かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:アドニが弾くメンデルスゾーンの「無言歌集」2

東京の図書館から、前回と今回の2回シリーズで、小金井市立図書館のライブラリである、ダニエル・アドニが弾くメンデルスゾーンの無言歌集の2枚目です。

2枚目は、第5集の後半から始まり、第8集まで、そして「2つのピアノ曲」ほか3曲が収録されています。そのすべてにおいて、奇をてらった演奏はなく、実に堅実でありながらも、ダイナミックさと繊細さが同居する、作品が持つ精神性や内面を表現しています。

こういった演奏である故なのか、メンデルスゾーンの無言歌集、ひいてはメンデルスゾーンの作品すべてが評価されてこなかったとも言えるのではないでしょうか?ドイツ音楽至上主義を批判する人たちの中で、メンデルスゾーンの芸術が過小評価され卑下されてきたことを指摘し、糾弾した評論家は、少なくともわが国には存在してこなかったと私は思いますがいかがでしょうか。おそらく、「メンデルスゾーンも同じドイツ音楽だから」と無下にしていたのではないでしょうか。

しかし、メンデルスゾーンの作品は正当に評価されてきたとはいいがたいです。せいぜいこの「無言歌集」の一部と、一部の管弦楽作品だけ。交響曲もほんの一部だけです。ドイツ音楽の中でも、正当な評価を受けてきたとはいいがたいのです。そこに日の光をあてたのは、間違いなく指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュであったと言えるでしょう。NHK交響楽団第1000回定期演奏会の「エリア」です。

そのほんの一部評価されてきた作品の一つが、第5集第6番「春の歌」です。JR東日本常磐線いわき駅の5、6番線の出発チャイムに選定され、鉄道ファンを楽しませています(6番線は磐越東線のホームであり、ワンマン運転で車両側で鳴らすため使用せず)。

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クラシックファンよりも、鉄道ファンが評価して来たことに、恥ずかしさはないのでしょうか・・・そこを忘れた、ドイツ音楽至上主義への批判は、私は聞くに堪えません。私はその点を抑えたうえで、ベートーヴェンも大好きな作曲家であるうえで、ドイツ音楽至上主義を批判する者です。ベートーヴェン神格化を否定するものです。作曲家も一人の人間であり、その人間が紡ぎ出したものが、クラシック音楽という芸術であるというスタンスです。決してそれは神が生み出したものではありません。下手すれば苦しみや悲しみの中から紡ぎ出したものです。

メンデルスゾーンの「無言歌集」でも、喜怒哀楽それぞれが表現された作品が多く、例えば第5集の「ゴンドラの歌」と「春の歌」はある意味両極にある作品ですが、それが普通に並んでいるわけです。第8集だとかなり枯れた感じの作品も多くなります。

ただ、第7集と第8集はメンデルスゾーンの死後に出版されており、そもそも最初から8集までを予定していたのかはわかりません。すべて6曲でまとめられていることを考えれば、第6集で終わる予定だったのではという気はします。第6集までがメンデルスゾーンの生前に出版されていることもそうですが、そもそも6というのは3の倍数。キリスト教の「三位一体」から来る数字です。そのため、そもそも第6集で終わる予定だったのでは?と私は推理するのです。

勿論、第7集と第8集にも、メンデルスゾーンの晩年の作品も多く収録されているため、さらなる出版も考えていた可能性はあります。ただ、その場合仮にメンデルスゾーンが長生きしたとすれば、新たな「無言歌集」として出版したのではという気がします。そもそも、第7集が出版されたときは、「遺作」としての出版だったことを考えますと、私は「新しい無言歌集」として出すつもりだったのでは?と推理します。

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無言歌集ではない5曲のうち、「厳格な変奏曲」は非常に激しさも内包する作品です。どこかアドニの「メンデルスゾーンの作品の内面」をたどる様子が描かれているような気すらします。特にこの曲におけるタッチの激しさは、無言歌集でも現れないもので、アドニの出自が、メンデルスゾーンの人となりや人生と重なったかの如くです。アドニもメンデルスゾーンも、ユダヤ人ですし。

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そういう、心の内面を理解し、聴き取ろうとする人が多ければ、争いは起きないのにとつくづく思います。現在イスラエルハマスの間で起きているいさかいは、ガザ地区における虐殺という新たな抑圧を生み出しています。果たして、その先私たちはいかなる歴史を歩むのか・・・今一度、メンデルスゾーンの芸術を聴いて、考えてみるのも必要なのではないかと思います。

 


聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
無言歌集
第5巻(続き)
 第28番ト短調作品62-4
 第29番イ短調作品62-5
 第30番イ長調作品62-6
第6巻
 第31番変ホ長調作品67-1
 第32番嬰ヘ短調作品67-2
 第33番変ロ長調作品67-3
 第34番ハ長調作品67-4
 第35番ロ短調作品67-5
 第36番ホ長調作品67-6
第7巻
 第37番ヘ長調作品85-1
 第38番イ短調作品85-2
 第39番変ホ長調作品85-3
 第40番ニ長調作品85-4
 第41番イ長調作品85-5
 第42番変ロ長調作品85-6
第8巻
 第43番ホ短調作品102-1
 第44番ニ長調作品102-2
 第45番ハ長調作品102-3
 第46番ト短調作品102-4
 第47番イ長調作品102-5
 第48番ハ長調作品102-6
 
音楽帳ホ短調作品117
ゴンドラの歌 イ長調
厳格な変奏曲作品54
2つのピアノ曲
 第1曲:アンダンテ・カンタービレ
 第2曲:プレスト・アジタート
ダニエル・アドニ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。