かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会管弦楽団第72回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、2週にわたって中央大学を取り上げる後半となります。今回は平成26年12月22日に聴きに行きました、中央大学音楽研究会管弦楽団の第72回定期演奏会を取り上げます。

中大オケも、実は体調不良になる前にラフマニノフを聴きに行く予定を立てていましたが、かなわなかったのです・・・・・それがようやくかないました。行くと言っておきながら行けなかった非礼をお詫びするという事もあって、今回足をはこんだのでした。ホールは横浜みなとみらいホール

このホールも実は同様の事情で足をはこぶことが出来なかったホールなのです。それは、宮前フィルハーモニー交響楽団の「オルガン付」です。こちらはまだ足をはこべていないのが残念ですが、いつか必ず、足をはこびたいと思います。

さて、その念願のコンサート、かんのいい方ならば、前日に中大混声を聴きに行っていることに気が付かれるでしょう。そうなんです、2日続けてなんです!年末の忙しい時期に二日連続というのは、社会人である私にとっては様々難しい点があったのですが、演目がわたしの魂を揺さぶる曲であり、なおかつ母校であれば、万難を排して行こうと思い、休暇を取ったのでした。その曲とはまさに、ベートーヴェン交響曲第9番

合唱団がつく作品であるだけに、当然ですが中大混声とも、そして同月に聴きましたコア・アプラウスとも比較してしまう運命にあります。さらに今年は、ほぼ1か月前に平塚第九を聴いているわけで、それとの比較の対象にもなってしまいます。特に、ひらつか第九のオケが、駅伝ではライバルである神奈川大学のオケであるならば・・・・・

2プロ制で、前半はチャイコフスキーの大序曲「1812年」、そして後半が第九というラインナップ。第九とのカップリングで、「1812年」を持ってくるというのは、とても珍しいことです。ともすれば、対極にある作品だからです。

1812年 (序曲)
http://ja.wikipedia.org/wiki/1812%E5%B9%B4_%28%E5%BA%8F%E6%9B%B2%29

第九がとても霊的な作品ですので、「1812年」は戦争をテーマにしているだけに、対極となってもおかしくない運命にあります。しかし、1812年はドラマティックな作品です。序曲というものがチャイコフスキーの時代オペラのテーマ音楽のようなもので、旋律をいくつか組み合わせることが前提となっているため、当然なのですが、1812年の場合、それは仏露戦争そのものです。ロシア国民の記憶をオペラ本編として、チャイコフスキーは作曲をしたこととなるでしょう。そのドラマティックな点を見事に演奏していました。

1812年も最後へとクライマックスしていく作品ですが、途中のナポレオン侵攻を描く部分ではいきなりヒートアップするので、切り替えが大変な作品でもあります。ロシア軍を描いた部分は実にゆったりと、堂々としているので、激しさ一辺倒ではまさしくつまらないものとなってしまいます。それを見事に避けた、素晴らしい演奏でした。

1812年では、大砲がでてくるのですが、今回はそれを大太鼓で表現し、さらに金管はオルガン下の客席に坐るということをやっており、それは金管がよく通るという効果を上げていたとおもいます。これは実は中大混声もアレクテ室内がやっており、前半で行っています(後半第3部で大活躍するときには舞台へ降りていました)。オケも同様に上に上がった、という事になります。こういう演奏スタイルは、他のアマオケや、プロオケも非常に参考にできることではないでしょうか。

そして、第九です。今回も素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれたとおもいます。前回はホールがミューザだったわけですが・・・・・

音楽雑記帳:実力をつけた中大オケ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/477

ミューザというホールは、客席がかなり上まであり、宮前フィルがかわさき市民第九でおこなったように、ともすればマッチしないという事態も第1楽章ではあるはずなのですが、それがなかっただけに、今回もその期待値は高かったのですが、今回もそれは問題ありませんでした。出だしが少しだけ合わない部分がありましたが、まあ、良くあることです、特に木管ですし。でも、さらに言えば、指揮をよく見て、自分の息を吐くスピードとを勘案して、なるべく合わすようにはする必要があるでしょう。他では問題なくできていますから・・・・・

横浜みなとみらいホールは、実はそれほど客席が高い位置にある訳ではありません。どちらかと言えば、多目的ホールクラスの高さです。

http://www.yaf.or.jp/mmh/about/main.php

しいて言えば、横に突き出してる客席が高い位置にあると言えますが、大部分は比較的低い位置にあります。それは中大混声の杉並公会堂とは異なり、ひらつか第九の平塚文化センターに近いと言えます。まさしく、オケとしては神大と同じ条件であったと言えます。ですが、第1楽章、とても激しい演奏が上から降りてくるのです。これにはびっくりです。

今回、私は比較的オケに近い席に座っていました。1階席という、もし全席自由席であったならばまず選択しない席なのですが、それでも、音が上から降ってきたのには驚きました。勿論、みなとみらいホールというホールは音の響きがそうなるホールである訳ですが、それを自家薬篭中のものとしてオケがまるで自分たちのホームであるかのように演奏しているのには、驚きました。恐らく、ミューザもそうだったのだろうなあと思います。

でも、それは4年前です。その時1年生だった学生も卒業しています。にも関わらず、「いい響きのホール」を完全に自分たちのものとして演奏しているのは、素晴らしいと思います。OBやOGが、きちんとフォローしているのでしょう。とてもスピリチュアルだと思います。それは第九という作品の演奏が進行していくにつれて、顕著であったと思います。

第2楽章スケルツォは、ともすれば音がごちゃごちゃしてしまうのですが、それが完璧!神大はここは少しごちゃごちゃしてしまっていました。それはアマチュアであれば仕方ない部分でもありますが、それが多少音が痩せている部分があるにせよ、完璧であったのは奇跡としか言いようがありません。中大混声も、そしてオケも、共通して各パートの音がはっきりと聴こえるというのは本当に素晴らしかったと思います。簡単にできるようで、それがいかに難しいかは、元合唱団員である私はよく知っていますから。

第3楽章。ゆったりとした音楽であるからこそのむずかしさがある楽章ですが、これも完璧!ここまで突っ込みどころがありませんが、しいて言えばこの第3楽章では、ホルンがひっくり返りそうになっていました。けれども、ここをしのいだのは素晴らしい!合唱団員としては、ここをしのいでくれると「よし!自分たちも頑張るぞ!」という気分にさせてくれます。今回は金管が全体的にその傾向にあったように思います。

その傾向が確実にいい方向に働いていたと感じたのが、第4楽章でした。ティンパニは第1楽章でも硬い、所謂私が表現するところの「ぶっ叩いて」くれていましたが、それは第4楽章でも同じです。とても緊張感みなぎるファンファーレになっていましたが、同様に金管、特にトランペットとトロンボーンがその役目を果たしていました。特にトロンボーンは全員が女性。あの重くて強烈なトロンボーンを、よくぞ・・・・・感動します。

指揮者の佐藤先生は、オケを美しく演奏させる方ですが、この第4楽章ではそれに加えて、力強さを確実に求めていたように思いますが、それを見事に現出させていました。第4楽章208小節目、つまり合唱が入る直前ですが、そこもとても劇的に、そして力強く入り、ソリストと合唱を見事にサポート。これが、今回の演奏会で唯一と言っていい問題点を引き起こします。それは、「御身の不思議な力は」の部分で、合唱団が走ってしまったのです!

普通、第九ではオケのほうが走ってしまい、合唱が何とか合わせるのですが、今回は合唱団が走ってしまい、オケは堂々とテンポを崩さずに演奏するというシーンが現出しました。しかし、それをすぐ修正した合唱団は素晴らしい!前回平成22年の時と主力の団体は異なるにも関わらず、それは見事でした。佐藤先生の求める音楽を、一瞬にして理解した瞬間だったと思います。そしてそれは、すぐ私を感動の世界へと連れて行ったのです・・・・・

常に私が問題にする、vor Gott!の部分はとくに変態演奏ではないのですが、でも、そこで美しく力強い合唱!残響がホールの天上から降りてくるのです。それだけでも幸せなのに・・・・・

直後の男声合唱は、ソリストはやや痩せていてそれだけはちょっとな〜と思ったその矢先、太く力強い男声合唱!美しい!なんと美しいのだろうと、うっとり。じつはもうここで、少し涙腺がうるうる・・・・・

そこに、畳み掛けるようにオケの素晴らしい、音の細部まで聞き取れる演奏!しかも、テンポが幾分速めで、まるで音楽の使徒というべき姿勢は、どんどん私を感動のうずに巻き込んでいきます。

その後の、「喜び、それは神々が放つ花火」の、練習番号M・・・・・大きな「喜び」は、ホール全体を包み込み、上から降りてくる!そして私を音で包み込んだ瞬間、私は思わず小さく歌いながら嗚咽して、男泣きに泣きました・・・・・

こんなに感動する第九を、いったい最近聴いただろうか?はい、聴きました、昨年の中大混声の第九です。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会混声合唱部第九演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1110

このエントリの中で、私はこう述べています。

「いつも私が取り上げるvor Gott!の部分が特段変態演奏ではないその後の、ppからfへと移りながらうたいあげていく部分は、鳥肌が立ちました。ここ最近でそれだけ鳥肌が立った第九の演奏は、この中大以外では川崎市民第九だけです。」

今回の演奏は、鳥肌が立つのを一気に通り越し、涙腺を思いっきり緩めてくれました。fどころか、ffだったのですから!しかも、それは力強いだけでなく、とても美しかったのです。特に嗚咽を我慢できなかったのは、「御身の不思議な力は、時流によって引き裂かれたものを、再び結び合わせる」の部分だったのです。今書いていてもなお、感動の涙が止まりません。

私にとっては、オケも、そしてホールも、やむを得ず行けなくて、引き裂かれたものでした。しかし、多くの人の助けを借りて、今、私はこの席に座っている・・・・・それまでのことを思い出した時、涙を止めることはその歌詞を聴いたときに不可能だったのです。しかも、それは美しく、そして力強いアンサンブルで、私をつつみこんだのですから・・・・・

その後の「抱きあえ、いく百万の人々よ」も男声が特にすばらしく、続く歌詞の一つ一つを反芻しながら、たくさんの思索を与えて下さいました。それは素晴らしい演奏だけが可能にするものです。もう、感謝の言葉しか出てきません。合唱が始まる部分はソプラノ要らなかったではないんですかなんて、言えません(って、言ってるじゃん!という影の声有)。

だって、本当に力のある合唱団なんですから。是非次も同じ組み合わせで歌う機会がある時には、ご検討くださいませ。楽譜通りで行けると私は断言します。そこまで私がいう合唱団は、実力があると判断しない限り言いませんので。

ふと気づいてみれば、今回一番主力の合唱団は、芙蓉グループ合唱団なのですね。実力のあるのは納得です。特にテノール。平均年齢が高いにも関わらず、見た限り全くトラを入れていないのにはっきりと聴こえてきたのに感動しました。女声とのバランスもよかったせいもあるのでしょうが、それでも第九のテノールって、自分がおなじパートであるだけに、その苦労は一番良く知っています。どれだけ練習したのだろう・・・・・思わず思いをはせました。

なぜならば、このブログで一度取り上げているんです。

マイ・コレクション:日本の室内オケの第九
http://yaplog.jp/yk6974/archive/641

このCDを取り上げた時に単独で歌っていた合唱団が、今回他の団体と一緒であっても、むしろ一緒になっていいものを作りあげていく力があることを知り、嬉しかったです。こういった合唱団が入っていたことも、この演奏がとてもスピリチュアル(霊的)に聴こえた一つの理由かも知れないのですから。

そして今回、合唱団は一プロで金管が陣取っていた、オルガン下の客席に配置されていたのですが(つまり、コア・アプラウスと同じ)、音は天上から舞い降りてきたのです。そのためには、発声としてはきちんと上方へ上げなくてはならず、発声がきちんとしていた証拠でもあります。本当に合唱団の皆さまはお疲れ様でした!特に、二重フーガはとてもテンポが遅かった(合唱団泣かせのとても遅いテンポ!)にも関わらず、全くアンサンブルが抱懐しませんでした。息継が難しい部分でそれを実現するために、いったいどれくらい練習されたのでしょうか。頭が下がります。

それをサポートしていたと感じたのが、金管、特にトロンボーンだったのです。要所要所で力強く美しい演奏を、ファンファーレとして鳴らし続け、合唱団を鼓舞し続けたその功績は素晴らしいと思います。何故ならば、自分たちが主役であるはずの定期演奏会で、みごとに合唱団をサポートしつづけたからです。最後、私は感極まってブラヴィ!をかけましたが、テノールトロンボーンにも個別に掛けずにはいられませんでした。殆どなかったとはいえ、部分部分ではミスもあった演奏ですが、それを全員でカバーした、「ナイスプレー」が随所にあった、まさしくスピリチュアル溢れる演奏を聴けた幸せを与えて下さったことに、感謝します。

最後まで美しく、力強い演奏を堪能でき、本当に幸せです!今度は何時足をはこべるかわかりませんが、機会があればまたと思います。関係者の方々、本当にお疲れ様でした!




聴きに行った演奏会
中央大学音楽研究会管弦楽団第72回定期演奏会
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
大序曲「1812年変ホ長調 作品49
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
佐藤美枝子(ソプラノ)
井坂恵(アルト)
辻秀幸(テノール
宇野徹哉(バリトン
松戸混声合唱
芙蓉グループ合唱団
東大和市民合唱団「第九を歌う会」
角田ベートーヴェン第九「喜びのうた」を歌おう会
佐藤寿一指揮
中央大学音楽研究会管弦楽団

平成26(2014)年12月22日、神奈川県横浜市西区横浜みなとみらいホール大ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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