かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会管弦楽部 第77回定期演奏会を聴いて

久しぶりのコンサート雑感です。今回は平成29年5月27日に聴きに行きました、中央大学音楽研究会管弦楽部 第77回定期演奏会についてです。

中大オケ、つまり中央大学管弦楽団については、このブログでも取り上げてきていますが、本当によく頑張っているなあって思います。今回も演奏は素晴らしいものでした。

今回のホールは、オリンパスホール八王子。正式名称は、八王子市文化会館。ネーミングライツなんですね。

文化会館って言えば、通常は多目的ホールを想像してしまいますが、このオリンパスホール八王子は、本格的なクラシック音楽用の、残響が素晴らしいホールなのです。

で、じつはこのホールで行われた演奏会を以前ご紹介してます。同じ中央大学音楽研究会の、混声合唱部がベートーヴェンの第九を演奏した時のがそれです。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会混声合唱部第九演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1110

これは、亡き白石先生が中大混声で振った最後の第九だったわけですが、この時に私はこう書いています。

「ここまで聴いてきたなかで感じるのは、全体的にアンサンブルの特徴が学年を超えて継承されているという点です。それはつまるところ、合唱団としての特色ということになります。軽めの発声が特にそうだと言えるかと思います。

え、そんなこと当り前では?と思われるかもしれませんが、4年で卒業する学生合唱団で、それを特色づけていくことはアマチュア合唱団にいた経験を持つ私としては、とても大変なことだと分かります。入ってくる学生の全体的な特色が、合唱団の色付けを買えてしまうことはよくあるからです。

例えば、川崎市の合唱まつりに参加していた頃、多摩高校の合唱部の演奏を聴く機会に何度か恵まれましたが、先生が変わればアンサンブルも変化しますし、学年が違うとまた変わってくることもあったからです。

しかし、中大はここ何年か、それがありません。むしろ軽めの発声にこだわって、それを継承してきています。そのために必要なのはしっかりとした指導と、OBOGとの交流です。それなしには継承はなかなか難しいと思います。

社会人アマチュア合唱団では、それは比較的簡単なのです。みな社会人経験を持っているため、なぜその特色があるかの理解も早いですし、また入れ替わることも少ないからです。それと同じことを、入れ替わりが激しい学生合唱団でやっているというのは、奇跡だと思います。」

これが、オケでもだったのです。

プログラムは、以下の通りです。

�@ワーグナー ニュルンベルクのマイスタージンガー 第1幕への前奏曲
�A増田宏三 ニ調の交響曲中央大学オーケストラと小松一彦氏に捧ぐ〜(1976)
�Bベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調作品67「運命」

残念ながら、私はワーグナーは到着時間の関係で聴けませんでした。これはとても残念でした。なぜなら、到着した時に流れていたのは、2プロの「ニ調の交響曲」で、20世紀音楽であるにも拘らず、素晴らしいアンサンブルだったからです。

増田氏のこの交響曲は、中大オケとその当時の音楽監督であった、小松一彦氏からの委嘱によるものです。小松氏は現代音楽に造詣が深く、当時中大オケに現代音楽を演奏させたいと委嘱されたようです。しかし楽譜はぼろぼろ・・・・・でも、コアな部分が無事だったため、今回再演に至ったそうです。

で、じつは当日のオケの編成は対向配置。当然ですが、増田氏が作曲された時代とは編成が異なるんです。それでも、先輩たちのために作曲されたものだという意識が強いのか、素晴らしいアンサンブルなんです!後半でホールに入った時、本当に泣きそうになりました。

この編成で、18世紀シフトで、20世紀の作品を、ほぼ完ぺきなアンサンブルで演奏したのかと思うと、もうブラヴォウ!しかありません。リスペクトという側面がいかに演奏において大切なのかを実感します。

後半はベートーヴェンの「運命」。聴き慣れた名曲ですが、当然興味としては対向配置でどれだけ第1楽章最初が合うのか、という点に集約されます。それがうまくいけば、もう演奏としては80%完璧だと言えるからです。

演奏と言うものは、常に失敗するリスクを抱えています。それをワクワクしながら聴くのがライヴです。プロオケを聞き慣れますと失敗しないのが当たり前だと思いがちですが、人間が演奏するものです。失敗はつきものです(カラヤン指揮ベルリン・フィルの第九で、第3楽章でホルンがひっくり返っているのが映像で残っているのがその証拠です)。

ところがです、今回、完璧だったんです・・・・・・ずれが全くない!アルテ・ペルフェクタ!

しかも、力強く、しなやかで、アグレッシヴ。テンポはやや速め。その中でフェルマータもしっかり伸びているのには感心しました。できれば、第1楽章はもう少しだけフェルマータを伸ばしてもいいかな〜って思いましたが、楽譜上は間違っておりません。佐藤先生のいつもながらも素晴らしい譜読みと、それに応えるオケの力は素晴らしいなあって思いました。

この点こそ、混声合唱と一緒で受け継がれているなあって思う点なのです。先輩たちの失敗が、そしてそのための対策が、しっかりと次世代へ受け継がれている・・・・・すばらしいなって思います。

しかもまた素晴らしいのは、アマオケだとどうしてもppからffまでの差が小さくなってしまいがちなんですが、今回の中大オケの演奏はそれがまるでプロ!いやあ、感動します。、これ。当たり前のようでなかなかできないんですよ。もう少し頑張りましょうどころか、本当によく頑張ったね!って思います。

第2楽章も、そして第3楽章も素晴らしい。途中、金管が少しだけおかしくなりましたが、それをすぐ修正するのも素晴らしい!全体の中では、問題になりませんので、失敗してしまったと学生が思っているのなら、それは気にする必要はありません。どうしても気になるんだったら、また練習すればいいし、名曲ですから、人生においてアマチュア・オーケストラの一員であり続けければどこかで必ず演奏する機会は訪れます。その時にうまくいけばいいんです。大丈夫です。

そして第4楽章。いやあ、この勝利の音楽が、今回私にとっては喜びの音楽でした。普通なら泣いてしまうこの部分で、私の体を喜びが頭の先から足のつま先へと突き抜けて行ったのです。なんと完璧な演奏!テンポ、そしてppからff、それを表現する中で全くアンサンブルが崩れない点、何から何まで、まるでウィーン・フィルを聴いているかのようでした。

目の目にいるのは、学生オケです・・・・・けっしてウィーン・フィルでもないし、そもそもプロオケでもない。なのに、この完璧な演奏は何でしょう!私は、先日ブログでこう述べました。

「話しは代わりますが、中大オケは今回メインが「運命」ですが、この点は重要だと思います。佐藤先生がどのような解釈をして、どのように振られるかはわかりませんが、ベートーヴェンが心の中で抱えていたものがどんなものだったのか、そしてそれを健康体である自分たちが演奏するには、どのような部分に共感すればいいのか、考えたうえで演奏されるといいと思います。普通の人では経験し得ないことをベートーヴェンは経験しており、どん底を味わったベートーヴェンが立ち上がり、這い上がるために必死になって書いた作品を、自分たちはどう扱うのか・・・・・ここに演奏のポイントがあるように思います。」

今月のお買いもの:飯守泰次郎 ベートーヴェン交響曲全集3
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1565

東京シティ・フィルが困難だったものを、アマチュアの学生オケである中大オケが、実に爽快に実現していることに、卒業生として誇りに思います。そして、第4楽章で演奏自体は宮前フィルも超えたのです。

以前、宮前フィルの第33回定期演奏会を聴いて、私はこのように書いています。

「さて、休憩の後メインはベートーヴェン交響曲第5番です。その第1楽章、18世紀シフトであることが裏目に出てしまいます。テンポ感を団員がつかみきっていないため、出だしが微妙に合わないのです。しかし、それを演奏しながら修正していくのはさすがで、はやりなでしこジャパン以上の修正能力です。そしてその点こそ、何度も言いますがこのオケが上手くなったと思う点なのです。

そして、最終楽章。第3楽章から切れ目なく続く「勝利の音楽」の開始は、今まで私がアマチュアオケでは聴いたことがないような、いや、プロオケでも聴いたことがない、完璧な出だしとアンサンブルでファンファーレが鳴ったのです!

思わず小さな声で「よっしゃー!」とつぶやいていました。こういう第4楽章が聴きたかった!

もう、涙は止まりません。とめどなく流れる涙。誰もいなかったら、恐らく男泣きに泣いていることでしょう。「日本精神」に基づき、「義を見てせざるは勇なきなり」を信じて、このオケを応援してきてよかった・・・・・そう思った瞬間でした。

特にすばらしかったのは、主題展開部で盛り上がっていく部分です。実はスコアを見ますと、そこは音がだんだん上がっていきます。そこできちんと、上がるにしたがって強くしている点がよかったです。この曲は古典派の交響曲の集大成と言われます。であれば、当然高い音は強く、低い音は弱く、リフレインは弱くという基本に忠実で無ければなりません。それが完ぺきでした。音がもう少し痩せていなければ、完璧だったでしょう。アマチュアのレヴェルでは名演といっていい演奏だったと思います。」

コンサート雑感:宮前フィルハーモニー交響楽団第33回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/756

この時の宮前フィルも、じつは対向配置だったのですね。そして宮前フィルは全体としてはとてもよかったけれど、最初はやはり合わなかったんです。この時点で宮前フィルを超えたと言っても過言じゃないんですが、第4楽章まで完璧だと、もう学生オケが社会人アマチュアを超えたと言っていいでしょう。資金面で練習時間も減らされている中で、よくぞここまでって思います。学業もあって、多分今のご時世だとアルバイトもやっているでしょう。その中で、です・・・・・

どうしても、主題再現部では、落涙を禁じ得ませんでした。中大オケもだんだん盛り上がっていくその先に、ふっとエアポケットのようにある独奏。そしてその後の主題再現部。美しいまま最後のコーダへ突っ込んでいくアグレッシヴさ。これを聴いてしまうと、他のプロオケが不用意に聴けないので困ります・・・・・

それだけ、すばらしい演奏でした。もう、これからはCD選びに苦労します〜嬉しい悲鳴ですが。

最後のアンコール、ブラームスのノリノリ!指揮者との信頼関係が素晴らしいのだろうなって思います。楽しそうに弾いている先の完璧さ。これこそ、クラシック音楽演奏のあるべき姿だと思います。

こんな演奏を聴かせていただき、本当にありがとうございます。次回も行きたいところですが、年末は予定が苦しいと思います。来年の春、時間が取れれば行きたいなあって思います。その時、オケがまたどれだけ進化しているのか、楽しみです。




聴いてきたコンサート
中央大学音楽研究会管弦楽部 第77回定期演奏会
リヒャルト・ワーグナー作曲
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
増田宏三作曲
ニ調の交響曲中央大学オーケストラと小松一彦氏に捧ぐ〜(1976)
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
アンコール
ヨハネス・ブラームス作曲
ハンガリー舞曲第5番
佐藤寿一指揮
中央大学音楽研究会管弦楽

平成29年5月27日、東京八王子、オリンパスホール八王子

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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