かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:リース 交響曲集

今月のお買いもの、平成29年1月に購入したものを御紹介しています。今回はディスクユニオン池袋店にて購入しました、リースの交響曲のアルバムをご紹介します。

たまには他の音盤組合の店へ行ってみるのもいいものです。こういった掘り出し物が見つかります。リースの交響曲など、実は山野でもなかなかお目にかかれません。

リースと言えば、このブログでも幾度かご紹介したことのある、ナクソスのマンガ「運命と呼ばないで」の主人公にもなった作曲家ですが、可愛そうなことに、ベートーヴェンの弟子、其れゆえに似た作品を残した人という印象が強く、あまり評価されていない部分があるように思います。このアルバムはその印象に異を唱えるものだと言っていいでしょう。

リースは交響曲を8曲書いており、そのうち作品番号が付いているものが7つ、WoO番号が付いているものが1つです。このアルバムには第1番と第2番と、それぞれ作品番号が付いているものが収録されています。

フェルディナント・リース
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9

「運命と呼ばないで」以降、わが国でもリースの再評価が進んでいますが、この一枚はリースの初期の交響曲を知るうえでとても重要な録音となっています。まず第1番は1809年に作曲され、1811年に出版されました。所々でベートーヴェンを彷彿とさせる和声が出てきますが、大部分はリースの個性が前面に出ています。古典派的な和声という意味においてベートーヴェンを継ぐ者であったことが、第1番ではっきりと認識できるのです。

リースが第1番を作曲した1809年というタイミングは、師匠ベートーヴェン交響曲でいえば第6番「田園」を書き終えた(1808年)後です。とは言え、ベートーヴェン交響曲第1番を作曲したのは1800年。それから9年後にリースが自身の交響曲第1番を作曲しますが、ベートーヴェンの中期的様式がすでに色濃く、第1番としては堂々たる作品となっています。

次の第2番は1814年に作曲され、1818年に出版された作品ですが、さらにがらりと変わり、リースらしさが全面に出て、どこにベートーヴェンの香りがあろうかという和声に変化します。勿論、様式的には古典派ですし、さすがベートーヴェンの弟子ですが、すでに和声は師匠の影響から脱却しています。

この時期のリースはすでにベートーヴェンの下にはいません。1805年にフランス軍の占領により徴兵されたことで師弟関係は終わっていたからです。しかし、ベートーヴェンから受けた永享の大きさと、その様式を自家薬篭中のものにしたことが、この二つの交響曲からは明確に聴きとることができます。

こういった作品を聴きますと、リースの交響曲は微妙な立ち位置だなあとつくづく思います。ベートーヴェンの中期様式と、ちょうど同じころ勃興していたロマン派の様式が混然一体となり、それが作品の個性になっています。悪く言えばどっちつかずとも言えるのですが、私としては古典派の範疇でできうる限り当時の最先端的な作品を作曲していたと考えます。前期ロマン派の作曲家の作品を聴きますとベートーヴェンよりもむしろモーツァルト的な香りを感じますが、それは多分にリースの作品に影響されているからではないかと以前から推理しています。

その上で、モーツァルトの作品もまだ当時の現代曲して演奏されていた時代なのです。私たちが今21世紀に暮らしていながら、良く聴くのは19世紀から20世紀初頭にかけての作品であるのと一緒です。前期ロマン派の作曲家たちがどんな作曲家に影響を受けていたのか、リースの作品は少しだけ教えてくれます。

演奏はグリフィン指揮チューリッヒ室内管。19世紀の作品を聴くには良い編成だと思います。第九を除けば、まだまだリースやベートーヴェン、そして前期ロマン派の時代はオーケストラの編成は今ほど大きくありません。はっきり言えば、ブラームスまでは現代よりも小さかったと言っていいのです。大きくなったのは後期ロマン派も最後、ブルックナーマーラーと言った作曲家が出てきてから、です。もっとはっきり言えば、20世紀に入ってから、なのです。

ですから、リースのような19世紀の作曲家の作品を聴く場合には、室内オケでも十分、むしろ適切だと言っていいのです。その上で、有名オケでも取り上げられることになるといいでしょうね。古典派の演奏アプローチで、端正で力強く、しなやかな演奏は、リースの作品が持つ時代性や生命力を十二分に引き出しています。むしろ室内オケだからこそ余計な贅肉がそぎ落とされ、作品が丸裸になり、その魅力が私たちにはっきりと提示されています。

最近はマーラー交響曲も室内オケで演奏され始めていますから、このようなオケの選択はとてもいいことだと思います。世界的にクラシック音楽に投入される資金が少なくなりつつある昨今の情況を考えますと、それはそれでいい傾向だと思います。勿論、すべてが室内オケの規模になってしまうのはさみしいですが、もっと室内オケによる演奏が増えますと、作品の本質が明快となり、さらなる味わいを私たちは味わうことができると思います。

出来ればリースの交響曲は全集としてライブラリに入れたいなあと思います。




聴いているCD
フェルディナント・リース作曲
交響曲第1番ニ長調作品23
交響曲第2番ハ短調作品80
ハワード・グリフィン指揮
チューリッヒ室内管弦楽団
(cpo 999 716-2)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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