かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ヴィヴァルディ チェロ協奏曲全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ヴィヴァルディのチェロ協奏曲全集を取り上げていますが、今回はその第2集を取り上げます。

決して番号順ではないこの元音源ナクソスの全集は、ナクソスの全集によくある傾向ですが、全体を俯瞰するという志向で貫かれています。そこから見えてくるものは、実に「四季」よりも豊かなヴィヴァルディの創作の世界です。

1曲目のRV408がいきなりそうなのですが、ヴィヴァルディと言えばどこか明るいというイメージが作りあげられてしまっている部分ってあるかと思いますが、実際「四季」を聴けばそんなことはないのが分かるのと同じように、このチェロ協奏曲RV408でも、特に第3楽章が転調して陰影がついており、次世代の音楽、つなり多感様式の萌芽のような部分もあります。

特にこの第2集はそんな作品が集められているようで、2曲目の「2つのチェロのための協奏曲ト短調RV.531」も同様の作品です。このように見て来ると、ヴィヴァルディの作品には一つの傾向があって、特段「四季」だけがどこか変わっているわけではないことが分かるかと思います。

「四季」が個性的で独創的なのは、各楽章にソネットが付いており、標題音楽になっていると言う点です。それ以外はこのチェロ協奏曲たちと様式的に何ら変わらないのです。

もっと言えば、「四季」にせよ、チェロ協奏曲にせよ、急〜緩〜急の3楽章形式を取っているということです。これは古典派において確定する協奏曲の楽章構成ですが、このチェロ協奏曲も同様に先進性を持っている作品であると言えます。それはヴィヴァルディの生きた時代を考えれば、特段珍しいことではありません。ヴィヴァルディだけではなく、バッハやヘンデル、グラウプナーと言ったドイツ・バロックの同時期、或は少し前の作曲家は皆そうなのです。

AIがバッハのような音楽を作るようになる・・・・・このヴィヴァルディの作品群を聴く限りにおいては、それは外れるだろうと思います。確かに似た作品は作れるようになるでしょう。しかし、人間が機械よりも優れているのは、「解釈する力」です。これはなかなかAIが身に着けることは難しいでしょう。

一見、機械的に見えるバロック音楽は、さまざまな記号が表現の源としてビルト・インされており、その法則を知ったうえで、何を使うのかは作曲者にゆだねられています。どれだけ学習するか・・・・・それは言い換えれば、何を学び取るか、です。それをAIが誤れば、当然違った結果が出ることでしょう。

演奏者、指揮者は基本第1集と同じ顔触れで、それに二台のチェロのためにもう一人が採用されています。一見すれば機械的なこの演奏も、実に生き生きとしています。なぜなのでしょう?その「一見すれば機械的」という部分に、しっかりとリズムが刻まれているからです。それが全体に生命力を与え、単なる無機質な音の羅列は生命力が吹きこまれ、私たちにじんわりと感動を、安らぎを、癒しを、与えてくれるわけです。

その上で、機械的に演奏することを避けてもいます。微妙に音の切り方が異なっていたりする音があったりすることで、規則的ではあるが、「f分の揺らぎ」がある、人間が作り出したものが人間が作り出したものらしく提示されているのです。この演奏こそ、AIは超えられないであろうと思います。ましてや、バッハのヨハネやマタイ、ロ短調ミサの数々の名演を超えられるとは、到底思えないのです。

本当にこの21世紀の喫緊で超えるとすれば、それは見事にスタンリー・キューブリックが予言した世界であって、文明が滅んでもおかしくないでしょう。「ターミネーター」のように。




聴いている音源
アントニオ・ヴィヴァルディ作曲
チェロ協奏曲変ホ長調RV.408
2つのチェロのための協奏曲ト短調RV.531
チェロ協奏曲ト長調RV.413
チェロ協奏曲ハ短調RV.401
チェロ協奏曲イ短調RV.422
チェロ協奏曲ハ長調RV.400
ラファエル・ウォールフィッシュ(チェロ)
キース・ハーヴィー(チェロ、RV.531)
ニコラス・クレーマー指揮
シティ・オブ・ロンドンシンフォニア

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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