは間違いなく、むしろAC(アダルト・チルドレン)という診断を下すほうが適切であろうと思います。

そんなベートーヴェン共依存的な部分を、共依存という言葉を使わないにせよ、プログラムに記載している東京カンマーフィルの方々は、少なくともベートーヴェンがACであったというような意識がどこかにあったのではないか、という気がするんです。そうでなくても、恋に次々に落ちていくさまに共感する女性団員も多かったのではないのかなあという気が、演奏からはうかがえたのです。少なくとも、人気絶頂になっていくはずなのに、どこか歯車が狂い始めているその様子が、コロナ禍の自分たちに重なったのではないか?という気がしています。その分の強い意志を持った演奏がそこにはありました。アインザッツモーツァルトの時以上の強さだったりがそれなのですが、とても意思を持つ演奏だったと思います。

実は、当日同じ第2番を演奏するコンサートが同じ沿線でおこなわれていました。この演奏会は都営新宿線船堀駅前のタワーホール船堀。一方は同じ都営新宿線住吉駅にあるティアラこうとう。しかしこの演奏会を選んだ理由はうえで述べた通り、室内オケの演奏が聴きたかったからにほかなりません。それはコロナ禍で室内オケという、多少はソーシャル・ディスタンスが取れる団体であること。そして室内オケという少ない人数であるからこそ現れる、個の力がみなぎる演奏が聴けるという点です。演奏を聴いて、こっちを選んでよかった!と終始思っていました。電車の遅延で実はモーツァルトの第1楽章は再現部だけだったのですが・・・・・それでも大満足です。確かにティアラこうとうは素晴らしいホールなので、いい演奏が聴けた可能性は高いんですが、それは私自身の美意識とどれだけ相容れるかは未知数です。

しかし、室内オケであればだいぶ近づいてくる部分があるのは、プロオケで聴いていてすでに明らかだったのです。なら、アマチュアでも同じであろうと予測したのでした。そしてその予測は見事に当たった、というわけです。とはいえ、やみくもに当てたわけではない、ということです。しっかりとした理由があっての読みです。

このオケも、応援し続けていきたい団体の一つになりました。

 


聴いて来たコンサート
東京カンマーフィルハーモニー 第22回定期演奏会
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第31番ニ長調K.297「パリ」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第2番ニ長調作品36(アンコールはこの第4楽章終結部)
松井慶太指揮
東京カンマーフィルハーモニー

令和3(2021)年7月17日、東京江戸川、タワーホール船堀大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。