かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部第九演奏会を聴いての雑感

先日、コア・アプラウスを聴いてきた杉並公会堂にまた行ってきました。12月19日、中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部の第九演奏会です。

何、ながったらしい名前だねえとおっしゃる、ア・ナ・タ、此れには私の愛校心がこもっておりまして・・・・・・

中央大学混声合唱団と短くしてもいいのですが、正式名称が「中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部」というのです。

実は、中央大学には部活動のほかにサークル活動があります。それはどこの大学でもそうだと思いますが、中大の場合、部活動とサークル活動に大学から支援があります。サークル活動のうち大学が支援しているものは学友会といい、部活動に次ぐもの、あるいはサークルなのですが部活動相当とされています。

その学友会に入っているサークルのうち、文化関係のサークルで組織されたのを「文化連盟」と呼び、その中に「音楽研究会」というサークルがある、ということなのです。で、その中で混声合唱をやっている人達を「混声合唱部」と呼び、一方オーケストラをやっている人は「管弦楽部」と呼びます。さらに、吹奏楽部にマンドリングリークラブまである、とても大きなサークルです。

さて、その演奏会ですが、まず驚いたのは舞台に明らかに合唱団の雛壇が作られていることです。最近、アマチュアでも雛壇を作ることはまれになりました。作る場合はまずピアノだけのことが多いので・・・・・しかも、そのつい1週間まえに聴きに行ったコア・アプラウスは後部客席を使っていたからです。ですので、これは舞台上に合唱団が並ぶのか!と驚いたのです。

実は、杉並公会堂は舞台がちょっと下がったところにあります。客席は舞台を見下ろす格好です。つまり、声を上に上げなくてはならないことを意味します。それはきちんとした発声が完璧にできないと、素晴らしい音楽を作り上げることは不可能であるということを意味します。実力のあるコア・アプラウスですら舞台裏座席を使ったのに、中大は舞台に降りてきた、というわけです。

それはそれで指揮者に集中するという点では優れています。しかし、一方では前述しましたが発声が下手であるとすべてが壊れる危険性をはらむのです。

これはチャレンジャーだなと思ったのと同時に、わくわく感を隠すことが出来ませんでした。これは楽しみだぞ、と・・・・・

その期待はすぐメンデルスゾーンで証明してくれました。とてもきれいな発声とアンサンブルが、こちらにきちんと届く感動!もうそれだけで涙が出てきます。

私もいくつか「いいホール」の舞台に立ちました。東京芸術劇場大田区民ホール「アプリコ」、ミューザ川崎、そしてすみだトリフォニーホールの4つですが、特に難しかったのは実は東京芸術劇場でした。それは言うまでもなく、後ろに客席があるために、こちらは声を上へと飛ばさなくてはいけないからです。それはきちんと発声ができないと不可能のなのです。

その上、いいホールほど自分の声は聞こえません。ホールに吸収されるのです。その経験があったからこそ、中大はチャレンジャーだと思ったのです。しかも、一年生が多いとのことで、それでもしっかりとしたアンサンブルを聴かせたことは、まず自分たちの実力を知ってもらうために非常によかったと思います。

メンデルスゾーンの「野に歌う六つの歌 作品41」は三つの曲集のうちの第1集ですが、いずれもリズム感と旋律の美しさが特徴です。合唱団員が哲学や美術を学んできたというだけあって、単にアンサンブルが美しいだけではなく、残響の使い方、感情の入れ方が絶妙です。これを聴けただけでも幸せであるのに・・・・・

第九はもっと素晴らしいのです。合唱団の演奏会なので特に第4楽章を中心に述べますが、まず素晴らしいのは、第4楽章冒頭、バスと男声合唱が終わった直後の「Deine zauber binden wieder」の部分、ソプラノが入っていないんですね(つまり、楽譜通り)。それでいて十二分に声は届いていますし、しかもアンサンブルは完璧!その上で、Ja, wer auch nur eine Seeleの部分でソプラノが入ってきたときの美しさ!たとえようがありません。この時点で私はもう泣き始めていました。

そして、vor Gott!。一緒に歌っていました(もちろん、口パクで)。体が震えるほどの感動とそれゆえとめどなく流れる涙・・・・・美しい!アマチュアの合唱団でこれほど美しいと感じたことはありません。東京アカデミー合唱団のモツレクあるいはメサイア以来です。

ナポレオンマーチである男声合唱も力強いうえに適度に軽く、美しいものでした。テノール・ソロがもう少し力強いほうがよかったように思います。その裏からさらに素晴らしいアンサンブルとアインザッツ男声合唱が出てきたら、最高でしたね。

そして、練習番号M。力強くそして美しいアンサンブル。その上、余計な力を入れない軽い表現。特に、Was die Mode streng getailtの部分はなかなかアマチュア、特に日本の合唱団ですと美しくないのですが、まるで聖歌隊のような軽さの美しさなのです!私もアプリコで宇宿允人指揮で歌った時にそれに挑戦しましたが、容易ではないです。どうしてもここは感動して力が入ってしまうのです。それを中大は熱くなっているのに体は自然と軽く歌っているんですね。よほどしっかりと訓練されているのだろうなと思います。

続くSeid umschlumgen, Millionen!も男声が必要以上に力が入っていなくて美しい!それは女声でも同様で、NHK全国学校音楽コンクールで「混声合唱はだめ」なんて言っている作曲家の言葉を吹き飛ばしてしまうほどです。これだけのことをその該当合唱団がやってから言ってほしいものです。

二重フーガも百点満点!全くアンサンブルが崩れることなく、むしろオケのほうが崩れそうになるくらい(オケは後述しますがちょっといただけない点が散見されました)。もしだめだしをするとすれば、もう少しだけpとfの差をつけることが出来たら、120点満点でしょうね。でも、それはアマチュアでは要求するのは酷かな〜って思いますが、彼らならクリアできるのではないかな?って思います。アンサンブルの点でいえば、すでに東京アカデミー合唱団を優に上回っていると断言できますので。

そして、美しい合唱は最後まで途切れることなく終わるという、中大のオケの演奏とはまた一味違った、素晴らしい演奏を聴くことが出来ました。とても幸せです!関係された方全員に御礼と感謝を申し上げます。

さて、オケですが、全体的にはよかったのですが、管の調子が悪かったのか、なかなか指揮と合わない部分がありましたし、合唱団が出てきてからはその迫力に押されたのか、冷静さを欠く部分もあったのが残念です。プロなのですからそのあたりはむしろ学生をサポートするくらいの気概がほしかったです。しかし、ホルンがふつうひっくり返る部分で全くひっくり返らなかったことはとても評価できます(第3楽章は特に早いパッセージにして解決したのにはなるほどと思いました)し、弦は少ない人数のなかでとてもすばらしいアンアンブルとアインアッツを聞かせてくれまして、さすがプロ!と思いました。特に第2楽章最後、残響をうまく使って終わる部分などは、いうことなしです。

指揮者の白石先生はとても中大を愛しておられると思いました(駅伝もご家族で応援されているとのこと!)。その上合唱団の原典を大事にするという精神に基づき、新ベーレンライター原典版を使用する点が憎いですね。しかしその要求にこたえた合唱団に、拍手は最後まで鳴りやむことはりませんでした。惜しむらくはまたブラヴォーが早かったこと。もう少しだけ待ってほしかった・・・・・まあ、きもちはとてもわかるんですけどね。私もまた「ブラヴィ!」を掛けさせていただきましたから。いやあ、いてもたってもいられないとはこのことです。

来年はメサイアをやるとのことですが、時間が許す限り、聴きに行きたいと思います。こんなドキドキわくわく感と感動を与えてくれる合唱団は、そうあるものではありません。



聴いてきた演奏会
中央大学創立125周年記念・中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱部 第九演奏会
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
野に歌う六つの歌 作品41
ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
友利あつ子(ソプラノ)
西本会里(アルト)
大久保憲(テノール
細岡雅哉(バリトン
白石卓也指揮
アレクテ室内管弦楽団
中央大学学友会文化連盟音楽研究会混声合唱

2010年12月19日、東京、杉並公会堂