かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会混声合唱部 ロ短調ミサを聴いて

コンサート雑感、今回は平成29年6月24日に聴いてきました、中央大学音楽研究会混声合唱部の「ロ短調ミサ」の演奏会について取り上げます。

中大の混声合唱部に関しては、このブログでもずっと取り上げてきていますが、一度東京カテドラルにおける演奏会を取り上げています。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会混声合唱部第48回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/771

この時は定期演奏会ですから、団員、つまり学生だけだったのですが、今回はOB・OGも入ってということなのでした。場所は今度は都内から都下へと変わり、多摩センターにあるパルテノン多摩大ホール。

中大混声にとって、パルテノン多摩はまあ地元のようなものです。同じ音楽研究会の部門で使っていることも多く、中大オケも定期演奏会で使っているホールです。

パルテノン多摩大ホールは、それほど響くホールではないんですが、それでも多目的ホールの割にはよく響く方ではないかと思います。当然ですが、東京カテドラルの時に比べれば、歌うのはそれほど気を使わずにアンサンブルできる分、楽だとは言えますが、学生は東京カテドラルの時のメンバーは、当然ですが一人もいないわけです。6年前ですからねえ。

その代わり、OBとOGがいる、というわけです。恐らく、その6年前を経験している人もいたのではないかと思います。兎に角、発声は毎度軽くて力強く素晴らしいんですが、特にすばらしいのがソプラノなんです!

ソプラノは学生ではどうしても高音部がたまに「ぶら下がる」ことがあるのですが、今回殆どそれに気づくことはありませんでした。むしろ「お、いつもよりもうまいぞこれ!」って受け取りました。

なぜそうなったのか?勿論、歌った人たちに訊かなければ本当のことはわかりませんが、私の経験に照らし合わせれば、経験者が入ったことで、学生が安心した、ということです。

社会人になっているOBやOGは、恐らく今でも合唱をやっており、社会人団体に入っていることでしょう。その団体でも様々な作品を経験して、さらに研鑽を積んでいるはずです。そのような力のある人が合唱団に入ったら、いい効果が出るのが普通なのです。

マチュア合唱団では、エキストラ、つまり助っ人を入れるわけですが、OBやOGはいわばその「トラ」の役割を果たしているわけです。しかも今回はトラが入っていることがプログラムにも書かれてるという!

伸びやかな高音部に、力強い男声。音が動き回る部分で、所謂「H」音が入らない、なだらかな発声。バッハやモーツァルトを歌う時に一番苦労する部分が完璧!そりゃあ、素晴らしい演奏になって当たり前というものです。

全体的にテンポもいいです。白石先生亡きあと、今回が中大混声音楽監督デビューとなった飯坂先生。白石先生が残されたアレクテ室内との息も抜群!金管の使い方が本当にうまいなあと思いました。例えば、グローリアの出だしは金管が特徴的ですが、ピリオド楽器の場合、比較的短く切りながら演奏させるのですが、勿論それでも素晴らしい効果を上げます。今回はアレクテがモダンということもあってか、金管をかなり思い切り吹かせていたのが印象的で、素晴らしかったです。

それは、合唱団の歌い方とのバランスでもありました。6年前の白石先生が指揮された演奏では、東京カテドラル聖マリア大聖堂というロケーションになれていなかったせいか、いつもの多目的ホールあるいはコンサートホールで演奏するように音を伸ばしていたのですが、今回はおそらく通常よりも少し長めに音を伸ばしていたのではないかと思います。オケも合唱団もそれは同様で、特に中大混声の学生だけの場合は音符を短く切る傾向があったにも関わらず、飯坂先生はしっかりと伸ばさせているんですね。だから金管が思いっきり吹かしてもまったく問題ないばかりか、それがとても力強く素晴らしい演奏へと結実したのでした。

クレドは、最初ゆったりとしたテンポで、ここはやはりアマチュアらしくきたなあと思った刹那、それがとんでもない思い違いであることを思い知られたのです・・・・・

クレドは冒頭、合唱団男声が長音でクレドと歌いますが、オケは動き回る感じです。プロでは比較的速めに演奏するのでCDでは気づかないのですが、この部分は飯坂先生はオケには珍しく音を短めに切って演奏させているんですね。その上でゆったり目のテンポで演奏してみると、合唱団はまるでオルガンのようなというか、オルガンと共にまるで通奏低音なのです!

それに気が付いた時、あ!と思いました。ミサ曲ロ短調とは、バッハ最晩年に成立した作品であると言うことを。

ミサ曲 ロ短調
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B5%E6%9B%B2_%E3%83%AD%E7%9F%AD%E8%AA%BF

当時の人たちがこの部分を聴いた時、腰を抜かしたことでしょう。バッハはバロック時代の集大成の作曲家だと思っていた私も、その認識を改める必要があるなあと思いました。いや、集大成の作曲家であることは間違いありません。その上でベートーヴェンが「田園」でやった禁則もぐり込みのような、おきて破りもする進歩的な作曲家だったのだ、と。そう考えるべきなのだ、と。

まさかそれを、母校の合唱団の演奏会で知ることになろうとは、夢にも思いませんでした。世界のどこかのプロがやっているはずですが、まさか日本で、しかも学生合唱団とそのOB・OGの演奏で、です。

成立した1749年という年代は、当然ですがヨハン・セバスティアンの息子達も生きている時代であり、むしろ時代は息子達の時代、多感様式へと移っていたのです。とは言え、ニカイア信条は作曲が1724年かもと言われており、全体の中でも作曲が早い部類に入ります。1724年と言えば、トーマス・カントルとして数多くのカンタータを作曲していた時期です。この時期のバッハは実験的なこともしているのも確かでありますが、ここまで顕著だったのかと、わたし自身も自らを省みるいい機会になりました。本当に感謝ですね。

残念だったのは、アルト。プロですから決して下手なわけではないんですが、第1部ではなかなかオケとアンサンブルしてないなあと感じたのです。第2部にはいりデュエットになって良くなりました。ということは、多くの楽器とアンサンブルするのになれていないのかなあと思いました。それは特段不思議なことではなく、合唱団員として慣れているからこそ、下記のエントリではソリストなしでソロやデュエットの部分をすべて合唱団員が務めて、素晴らしい演奏となっているわけなのですから。

マイ・コレクション:ソリストがいないロ短調ミサ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/724

BCJも素晴らしい演奏をしていますが、このバルタザール=ノイマン合唱団も素晴らしい!ソリストの役割を果たせる団員がいるのに、合唱団のアンサンブルも素晴らしいんですね。で、今回の演奏は第1部ではオケに負けまい!と頑張りすぎ、バランスが崩れていたのです。ある意味、コア・アプラウスでの調子が悪い稲見先生に似ています。もう少し肩の力が抜けるといいのになあと思ったのですが、もしかすると合唱団が素晴らしすぎたせいもあるかもしれません。じつはこの傾向はテノールの大島氏にも今回出ており、合唱団の演奏がプロにも影響を及ぼしているという証拠です。そういえば、6年前の東京カテドラルでの演奏でも、あのBCJの鈴木美登里女史に同じ状況が発生していました。

バスの大森先生や、ソプラノはすばらしい!特に大森先生は中大生を指導されている中で、しっかり常に背中を見せ続けていらっしゃるのは、誰でもできることではありません。今回参加された中大生の皆さん、本当に幸せなんですよ、これ・・・・・

その上で、学生に注文を付けるとすれば、もっと表情豊かに歌いましょう!もし、録画されていたとすれば、自分たちとOB・OGと表情を比べてみて下さい。OBやOGは本当に表情豊かに、まるで歌うのが本当にうれしいという顔をされていました。それは演奏に乗り移るんです。今、歌謡曲の歌番組が少ないのであまり注目しないかもしれませんが、ある年代から上の人たちの歌番組を録画したビデオが実家などにあったら見せてもらってみて下さい。演歌やアイドルたちの、何と表情豊かなことか!今なら、AKBなどの歌うのを見てみて下さい。意外と表情豊かであることに気づくと思います。そしてその豊かな表情は演奏に出ます。堅ければきつかったり、厳しい歌になりますし、笑顔なら楽しい演奏になっているはずです。それはクラシックでも一緒なんです。

youtubeで宗教曲や第九の演奏を片っ端から見てみて下さい。AKBや80年代アイドルと、意外と同じような表情をしていることに気が付くと思います。そしてそれは、OBOGたちと似ていることも。今度は自分たちが試してみて下さい。きっとパフォーマンスは向上するはずです!今回の演奏は力強くしなやかで、音も伸びやかで天空から音が振ってくるようでしたが、それが学生だけの力で実現できるはずです。先輩たちが、第九でそれをやってのけていますから、きっとできますよ!

次のメサイアは、私の仕事の関係で聴きに行けませんが、曜日が合えば、来年の演奏は聴きに行きたいなあと思います。今年1年生や2年生だった学生が、1年たってどれだけパフォーマンスが向上しているのか、楽しみに待っています!




聴いてきたコンサート
中央大学音楽研究会混声合唱団 ロ短調ミサ演奏会
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
ミサ曲ロ短調BWV232
岩本麻里(ソプラノ1)
石田亜希子(ソプラノ2)
上川清仁(アルト)
大島博(テノール
大森いちえい(バス)
渡邊温子(オルガン)
飯坂純指揮
アレクテ室内管弦楽団
中央大学音楽研究会混声合唱

平成29年6月24日、東京多摩、パルテノン多摩大ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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