かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:パイジェッロ ピアノ協奏曲第1番・第3番・第5番

今月のお買いもの、今回は古典派の隠れた名作曲家、パイジェッロのピアノ協奏曲集です。ナクソスから出ているもので、ニコロージのピアノ、ピオヴァーノ指揮カンパニア室内管弦楽団です。

このパイジェッロという作曲家もあまり知られていない作曲家ですし、読者の方も知らない方のほうが多いのではと思います。私もこの作曲家に触れたのは実はmixiのコミュ「同時鑑賞会」と、県立図書館で借りてきたモーツァルト全集で、です。そこにフルート協奏曲が収録されており、それを聴いたのがきっかけです。そして、山野楽器でブリリアント・クラシックスで見つけた時には、買うかどうか最後まで迷った挙句、予算の関係で買うことができなかった作曲家なのです。

ところが、その山野で見つけたブリリアント・クラシックスのものはどうやらなかなか入荷しないようで、ここ2か月見ていません。そこで、注文する前にとりあえずあるものを買ってみようと思って、買い求めたのがこのナクソスなのです。

こうナクソスも買ってみて聴いてみますと、パイジェッロという作曲家がいかに優れた作曲家なのかがよくわかります。確かに、前回取り上げたロゼッティもいいですが、やはり音楽先進地域であるイタリアの作曲家は抜きんでています。

パイジェッロに関しては、以下のウィキペディアが一番手っ取り早いでしょう。余裕があれば、事典等で調べてみるのもいいでしょう。

ジョヴァンニ・パイジエッロ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%BB%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%AD

もともとオペラ作曲家としてつとに有名であり、ウィキペディアを見るとオペラしか作曲していないようにとられると思いますが、協奏曲も数多く作曲しており、その中にピアノ協奏曲も含まれます。ナクソスには第1番から第5番までが収録されており、そのうちこのアルバムには奇数番号が収録されています。

これほど古典美あふれるうえに美しい旋律を持つ協奏曲もそうそうありません。ピアノがまるで宝石のようです。単に美しいだけではなく、光輝くものになっています。さすがにこれはモーツァルトですら実現できませんでした(もっとも、それは彼の美意識ではないですけどね)。

彼はモーツァルトに刺激されこれらの協奏曲を書いたとされますが、素晴らしいのはそれでいて自分のスタイルである、ロココ調を崩していないという点です。それはおそらく後援者である貴族に向けて書かれているということもあるのでしょうが、それでも古臭い自分のスタイルを崩さずに、それをさらに洗練させている点はもっと評価されていいのではと思います。

ハイドンですら、モーツァルトを意識してしまって作曲にはかなり苦労したようです。しかし、このパイジェッロの作品にはそんな点がみじんも感じられないのです。全くモーツァルトとは別の世界を完全に作り上げています。個性が無いようで実はとても個性的な作品が並んでいます。

古典美の最たるものは、第1楽章が頭でっかちな点です。つまり、第1楽章に重点を置く古典派の作曲技法を愚直に守っている点です。それは楽譜を見ても明らかですし、また楽譜など見なくてもタイムですぐわかります。モーツァルトですら晩年はそれが崩れ気味になります。それはそれで時代の転換点にいたからですが、しかしパイジェッロはモーツァルトよりも長生きして、ベートーヴェンの時代まで生きるのです。それでも、古典美あふれる作品を残しています。それでいて、第3番では第1楽章と第2楽章がつながるなど、あっと驚く仕掛けもちゃんと作ってあります。

彼の作品が埋もれてしまったのは、恐らくナポレオン側についてしまったからなのだと思います。そのため、ナポレオンが没落すると彼の時代は終わり、彼自身も時代に合わせられなくなってゆきます。それは仕方がなかったのかなと思います。これだけの古典美あふれる作品を残しているということは、それだけ守旧派だったということになるわけですから・・・・・・でも、そんな人がナポレオンについたということは、私にとっては興味深い点ですが。まあ、嫉妬深い性格も災いしたのでしょう。

ともあれ、もっともっと聴きたい作曲家です。少しずつ、集めていきたいと思っています。できれば、ブリリアント・クラシックスのものもほしいですね。そちらには、このパイジェッロだけでなく、同時代のほかの作曲家も並んでいるからなのです。

さて、演奏はと言いますと、力の入れぐあいが素晴らしく、軽めの演奏でありながら、音がしっかりとしていまして、生真面目な様子がよく伝わってきます。簡便な曲ほど高い演奏技術が必要ですが、まさしくこの演奏はその典型のようなものです。演奏者の技術水準の高さを素人ながらも認識させられます。緩徐楽章での音のつながりは、ともすればつまらなくなってしまいそうなこの曲をしゃんとさせています。当時の演奏家に求められるものが意外と高いものであったということをうかがわせる、とてもいい見本ではないかと思います。



聴いているCD
ジョバンニ・パイジェッロ作曲
ピアノ協奏曲第1番ハ長調
ピアノ協奏曲第3番イ長調
ピアノ協奏曲第5番ニ長調
フランチェスコ・ニコロージ(ピアノ)
ルイージ・ピオヴァーノ指揮
カンパニア室内管弦楽団
(Naxos 8.572065)