かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集2-2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーは、都合により今週はこの1回しかありません。ベートーヴェンヴァイオリンソナタ全集の今回は2-2です。このステレオ版は番号順なので、第3番から第5番「春」までが収録されています。

2-1とは打って変わった演奏です。特に、第4番は激しさをヴァイオリン、ピアノともに伴う演奏で、2-1で触れました「時代が下がるにしたがって表現を変えている」という点が証明された形です。

つまり、作曲していく内にベートーヴェンの音楽性が高まっている、という解釈となっているものです。これは意見を二分する点でしょうが、私はこの解釈はとても素晴らしいと思っています。

楽聖だって、最初から楽聖たり得たわけではありません。というか、ベートーヴェン楽聖と言われるのは、その音楽性もさることながら、陰ながらの努力もあるでしょう。であれば、だんだんすごい演奏になっていくというのも、決してアプローチとして間違ってはいません。

演奏の素晴らしさという点では、たとえば第1番と第2番に関してはメニューイン等のほうが評価できるでしょう。しかし、このステレオ版の二人も、名が通っているアーティストですし、きちんとした音楽教育を受けた人間であるわけです。何かしらの視点があって、このような演奏になったことは間違いありません。

その視点から眺めてみると、第1番と第2番が凡庸な演奏になったのは、ベートーヴェンの初期の作品であり、まだベートーヴェン聴覚障害を負っていない時代である、という視点が明確であるということが分かります(逆に、1の演奏はすでに楽聖たるベートーヴェンという視点であるということも明確になります)。

こういったことが、安価でできる点が図書館の優れた点ですし、神奈川県立図書館はその役割をきちんと果たしていると思います。

アインザッツの強さ、それによるアクセントと現出される豊かな表現。どれをとっても楽聖ベートーヴェンらしい演奏です。つまり、クレーメルアルゲリッチはこのあたりからベートーヴェン楽聖らしい点を発揮していると解釈しているということになります。

この2人、意外と批判されることが多いのですが、こう音楽史の視点から眺めてみると、それは必ずしも正しいとは思えません。セッションの様子をじっくりと聞けば、この二人が音楽史を俯瞰していることが手に取るようにわかります。

たしかに、批判する人たちの理由もわからないわけではありません。第3番は作品12-3ですから、当然第1番と第2番との連作ということになるわけですから。しかし、もしこの三連作にベートーヴェンの「進化」というものが反映されているとしたら・・・・

ヴァイオリンソナタ第1番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

ヴァイオリンソナタ第2番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

ヴァイオリンソナタ第3番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC3%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

この三つのウィキの解説を読んでみますとお分かりのように、第3番だけがある意味異様なのです。それをどうとらえるのかで、第1番と第2番の演奏スタイルはまるで違ってくるはずです。じっくりと推敲して作曲をするベートーヴェンのことです、違いが第3番で出てきてもおかしくないですよね。

だから、クレーメルアルゲリッチの二人は、差をつけたと考えれば、合点がいきます。

このように、演奏というものには単にスコアを読むというだけではなく、作品の「段階」なども反映されているわけですし、またそもそもスコアリーディングというものはそういったものなのであるということを、私はこの演奏で教えられたような気がします。プロとは、こういったことをスコア・リーディングでやっているのだ、と。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ヴァイオリンソナタ第3番変ホ長調作品12-3
ヴァイオリンソナタ第4番イ短調作品23
ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調作品24「春」
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)



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