かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ルービンシュタインが弾くショパン マズルカ1

東京の図書館から、5回シリーズで取り上げております、小金井市立図書館のライブラリである、アルトゥール・ルービンシュタインが弾くショパンピアノ曲集、第3回目の今回はマズルカを収録したアルバムの第1集を取り上げます。

マズルカショパンが生涯をかけて作曲したジャンルです。この第1集では第1番から第25番が収録されています。

ja.wikipedia.org

だいたい1830年~1837年にかけて、第1番から第25番は作曲されました。いくつかの作品が同じ作品番号でまとめられており、1曲を単独で弾くのではなく作品番号でまとめて演奏するためにまとめられていると言います。

実際に、一つ一つの演奏時間は短いんですが、特徴として最初は短い曲で始まり、最後は長い曲で終わるという構造を持っています。確かに様式をみればウィキペディアに書いてあるような民族的や宗教的な側面がありますが、興味深いのはそれだけではなく短い曲で始まり長い曲で終わるという統一された楽章構成ともいうような構成になっているということです。これは気軽に演奏できる作品であると同時に、一つの交響曲のような内容を持っているように私には感じられます。

ピアノという楽器はロマン派になり発達した楽器です。その意味では音楽史の中では比較的新しい楽器だと言えるわけです。そんな楽器で交響曲が手軽に演奏できるとしたら、どうでしょう?そしてそこに民族色や、宗教的な色彩、さらに舞曲が元になっているという気軽さ。私には古典派の時代に協奏曲を弦楽四重奏曲へ編曲されたのと同じ印象を持ちます。

演奏を聞いていますと、比較的短いギャップで次の曲へと移っている感じです。ルービンシュタインは意味もなくそんな演奏をするとは思えないんですね。意味を持たせてそのような演奏をしていると考えるのが自然です。ルービンシュタインは「作品番号でひとくくりだよ」と言っているかのように聴こえるのは私だけなのでしょうか。

その意味では、バッハから続く舞曲の伝統や歴史がしっかりと踏まえられているように思います。一見するとバッハとショパンでは様式や音楽の内容が異なりますので関係ないように見えますが、ショパンの時代であってもバッハは鍵盤楽器においては高名な作曲家として捉えられており、メンデルスゾーンによって声楽曲が再評価される前であってもその評価は変わりありませんでした。その視点でいえば、ショパンの作品にもバッハの影響があるとしてもそれほど不思議はありません。ただ、そのあらわれ方は時代が異なるので異なる、ということです。

ルービンシュタインの演奏は、音楽史を踏まえた、実に深いものになっているなあと思います。ですが聴いている限りではとても親しみやすい演奏であり、マズルカというジャンルが持っている背景が前面に出ている演奏です。その一方で細かい表情付けの部分においては、実に繊細なんです。それはルービンシュタインのような老練な演奏家なら当然ではないかという声も聞こえてきそうですが、もちろん異論はありませんがではその源泉は?と考えたときに私なりにたどり着いた結論です。

25曲もあるにもかかわらず、あっという間に時間が過ぎていくこの感覚はいったい何だろう?と考えたときに、ルービンシュタインが老練だからこそ持っている視点が、その源泉であろうと考えるわけなのです。であれば当然ですが、ショパンがどのような作曲家であり、その時代背景はどのようなものであったかは当然踏まえたうえで演奏しているというのはごく自然な結論ではないでしょうか。そしてその歴史を、ルービンシュタイン自らの人生に照らし合わせ、投影しながら心の内を演奏に投影していくとしていても、何らおかしくないでしょう。様々なことが感じられる、まさに名演と言えるでしょう。

 


聴いている音源
フレデリック・ショパン作曲
マズルカ第1番嬰ヘ短調作品6-1
マズルカ第2番嬰ハ短調作品6-2
マズルカ第3番ホ長調作品6-3
マズルカ第4番変ホ短調作品6-4
マズルカ第5番変ロ長調作品7-1
マズルカ第6番イ短調作品7-2
マズルカ第7番ヘ短調作品7-3
マズルカ第8番変イ長調作品7-4
マズルカ第9番ハ長調作品7-5
マズルカ第10番変ロ長調作品17-1
マズルカ第11番ホ短調作品17-2
マズルカ第12番変イ長調作品17-3
マズルカ第13番イ短調作品17-4
マズルカ第14番ト短調作品21-1
マズルカ第15番ハ長調作品21-2
マズルカ第16番変イ長調作品24-3
マズルカ第17番変ロ短調作品24-4
マズルカ第18番ハ短調作品30-1
マズルカ第19番ロ短調作品30-2
マズルカ第20番変ニ長調作品30-3
マズルカ第21番嬰ハ短調作品30-4
マズルカ第22番嬰ト短調作品33-1
マズルカ第23番ニ長調作品33-2
マズルカ第24番ハ長調作品33-3
マズルカ第25番ロ短調作品33-4
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。