かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:マルチヌー 協奏曲集

今月のお買いもの、今回からようやく11月に購入したものをご紹介したいと思います。今回はマルチヌーの協奏曲集。ヒコックス指揮シティ・オブ・ロンドンシンフォニア他の演奏です。

マルチヌーは以前、このブログでもご紹介しています。

今月のお買いもの:マルチヌー 交響曲全集1
http://yaplog.jp/yk6974/archive/819

今月のお買いもの:マルチヌー 交響曲全集2
http://yaplog.jp/yk6974/archive/820

今月のお買いもの:マルチヌー 交響曲全集3
http://yaplog.jp/yk6974/archive/826

今月のお買いもの:マルチヌー ピアノ協奏曲集第1集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/883

今月のお買いもの:マルチヌー ピアノ協奏曲集2
http://yaplog.jp/yk6974/archive/889

ちょうど昨年から、マルチヌーの音楽にはまってきています。ですので、なかば固め打ちのような形になってしまっています^^;

ここまで聴いてきたのですから、そうなると興味は他のジャンルにも広がって行きます。ということで買ってきましたのがこのCDです。大阪ワルティクラシックセカンドハンドでの購入です。

はい、正倉院展へ行ってきながら、こういった音源も買ってきたという訳でした。たまたま、ネットで知り合いました方にご紹介いただき、店に入ってみると・・・・・

ディスクユニオンと比べれば狭いのですが、しかし、丁寧に見ていきますと掘り出し物がけっこうあるんですよ、これが・・・・・だから、世間は広いですよねえ。しかも、まさかはまっているマルチヌーが出ているとは、思いもよりませんでした。

大阪と言えば、東京、横浜に次ぐ関西最大の都市です。さすが、違うなあと思いました。

ワルティさんは、大阪駅前(というか、大阪駅の地下街)にある中古CD店です。公式サイトがないので私が参考にしたブログをご紹介です。

Walty堂島 から WALTY CLASSICAL へ 
http://blog.ap.teacup.com/e135/134.html

もし関西に行かれる方がいらっしゃいましたら、一度お寄りいただくといいかと思います。関東では見つからない、思いもよらないものがありますし、また、よく知られているCDがスーパーバジェットプライスで売られていたりします(私がご紹介したものが500円で売っていたには驚きを禁じ得ませんでした。ただ、それだけメジャーであるということでもあるんですね)。

さて、CDの御紹介に戻りましょう。マルチヌーは交響曲とピアノ協奏曲を取り上げていますが、今回は様々な楽器が登場します。そして、彼が生きた時代というものを感じさせる作品がずらりと並んでいます。

まず第1曲目が「複協奏曲」。どんな曲だろうかと思うかと思いますが、買うとき私も同じように思いました。「複」とは複数の楽器のことを意味していまして、その楽器の中には実は弦楽合奏も含まれるという、少し変わった作品です。英訳もダブル・コンチェルトとあるので小難しいように感じてしまうんですが・・・・・実際、音楽も作曲年が1938年という時期もあって不協和音多用ですし、しかもおどろおどろしい部分も多々あるので、それが更に難しいものにしている点は否めないんですが、しかしさすがブックレットを書く人は素晴らしいですね。これは「合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)」への興味から成立した作品ですとあって、なーるほど!と膝を打ったのです。

確かに、編成からすれば合奏協奏曲です。バッハよりはむしろ、イタリアバロックの作曲家が書いているジャンルです。

合奏協奏曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E5%A5%8F%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2

特にコレッリの作品とは類似点が多いと私は思います。旋律線だけを追いかけていると難しく感じますが、それぞれの「音」がどうアンサンブルしているかに傾注して聴いてみますと、これがとても面白いのです。弦楽合奏は二つに分かれているはずですがそんなことはみじんも感じさせないほど自然ですし、そのアンサンブルの上でソロ楽器であるピアノとティンパニ(!)が協奏するそのさまは、大オーケストラとピアノとの協奏曲を聴いているかのようです。弦楽合奏とは思えない迫力と、自然さを持ちます。

次の曲は、ソリスト弦楽四重奏団である「弦楽四重奏管弦楽のための協奏曲」。私たちは弦楽四重奏というと室内楽を想像してしまい、オケに対し非力なんじゃと思ってしまいますが、それがどうしてそんなことが全くないのです。それはおそらく、このCDに於いては編成が重要なファクターになっているのだろうと思います。シティ・オブ・ロンドンシンフォニアはロンドンを拠点とする室内オーケストラであり、ナクソスなどではおなじみの実力派のオーケストラです。

公式HP
http://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&langpair=en%7Cja&u=http://www.cityoflondonsinfonia.co.uk/&ei=NSOpULzQB6yciAfhxICQBA

モダンオケは後期ロマン派の音楽の特徴故、編成を極大化してきましたが、それだけは作曲家の表現として足らなくなってきたのも事実です。そのきっかけとなった運動が、新古典主義音楽でした。

新古典主義音楽
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%8F%A4%E5%85%B8%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E9%9F%B3%E6%A5%BD

マルチヌーはまさしく、時代的に新古典主義音楽の洗礼を受けています。彼が作曲を始めてパリへ留学したころ、ちょうどその運動が勃興した時期でした。ご多分に漏れずマルチヌーもその影響から逃れることが出来なかったのです。いや、そもそもマルチヌー自身がそれに影響を受けるような嗜好(民謡への興味など)を持っていたという点もあるでしょう。

ボフスラフ・マルティヌー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%95%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8C%E3%83%BC

なるほど、こういった作品が出来てもおかしくないなあと思います。そもそも、弦楽四重奏団とオケと全く釣り合わないのかといえばそんなことはないでしょうが、しかし内容的にバロック音楽に範をとっており、となると後期ロマン派のような協奏ではないわけで、当然ですがオケと「会話する」協奏曲となります。大編成オケではなく比較的小さな編成となるのは自明の理でしょう。初演はロンドン・フィルがオケは勤めていますが、恐らく編成は小さかったものと思われます。このCDでちょうどいいバランスですから。オケが大き過ぎたり、あるいは弦楽四重奏団が大き過ぎたりというのが交互にでてきたりしますので、そういっていいと思います。

少なくとも、会話する、つまりきちんとアンサンブルするという点に於いて、全く問題ないので、マルチヌーは少なくとも、例えばラフマニノフのような協奏曲を念頭に置いていたわけではないと思っています。特に緩徐楽章である第2楽章は単なる静かな音楽ではなくアンサンブル重視なので・・・・・そもそも、この作品もブックレットによりますとマルチヌーがコンチェルト・グロッソを念頭に置いているとのことですから、納得です。

最後の曲が協奏交響曲。しかもソロ楽器はヴァイオリン、チェロ、オーボエファゴットと、実はハイドンも作曲している編成なのです。よく交響曲とされてしまう、アレです。

協奏交響曲 (ハイドン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%94%E5%A5%8F%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3)

そもそも、この作品は1948年にマルチヌーがプリンストン大学の図書館(県教委の方〜、ここ重要です!)でハイドンのを見つけたことが作曲の直接の動機となっており、さらに彼が以前からハイドンへの敬意を持っていたことも相まって、同じソロ楽器で同じジャンルを作曲したいという気持ちから作曲されたものです(1949年)。主調だけでなく各楽章が全くハイドンと同じ調性になっていること、そしてマルチヌーの作品としては明るく伸びやかであるという点から、ハイドンリスペクトの作品と言って差し支えないでしょう。しかし、音楽自体はもちろんマルチヌー自身、そして彼が生きた時代を反映したものとなっています。でも、抜けるような青空と平明さは、まさしくハイドンを意識した新古典主義音楽です。

つまり、このCDはマルチヌーの音楽的な特徴の一つである「新古典主義音楽」で貫かれているのです。そもそも、ヒコックスは古典派を得意とする指揮者ですが、その面目躍如という点が散見されます。それが音楽自体が哲学的であるにも関わらず、私たちにきちんと血の通った音楽を呈示していることに繋がっているかと思います。人間が持つ不安や、希望、喜び、悲しみ・・・・・それが混然一体となって、素晴らしいアンサンブルで押し寄せてきます。

しかも、実は弦楽四重奏団以外はブックレットを見る限り、なんとピアノ以外は明らかにオケの団員がソリストを担当しているのです!できれば、ピアニストの名前も書いてくれているとありがたかったなあと思いますが、それゆえに中古市場へ出てしまったのかもしれませんね。しかし、このソリストを団員がするという点は、まさしくこのオケが古典派のオケを念頭に置いていることを如実に表していますし、それゆえにこのマルチヌーとも相性がいいのでしょう。

新古典主義音楽は私はかなり誤解したなと思う点があります。単なる複雑系で、面白みに欠けると。しかし、この演奏はそれをひっくり返すだけの説得力と、魅力にみちあふれています。アンサンブルが素晴らしいが故のダイナミクス。それからいずる人間の感情。名盤が持つような「変態」さ。それが音楽を積み上げるという行動で示されるという職人技。これを幸せと言わずしていったい何というのでしょう!

ますます、東横特急で・・・・・いや、新古典主義音楽から目が離せません。



聴いているCD
ボフスラフ・マルチヌー作曲
2組の弦楽合奏、ピアノとティンパニーのための協奏曲(複協奏曲)
弦楽四重奏管弦楽のための協奏曲
協奏交響曲第2番変ロ長調
エンデリオン弦楽四重奏団
リチャード・ヒコックス指揮
シティ・オブ・ロンドンシンフォニア
(ヴァージン VJCC-23074)



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