かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ファリャとアルベニスの管弦楽曲

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はスペイン音楽のアルバムをご紹介します。

スペインの作曲家と聴いて、どなたを思い出しますか?え、誰かいたっけ?ってなりません?

言われてみれば、そんな人もいたよね〜ってなると思いますが、すぐ出てくることはなかなかないように思います。え、ボッケリーニですって?確かに彼はスペインで活躍した作曲家ですので、ひとりに数えてもいいかもしれませんが、基本的にはイタリアの作曲家です。

スペインらしさ、もっと言えば、国民楽派あるいは新古典主義音楽としてのスペインの作曲家となると、この二人を上げることになるでしょう。ファリャと、アルベニスです。この音源では、その二人の代表的な作品が収録されています。

まず1曲目は、ファリャの「スペインの夜の庭」です。カテゴリ的には大きくは協奏曲として扱われる作品ですが、協奏曲とはまた一味違った様式を持っている作品です。ピアノとオケがそれぞれ対等である上で、ピアノがオケの一パートを担っているかのように扱われ、なるほど、だから「交響的印象」というカテゴライズを作曲者はしたのだなと納得できるものです。

スペインの庭の夜
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%BA%AD%E3%81%AE%E5%A4%9C

ファリャは音楽史の区分的には印象派新古典主義音楽の時代を生きた人です。熱狂的な国粋主義とは距離を置いた人で、だからこそフランコ政権成立後はアルゼンチンへ亡命した人です。印象派あるいは新古典主義音楽に傾倒するのは時代もあったでしょうが、やはり同時代人として、熱狂的な国民楽派が何をもたらすのかを、自分の眼で見たからこそ、距離を摂ろうとして新古典主義音楽に傾倒していったと言えるでしょう。

マヌエル・デ・ファリャ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8C%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AA%E3%83%A3

一方、次のアルベニスの「イベリア」はもともとピアノのための組曲として1905年から1908年にかけて作曲されたものです。友人で指揮者、ヴァイオリニストであったエンリケ・フェルナンデス・アルボスが後にそこから6曲を選び、管弦楽へと編曲したものです。

イベリア (アルベニス)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A2_(%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%B9)

優れた編曲となっていますが、できれば原曲のピアノ版を聴きますとその素晴らしさが分かろうと言うものです。県立図書館には勿論、原曲のピアノ版もありますので、県民の方は是非借りてみて下さいませ。確かに、色彩が豊かなのです。けれども、これはこれで別の作品のように考えたほうがいいと言うのが私の見解です。勿論、この編曲は素晴らしいのですが、ピアノ原曲の幻想的かつ色彩豊かで、まるで真夏の太陽が照りつけるかのような、生命力溢れる点は若干削がれているように思います。

にしても、アルベニスはスペイン国民楽派と言っていい作曲家で、勿論ファリャよりは先輩になります。ファリャはアルベニスを尊敬していましたが、だからと言ってアルベニスの様式をよしとはしなかったわけです。それは世代の差、或は目にしたものの差であろうと思います。二人とも表現のベースにあるのは「スペインらしさ」です。そこは共通しています。ただ、その「らしさ」をどのように作品にビルト・インしていくかで、差があるということなわけです。

イサーク・アルベニス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%8B%E3%82%B9

この二人の作品を聴きますと、やれドイツ音楽がどうの、フランス音楽がどうのということはどうでもよくなります。この二つの作品の源流には明らかにドイツ・ロマン派音楽運動がありますし、その上で、スペインはイタリアの影響を受けている地域ですから、当然イタリア・バロックの影響を受けています。その上、地理的にはフランスも近いことから、フランスの影響も受けており、当然フランス・バロックの影響も受けています。そういった中で、イベリアはある意味ロマン派の延長線上的作品として誠にスペインらしい作品ですし、また「スペインの夜の庭」はドビュッシーなどの影響を受けた上でスペインらしい作品です。何故なら、スペインらしさを表現する様式として、コンチェルト・グロッソのような様式を選んだのですから。それは明らかに、ドビュッシーがラモーの音楽から「温故知新」したのと同じなのですね。、

フランス音楽のほうがドイツ音楽よりも優れていると言うのであれば、ならアルベニスのほうがファリャより優れているの?ということになります。果たしてそうなのでしょうか?そんな優劣をつけることができるのでしょうか。この音源を聴いて、私はアルベニスの「イベリア」は原作のピアノのほうがいいのではとは言えますが、それ以上優劣をつけることは難しいです。

むしろその優劣をつけることは不毛であると言うことを、この演奏は示しているのではないかと思います。アルゲリッチのピアノは、彼女らしく強烈ですが、その上でしなやかさも持っており、ファリャを演奏するには適当な役割であると言えます。指揮はバレンボイム。アルゼンチン生まれという彼の背景が、特に「スペインの夜の庭」では開花しているように思いますし、また「イベリア」でも、彼自身がピアニストであるという特質が、色彩感あふれる作品をしっかり色彩感あふれるものとして、明確にされている点が素晴らしいでしょう。オケはパリ管。バレンボイムの時代は低迷したなどと言われますが、この演奏を聴く限り、そこまでは認められません。もしそれを言うなら、団員の「相対化能力」が足りてなかったのだろうと思います。アルベニス愛国心を、どこまで自分たちの愛国心に引き寄せて、相対化して想像できるのか、という点でしょう。恐らく私が原作のほうがいいと感じる一つの要因はそこにあるように思います。

多分このパリ管での経験が、バレンボイムをして、現在のウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ設立の要因になっているのではないかなあと思っています。ディヴァンオケで聴くファリャやアルベニスはいったいどんな感じなるだろうなんて想像するだけで、ワクワクします。そしてピアノがアルゲリッチ・・・・・・うわお!

そんなプログラムがあったら是非聴きたいな〜と、思わずにはいられない演奏です。




聴いている音源
マヌエル・デ・ファリャ作曲
交響的印象「スペインの夜の庭」
イザークアルベニス作曲
「イベリア」より
 エポカシオン
 エル・プエルト
 エル・アルバイシン
 セビーリャの聖体祭
 トリアーナ
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
ダニエル・バレンボイム指揮
パリ管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村