かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:パデレフスキ 交響曲「ポーランド」

今月のお買いもの、今月最後で今年最後の一枚は、パデレフスキの交響曲ポーランド」です。マクシミウク指揮、BBCスコティッシュ交響楽団の演奏です。

今月はあまり聴き慣れない作曲家が多く登場していますが、このパデレフスキもそうでしょう。ポーランドのピアニスト、作曲家で、第1次大戦後のポーランド第3代首相を務めた人です。

イグナツィ・パデレフスキ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%84%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%87%E3%83%AC%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD

はじめはピアニストとして活躍し、その後作曲家として活動しましたが、アメリカへ移住後、第1次世界大戦の勃発とともに政治家として活動するようになり、第1次世界大戦後ポーランドの首相兼外務大臣としてパリ講和会議に出席、その後は国際連盟大使としての任を務めましたが、その後政界から引退後は演奏家として活躍しましたが第2次世界大戦の勃発とともに再び国政に復帰するなど、20世紀の荒波の中で活躍した人でした。

なのに、なぜかこのウィキの説明では、この交響曲や、ピアノ幻想曲などが抜け落ちているのが不思議です。国民楽派とまでは行かないにせよ、それに近い作風を持っています。特にこのポーランドはその一つです。

この「ポーランド」は楽章構成が3楽章になっていますが、仔細に聴きますと実は第3楽章が二つに分かれていることが分かります。指示は単に「ヴィヴァーチェ」なのですが、明らかに前半と後半で音楽が異なりますので、4楽章的とも言えるかと思います。それでも3楽章となっている点に、私は注目しています。

音楽的にスラヴ的なものを持ちつつ、3楽章というのは、どこかで見た形式です。そう、マルチヌーです。

今月のお買いもの:マルチヌー 交響曲全集1
http://yaplog.jp/yk6974/archive/819

マルチヌーのほうが時代的には遅いのですが、私の中ではなぜか符合します。二人ともなぜ3楽章なのか、考えてみても面白いなと思います。マルチヌーはわかります。では、パデレフスキは?

1908年に完成されたこの曲は、リストやチャイコフスキーの影響が見て取れます。リストの二つの交響曲と、チャイコフスキーの第2番と「マンフレッド」です。チャイコフスキーの第2番は同じく「ポーランド」です。この曲は明らかに、彼の祖国への想い、特に独立への想いというものがひしひしと伝わってくるのです。

ウィキの記述は、1910年前後からパデレフスキが政治的な思想を前面に押し出すようになったことを示唆しています。「ドイツ騎士団に対するポーランドの戦勝500周年を記念して、古都クラクフの住民にモニュメントを贈った。また同年には、ショパン生誕100周年記念のモニュメントも建てている。」という記述がそれです。この曲もそういった意識の延長線上に位置するものと考えていいと思います。

時代を考えれば当然かもしれませんが、距離をとった作曲家もいた中で、彼は政治とかかわっていく道を選んだのです。それがこの後、ポーランドの政界で奔走することに繋がっているように思います。わたしにはこの曲はその萌芽のような気がしてなりません。何かが襲ってくるような開始を持つ第1楽章、決して明るくはない緩徐楽章の第2楽章、そして最初は暗く重々しいが後半勝利の音楽になる第3楽章(民族的な旋律も一番多用されています)。何かを予感させます。それがその後ポーランドが辿った歴史なのかどうかはわかりませんが・・・・・

彼の作品は決して多くはありません。20世紀の激動の中で政治家として奔走し、さらに第2次大戦では政治家としてのみならず、芸術家として演奏で奔走したためです。しかし、この交響曲はそれが私の生きる道なのだという、パデレフスキの宣言のようにも聴こえます。

その彼が愛してやまなかったポーランドを表現したこの曲を、マクシミウクとBBCスコティッシュは丁寧に演奏しています。決して誇大なものにならず、冷静に音楽を鳴らすことでかえってドラマティックな点が強調されています。「情熱と冷静の間」のバランスが取れていると思います。もう少し突っ込んでもよかったかもしれませんが、これくらいのほうがいいと思います。決して派手で勇壮な部分が多いわけではなく、当時のポーランドが置かれていた「支配される」という立場と、それに抵抗するという場面が描かれているためで、力任せでは決して演奏できません。

端正かつ劇的なこの演奏から、ポーランドが辿った歴史が浮かび上がってくるのはなぜなのでしょう?ドラマだけではなく、教科書も浮かんでくるのです。それが不思議な演奏です。まるで大河ドラマのような・・・・・

さて、今回は今年最後のエントリとなりました。その最後にこのパデレフスキをご紹介したのはたんなる偶然で、私もこういった作品を最後に紹介するために買い求めたわけではありません。このCDは横浜関内、プレミア・ムジークで買い求めましたが、その時もこのようなナショナリズムに溢れているから買い求めたわけではありません。しかし、私の意識のどこかに、現状を憂える意識があって、手に取ったのかもしれません。たまたま、mixiのコミュにおいて紹介があったのを覚えていただけなのですが、今年一年を振り返って、この曲ほど何かを訴えているような気がするものもありません。

3月の震災、それに伴う原発事故。夏から秋に掛けては大雨や台風。日本国内ではないにせよ、製造業が国を支えている我が国にとっては、タイの水害も決して他人事ではなかったですし、今年一年は大災害の年だったと思います。そして、日本人が進むべき道を、真剣に考えなくてはいけなかった年だったとも思います。

来年が、皆様にとって、善き年になりますよう、この曲を聴きながらここで筆をおきたいと思います。



聴いているCD
イグナツィ・ヤン・パデレフスキ作曲
交響曲ロ短調ポーランド」作品24
イェジー・マクシミウク指揮
BBCスコティッシュ交響楽団
(Helios CDH55351)※ヒューぺリオンから出ていたものの再販です。



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地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。