かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:2011かわさき市民第九コンサートを聴いて

コンサート雑感、今年最後となる今回は12月25日に川崎市麻生区で行われた、かわさき市民第九コンサートについてです。増井信貴指揮、宮前フィルハーモニー交響楽団他です。

宮前フィルは一度定期演奏会を取り上げています。

コンサート雑感:宮前フィルハーモニー交響楽団第33回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/756

このエントリで、私はこう述べています。


川崎では毎年年末に市民合唱で第九が歌われ、市内4つのアマチュア・オーケストラが順番で担当しますが、今年は実は宮前フィルが担当です。時間が取れましたらそれも是非、聴きに行きたいと思っています。


幸いにも、時間が取れましたので、行ってきました。場所は、川崎市麻生区にある、昭和音楽大学のテアトロ・ジーリオ・ショウワ。震災以降、東京交響楽団が臨時に本拠として使っている、昭和音楽大学学生のための施設です。

http://www.tosei-showa-music.ac.jp/concert/hall/teatorogario/

まさしく劇場といったホールでして、残響が若干短いホール。その上、いつも宮前フィルが本拠としている宮前市民館と比べ、キャパと天上の高さなどはほぼ1.5倍の大きさになります。それが、最初宮前フィルを苦しめているなと思いました。

今回は休憩なしのオールベートーヴェンプログラム。まず1曲目はコリオラン序曲。最初、音の最後の処理に統一感が感じられません。しかしそのうちあってきましたので、まずこのホールの響きに苦労しているなと感じました(指揮者はきちんとタクトを振っているので)。強いアクセントは素晴らしかったですし、今年を振り返るのにとてもいい選曲だったと思います。

2曲目が第九。今回は楽章ごとに行きます。まず第1楽章。出だしはとても難しいですが、アマチュアにしてはよかったと思います。昨年の中央大学音楽研究会管弦楽部も管が少し唐突に出る感じになってしまっていましたが、今回の宮前フィルもそうでした。しかしアマチュアとしては問題になるレヴェルではなかったと思います。ティンパニが硬めの音で鳴っているのがとてもよかったと思います。特に、主題展開部における連打では、全体的にフォルティシモになり、きちんとコントラストがついていたのも素晴らしかったです。

第2楽章は、出だし本当に素晴らしかったです。アマチュアはなかなか合わないことが多い楽章であるのにもかかわらず、出だしであったのはその後の自信に繋がっていったと思います。ところどころ崩壊しそうな部分もあるのですが、そこを何とか粘って「情熱と冷静の間」を取ろうとする姿勢が好印象です。

第3楽章から合唱が入りますが、立ったままというのは気合が入っているなと思いました。実はこの演奏会、かつては私も参加したイヴェントですが、立つことが多かったのは事実です。しかし座ってもよいという指示も出るほど、合唱団の年齢層は多彩なのです。今回、誰一人として座っていません。それは、第4楽章において結果となって現れます。オケはまず出だしでタイミングが合わずどたどたしますが、すぐそれを集成したのには感心しました。9月の運命が決してフロックではないことを証明してくれました。途中のホルンがひっくり返らなかったのは素晴らしい!私が合唱団にいたならば、嬉しくてよし、行くぞ!と気合が入ったことでしょう。残念だったのはフォルテであるにも関わらず金管が出られなかった部分が散見されたことでした。pではできたりできなかったりしたので、準備の問題だけだと思います。難しいのは確かですが、一度合唱をやってみるのもいいかもしれません。これは中大オケと同じ指摘をしておきたいと思います。

しかし、全体として美しい楽章になっていたのは素晴らしかったです。

さて、第4楽章。最初のティンパニ連打は少し抑え気味に入りました。私の好みとしてはもう少し「ぶっ叩いて」くれたほうがよかったと思います。しかし、しっかりと音が浮き上がっていたのはよかったです。ここからはほとんどオケはアンサンブルが崩れません。よほど「想い」があったのだろうなと思います。低音部を少し大きめに演奏していたのはホールを考慮してなのかと思いました。今回、fとpの差がついていないというわけではなかっただけに、恐らく指揮者の指示だったのでしょう。

合唱が入る手前の「歓喜の調べ」のユニゾンはとても美しかったです。うまくなったなあ・・・・・今、プロオケでもここまで美しく演奏してくれるでしょうか。

そして、バリトン・ソロ。今回、ソリストは4名とも言うことなしです!アマチュアの演奏会でこれほど素晴らしいソリストに出会えるとは!いや、ソリストのほうがオケや合唱団に引きずられる部分が散見され、実はその部分だけは残念なのですが、発声はプロの実力をすべて見せてくれたように思います。男声合唱の「freude!」の部分も痩せず太いアンサンブルでよかったです。ソプラノが入ってからはとても力強く、私が歌った時などとは比べ物にならないくらいの上質なアンサンブルがまるで塊となって押し寄せてきたのには感動しました。常に私が言及するvor Gott!の部分は、きちんと六拍伸ばされていて、その上力強く美しい!この時点でうるうる来てしまいました。

ナポレオンマーチの男声合唱は完璧。そこからなだれ込むオケはまるで音楽の使徒という感じで、熱いものが演奏に現出していました。だんだん正確になってくるアンサンブルと、強いアインザッツとアクセント。それが練習番号Mのユニゾンでなんとテンポを少し落としての力強く美しいコラールへ!

男泣きに泣きました。涙をこらえることが出来ませんでした・・・・・特に、合唱団が子音を前にはじき出しているのが分かった時点で、ボロボロと大粒の涙がとめどなく流れ、体を震わせている自分がいました。

その後も合唱団は全くアンサンブルが崩壊せず、二重フーガは完璧です!ソリストが最後4名そろう部分ではソリストが走り気味になっているのを指揮者が抑えるのに必死でした。そして、一番最後「抱きあえ、幾百万の人々よ!」の部分をきちんと「しゃべって」いたのは素晴らしい!オケもこの部分でアップテンポしながらも細部まで聞き取れる演奏ができていたのは神がかりとしか言えませんが、素晴らしかったです。何かが乗り移っているような、そんな気がしました。その上、最後の残響のなんと美しいこと!

ブラヴィ―をかけましたがその前にかけた方がいらっしゃいました。当然の演奏だと思います。細部ではいろいろありますが、アマチュアでは最高の評価をしていいと思います。

鳴りやまぬ拍手が、聴衆の感動の度合いをよく表していると思いました。わたしも思わずスタンディング・オベーションとなりました。

全体として、演奏者の「想い」が伝わってくる、熱い演奏会だったと思います。合唱連盟の一人が語っていた「被災地の仲間が歌えない中で自分たちが歌える喜び」を強く感じることが出来た、素晴らしい演奏会だったと思います。

かわさき市民第九は毎年コア・アプラウスと重なることが多いのでなかなか聴きに行けませんが、宮前フィルに関しては今後も出来うる限りコンサートに足を運びたいと思います。次は来年5月に中大オケも演奏した「悲愴」。そして、来年12月には、本来今年の20周年記念演奏会でやるはずだったサン=サーンスの「オルガン付」というラインナップ。今度はどんな「想い」を聴くことが出来るのか、楽しみです。



聴きに行ったコンサート
2011かわさき市民第九コンサート
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
コリオラン序曲作品62
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付」
大山亜紀子(ソプラノ)
山崎智世(アルト)
小山洋二郎(テノール
伊藤純(バリトン
2011かわさき市民第九合唱団
増井信貴指揮
宮前フィルハーモニー交響楽団

平成23(2011)年12月25日、神奈川県川崎市麻生区昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ



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