コンサート雑感、今回は中央大学音楽研究会混声合唱団の創立60周年記念演奏会についてです。
この合唱団に関しましては、昨年から今年にかけて2度取り上げています。
今回、この2回に勝るとも劣らない、いや、それ以上の演奏をしてくれました。ホールは、文京シビックホール。このホールもじつは以前聴きに行ったことがありまして、確か、混声合唱団「樹林」の定期演奏会だったように記憶しています。
まず、オケと合唱団は配置が代わっていました。オケは18世紀シフト、つまり、ヴァイオリンを両翼に配置するものです。一方合唱団は、男性が上に、女性が下に、客席から見て左から右ヘ高音パートから低音パート、男声であればテノールからバス、女性であればソプラノからアルトという並び順になっていました。
これは面白い配置だなと思いました。合唱団のこの並びであれば、むしろ近代的なオケの楽器配置のほうがいいように一見すると思います。しかし、実際に演奏が始まってみると全く違和感ないのです。
さすがプロだなあと我が身を反省しました。なぜならば、考えてみれば、この編成は聖歌隊がオケ付きで歌う配置だからです。なるほど、指揮者の白石先生は、演奏する曲が聖書にまつわるものであることを念頭に入れているんだなと。その演目は、メサイアK.572。
そう、先日「マイ・コレクション」で取り上げたばかりの、モーツァルトが編曲したものです。
ykanchan.hatenablog.com
その時にも取り上げたサイトをもう一度再掲しておきましょう。
ヘンデルの「メサイア」の編曲 K.572
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op5/k572.html
スヴィーテン男爵によってきっかけが与えられたもので、この編曲がレクイエムへと結実します。バロックの名曲が、古典的な編成によみがえり、生命を吹き込まれた編曲です。
このCDを持っていたからこそ、9月の演奏会を取り上げたエントリで、私はこう述べたのです。
是非とも、12月の「メサイア」K.572も聴きに行きたいと思います。
行ってきてよかったと思っています。アンサンブルの素晴らしさは筆舌し難いのですが、兎に角軽く美しいのです。ヘンデルの原曲が素晴らしいのは、重いテーマを扱っているにも関わらず、音楽が決して重くない点です。それが完璧なまでに再現されていました。オケも弦の当て方が軽めですし、合唱団の発声も軽めになっていまして、素晴らしかったです。
しかし、これが重々しくないからと好まない方もいらっしゃると思います。そして、重々しいほうが大変で素晴らしいのだと。しかし、断言します。特に、合唱においては、軽く美しく演奏するほうが、重々しく演奏するより数倍難しいのです。
私は第九でそれを経験済みです。大田区のアマチュア合唱団に所属していた時、中大混声合唱団と同じ演奏をしようとしたことがあります。正直言いまして、中大混声合唱団に較べれば全く比較になりません。重々しい演奏を第九はするものだという先入観が邪魔をして、どうしても軽く美しく演奏ができないのです。妙な力が入りますし、特に高音部で必要以上に頑張ってしまいます。
今回の演奏会では、それが一切ありません。特にソプラノの高音部での美しさには、涙が出そうになるほど感動しました。それでいて、力強いのです!
もし、私がその当時にこの演奏を聴いていれば、団員に「参考にすべきは、中大混声合唱団だ。だから、私たちの第九も同じように軽く美しく、その上で力強く歌おう!」と言ったことでしょう。
さらに素晴らしい点は、音が上下に動き回る時、Hが入っていない点です。川崎市宮前区の合唱団に所属していた時、合唱指揮者にこれは口酸っぱく言われた点なのですが、これがやろうとしますと難しいのです。ところが、合唱団はまるで当たり前のように、完全になだらかに歌っていました(これは後述するソリストも一緒で、素晴らしかったです!)。音楽がきちんと流れ、それゆえに美しさに繋がっていると思います。OBも今回は入っていたようですが、OBもそれができるというのは本当に素晴らしいと思います。
オケも素晴らしい!昨年の第九の時と同じアレクテ室内管弦楽団ですが、昨年私はこう述べました。
さて、オケですが、全体的にはよかったのですが、管の調子が悪かったのか、なかなか指揮と合わない部分がありましたし、合唱団が出てきてからはその迫力に押されたのか、冷静さを欠く部分もあったのが残念です。プロなのですからそのあたりはむしろ学生をサポートするくらいの気概がほしかったです。
今回は全く問題ありませんでした。ヴァイオリンを両翼に配置していながら、息の合ったアンサンブルを聴かせてくれました。出だしの序曲からばっちりです!ホールの残響の使い方も絶妙で、うっとりしてしまいます。これは、合唱団も一緒です。ともに白石先生が目配せしている点が功を奏しているのでしょう。その点では、大阪のテレマン室内オーケストラ・合唱団にも匹敵するかもしれません。
ソリストも素晴らしい!軽くそして力強く、しなやかです。特に、ソプラノとバスですが、ソプラノは高音部でも力がきちんと抜けていて、「情熱と冷静の間」が取れることによって実現される美しさを身をもって学生に示していました。バスも不必要に力が入っておらず、美しく力強い低音を聴かせてくれました。
ヘンデルのメサイアと言えば、第2部最後の「ハレルヤ」コーラスで起立するのが慣例になっていますが、私は何度起立しようかと思ったことでしょう!ブラヴィ―をかけるに相応しい演奏でした。実は、本演奏では演奏後起立し讃え、最後のアンコールで演奏した時には「慣例通り」起立して聴かせていただきました。それにふさわしい、素晴らしい演奏でした。
次もぜひ、時間ある限り足を運びたいと思っています。まだ演目が決まっていないようですが、どんな曲であれ、時間が取れましたら馳せ参じたいと思います。
聴いてきた演奏会
創立60周年記念・中央大学音楽研究会混声合唱団演奏会
ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデル作曲
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト編曲
メサイア K.572
岩本麻里(ソプラノ)
紙谷弘子(アルト)
鈴木准(テノール)
大森いちえい(バス)
渡邊温子(チェンバロ)
アレクテ室内管弦楽団
白石卓也指揮
中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部
2011年12月23日、東京都文京区、文京シビックホール 大ホール
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