かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会混声合唱部第48回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は2011年9月28日に行われました、中央大学学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部の第48回定期演奏会についてです。

この合唱団については、昨年末にもエントリを上げました。

音楽雑記帳:中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部第九演奏会を聴いての雑感
http://yaplog.jp/yk6974/archive/490

この時の感想は、とにかく発声が軽くその上で力強さもあるなあというものでした。これは素晴らしい、ぜひ次の演奏会も聴いてみたいと思いまして、8月に入りましてチケットを取りました。演目はバッハのミサ曲ロ短調

今回はホールではありません。日本でも有数のキリスト教会の聖堂である、東京カテドラル聖マリア大聖堂です。

以前私はこのホールに聴きに行ったことがありますが、その時にはどこから音が飛んでくるかわからない、まるで音に囲まれているかのような素晴らしい「音場」に酔いしれた経験があります。しかしそれは歌い手にそれだけ緊張感を強いるものでもあります。先日の白川氏のリサイタルのように、音のコントロールが難しいという点があるからです。

その通り、この大聖堂で苦労しているのはアマチュアだけではありません。数々のアーティストが音作りで苦しんでいます。しかし音作りが決まってしまえば素晴らしい演奏になります。その一例が、かつてエントリを上げた朝比奈隆/大フィルのブルックナーです。

今日の一枚:ブルックナー ミサ曲ヘ短調WAB28(原典版
http://yaplog.jp/yk6974/archive/53

このCDではこのエントリを上げた時に述べた「音はさまざまに反響し、上からだけでなく、左右からも音が自分を包み込むように響く」様子がなかなかつかみづらいのですが、この中大合唱団の演奏の「響き」が想像できる一枚ではあります。

私は、この中大の演奏会を聴いた感想を一言で述べよと言われれば、こう答えます。

「もしあなたが、TCF合唱団や東京アカデミー合唱団の演奏を知っているとするならば、それをはるかに超える素晴らしい演奏だった。」

まず、TCF合唱団と比べたのは、私が上記エントリであげた朝比奈/大フィルのブルックナーミサ曲ヘ短調の合唱団がTCF合唱団だったこと、そして、東京アカデミー合唱団と比べたのは、以前他の会場で東京アカデミーの演奏でバッハのロ短調ミサを聴いていたからです。そのどれと比べても、この日の中大混声合唱団のほうが素晴らしかったのです。

まず、冒頭前奏なしで合唱が始まりますがそのアンサンブルと出だしは完璧です!それでいて、発声が軽くかつ力強いのです。そして今回はオケが古楽でしかも実績のある団体をつかったのもよかったです。冒頭からきちんとオケと合唱団がアンサンブルしているのが見て取れ、まったく安心して聴いていられました。

そのキリエで感心したのはそれだけではありません。指揮者白石先生の、大聖堂の残響を大事にされた点です。私は二度目ですし、さらに朝比奈氏のCDでこの大聖堂が日本屈指の素晴らしい残響を誇ることを知っていますが、どうやら聴衆の中には初めてでこの大聖堂が満員時4秒という残響時間を誇ることを知らずに音を立てる方がはじめ散見されました。それを嗜めるかのように、白石先生は残響が完全に消え去るまで、次のアクションに移らないのです。

いや、そもそもバッハのロ短調ミサは、幾つかのパートに分かれていますから、当然その部分部分が終わる時に残響が響き渡りますし、それが終わるまで次の部分へとは移らないように楽譜が書かれています。それを忠実に守ったまでなのですが、教会で聴きますと全くもって残響が終わるまで次に移らないのが自然なのです。それをまるで聴衆に知ってほしいかのごとく、静かになるまで次のアクションを起こさないのも感心しました。

後半のクレドでは、聴衆は残響を味わうため、静かに息をのんで聴いているのが伝わってきました。

グローリアやクレドでは、盛り上がる部分と静かな部分がありますが、どちらもアンサンブルが秀逸!低音部で響かせるところもきちんと発声できていましたし、フォルティシモの部分は軽くかつ力強い発声で大聖堂全体を包み込んでいました。これも素晴らしい点だったと思います。クレドで少し男声がぶら下がり気味になったくらいでしょうか。それもすぐ立て直したのは素晴らしいと思います。クレドでは特にエト・レジュレクシットの前後のコントラストがドラマティックでした。

その後の、サンクトゥスとベネディクトゥスの「オザンナ」はまるで万軍の将来るかのような表現が素晴らしかったです。まず合唱団が力強くオザンナ!と出て、その後一瞬弱くなってからだんだん大きくなる表現はさすがです。それをきちんと表現しきれた合唱団オケ共に素晴らしかったです。

しいて言えば、合唱団オケとも、もう少しきっぱりと音を切ってよかったと思います。ホールではあまりばん!と切らないほうが丁寧で上品ですが、教会では残響も計算に入れなくてはなりません。その点で、音楽が終わる時に残響がそろっていないことも散見されました。バサッと切ってしまってよかったと思います。東京カテドラルではそれでも十分響いてくれます。

ソリストは二人バッハ・コレギウム・ジャパンから参加しているのですからもう何も言うことないでしょう。鈴木美登里女史はやはり肩の力を抜いたほうが素晴らしいと思います。グローリア前半まではのびのびとしていて素晴らしかったですが、合唱団が素晴らしかったせいでしょうか、BCJのバッハ教会カンタータ全曲演奏シリーズ初期のころのような発声になってしまっていました。いっぽう、浦野さんはしっかりとした発声がぶれることなく、合唱団とアンサンブルしていました。

一番ちょっとなあと思ったのはカウンターテナーですが、恐らく先日の白川氏とおなじ状況に陥ったのだと解釈しています。残響が響きすぎ、自分の声をどうコントロールしていいのかが分からずに始めは力任せの歌唱になってしまいました。後半のクレドからはしなやかで力強い演奏になっていましたので、後半の歌唱が本来の実力なのだろうなと思いました。

そう、東京カテドラルはそういった「魔物」が棲むと有名な大聖堂なのです。しかし、かつて私が聴いたウィーンの少年合唱団(!)はそれを難なくこなしていたのですから、これも経験の内だと思います。

私も一度教会の礼拝堂で歌ったことがありますが、やはり響きがホールとは違うのです。東京カテドラルに較べればホールのような残響ですが、それでもホールとは微妙に違うのです。それを念頭に置かないと、失敗することも多々あります。今回は重大な失敗に行く前に修正されていたのはさすがだと思います。

ラテン語の発音も、純正のもので統一されていたよかったと思います。今では正しいラテン語の発音で歌うのは日本だけになってしまいましたから、世界的に見てもその点も高評価です。

余りに素晴らしい演奏で、拍手とともに最後私はブラヴィ―をかけた後スタンディングオベーションで合唱団を讃えました。徹頭徹尾軽い発声から生み出されるしなやかで力強い「情熱と冷静の間」の素晴らしく上昇感のある演奏に、感謝です。かつて上げたこのエントリの演奏にも全く負けていません。

マイ・コレクション:ソリストがいないロ短調ミサ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/724

そう、だからこそ、私は中大混声合唱団はTCF合唱団、あるいは東京アカデミー合唱団を超えたと申し上げたのです。

是非とも、12月の「メサイア」K.572も聴きに行きたいと思います。



聴いたコンサート
中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部第48回定期演奏会
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
ミサ曲ロ短調BWV232
星川美保子(ソプラノ�T)
鈴木美登里(ソプラノ�U)
上川清仁(アルト)
谷口洋介(テノール
浦野智行(バス)
白石卓也指揮
モーツァルト・アカデミー・トウキョウ・チェンバーオーケストラ
中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱
2011年9月28日、東京都文京区、東京カテドラル聖マリア大聖堂



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