かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:シューベルト 八重奏曲

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今年初めに取り上げますのは、シューベルトの八重奏曲です。

シューベルトと言えば歌曲、というイメージが強く、好き嫌いもはっきりしてしまう作曲家ではありますが、私は全般的に好きです。特に室内楽が・・・・・・

私が初めて買ったシューベルトの作品も、あの有名な「ます」です。そう、歌曲からでは実は決してないんです。でも、結果的に私はそれがよかったと思っています。

多くの歌曲をのこしているからこそ、シューベルトは魅力的な旋律の作品を数多くのこすことができたのだと思います。

そのシューベルトは、ベートーヴェンを尊敬していましたし、またベートーヴェンが生前シューベルトと会った時も、その音楽を高く評価していたということは、何故かスルーされるのが面白いのですが・・・・・

さて、この八重奏曲は、そのベートーヴェンをある程度意識して作曲されたものではありますが、シューベルトの作品の集大成とも言える作品となっています。

八重奏曲 (シューベルト)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88)

様式的に言えば、確かにディベルティメントと言ってもいい作品です。ただ、作曲年である1824年という時期をみれば、この作品は前期ロマン派ならではの、シンフォニックな面も持っています。

特に目立つのが、ホルンの使い方です。ホルンが主旋律の中でファンファーレの役割を果たしており、まるでベートーヴェンの第九を彷彿とさせます。時期的にはすでに第九が初演されており、シューベルトが影響された可能性は0ではありません。

同時期に書かれている、ザ・グレイトなどのシューベルト自身の交響曲との関連も指摘されますが、ベートーヴェンを尊敬していればそれは決して不自然なことではなくむしろ自然であると言えるでしょう。ホルンはそんな中で、単なるファンファーレではなく、主旋律そのものを扱う場面すらあり、ディベルティメントよりはやはり「八重奏曲」と言える、立派なものであると言えます。

さて、ここでなぜ「弦楽」ではないのかという、え?そんなことをという問いを投げかけてみましょう。だって、管楽器が入っているからでしょ?と多くの方が答えるかと思いますが、その通りです。では、なぜ管楽器が入っているのかという事を、考えたことはあるでしょうか。

おそらく、管楽器の代わりに、ピアノが入っていれば、「ピアノ四重奏曲」になりますし、ホルンとファゴットがこの作品から抜けていれば、「クラリネット四重奏曲」になるわけです。でも、なぜそんな編成、或はジャンルがあるのでしょう?

それは、四重奏曲というジャンルは、古典派の時代、オケの代わりとみなされてもいたことに端を発すると言えるでしょう。例えば、モーツァルトは自身のピアノ協奏曲第14番をピアノ四重奏曲に編曲していますし、以前そのナクソスのアルバムを取り上げています。

今月のお買いもの:モーツァルト ピアノ協奏曲第12番から第14番 ピアノと弦楽四重奏ヴァージョン
http://yaplog.jp/yk6974/archive/617

つまり、この八重奏曲も、シューベルトにとって交響曲に次ぐもの、という意識があったのではないかと思います。とてもシンフォニックなこの作品に、シューベルトはザ・グレイトを作曲する時期に自らが持っていた能力のすべてを注ぎ込んだ作品であると言えるでしょう。そこが、ベートーヴェンが七重奏曲ではある程度平易なものにせざるを得なかったのとは対照的に、前期ロマン派という時の、作品をより高度なものにするという「気風」が感じられるのです。

この演奏の編成も、その意識がはっきりと見て取れるものになっており、弦楽部はウィーン四重奏団。木管金管ソリストが勤めています。古典派的な色もありつつ、まさしく前期ロマン派の作品であるこの八重奏曲に対するアプローチが、とてもオーソドックスであることを示しています。

その上で、各アンサンブルは自然で、各々が混然一体と溶け合う中で、作品が持つ明るさだけでなく、柔らかさ、その一方で持つシンフォニックな重厚さも表現されているのが素晴らしいです。弦楽四重奏に、たった管楽器が3つついて、かつ弦楽器にコントラバスが付け加えられただけなのに、これほど重厚になるのかと、驚きを隠せません。

シューベルトは協奏曲を書いていませんが、この八重奏曲は協奏的でもあります。その点でも、シューベルトがこの作品に込めた「新しい時代への希望」が見て取れますが、演奏から感じられるのはまた素晴らしい点です。

60分近くある大曲です。交響曲のみならず、この作品もさらに多くの人に聴かれるべき作品でしょう。




聴いている音源
フランツ・シューベルト作曲
八重奏曲ヘ長調D.803、作品166
ペーター・シュミ―ドル(クラリネット
ギュンター・へーグナー(ホルン)
ミラン・トゥルコヴィッチ(ファゴット
ミラン・ザガト(コントラバス
ウィーン四重奏団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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