かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ルービンシュタインが弾くショパン ノクターン集1

東京の図書館から、今回から5回にわたりまして、アルトゥール・ルービンシュタインが弾くショパンのピアノ作品を収録したアルバムをご紹介します。

ルービンシュタインピアノ曲が好きだったり、弾いたりしている人にとっては神様のような存在のピアニストです。とはいえ、活躍したのは戦前から1976年。ピアニストも綺羅星のように大勢いるため、なかなかルービンシュタインまで手が回らなかったのが実情。なのでほとんど演奏を聴いたことがありません。

そのため、ショパンのピアノ作品は全集を神奈川県立図書館で借りてきてリッピングしてあるにも関わらず、このルービンシュタインの演奏を借りてみようと思い立ったのでした。録音は1960年代。今回取り上げるノクターン第1集が収録されたのは1965年。私が生まれる以前の録音なんです。ルービンシュタインが活躍したのはそのころだということなんです。何せ生まれは1887年。

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ポーランドユダヤ人だったルービンシュタイン。ピアニストとして著名になった後はロンドンやアメリカで活躍したのですが、ポーランド生まれのユダヤ人ということは、推して知るべし、です。おそらく、祖国で起こったことに心を痛めていたことが想像されます。

今回取り上げる第1集はノクターン第1番から第10番が収録されていますが、第1番が1830年、第10番が1837年の作曲。ショパン若かりしころの作品です。それゆえに演奏には若々しさがないともいわれることもあります。録音が1965年ということは、ルービンシュタイン79歳。そりゃあ若々しい演奏ができるはずもありません。ですが一方で、その年齢が重ねてきた年月というものが、演奏にはにじみ出ます。落ち着いた演奏ですが、しかし覇気がないわけではありません。生命をしっかり感じることもできるのです。老齢ゆえの俯瞰や、透徹した視点など、聴いていて79歳という年齢だからこそ表現できる演奏だと思います。

しかも、第10番の作曲が1837年ということは、収録した時点で130年という時が経っています。ショパンと同じポーランド出身でかつ同じように海外へ雄飛して活躍したという身の上。その似通った境遇がどこかルービンシュタインには共感する部分として刻まれているように、演奏からは聴こえるのです。そして130年という時の中で起きた、ポーランドという国の歴史・・・・・

そして、何よりもルービンシュタインが当時の現代音楽を応援していたということ。それは人間の内面へ深く思考していくことでもあるでしょう。聴いていてどこか哀愁が込められているように思います。その意味では、初めて全集を借りて聴いたアシュケナージよりはさらにナイーヴな感じがします。アシュケナージの演奏をダメ出ししたいのではなく、年齢を重ね、その日々で経験したことの積み重ねが故ににじみ出ていると思うのです。

いきなり第1集から、ショパンという同郷の作曲家に対する尊敬の念が詰まった演奏です。

 


聴いている音源
フレデリック・ショパン作曲
ノクターン第1番変ロ短調作品9-1
ノクターン第2番変ホ長調作品9-2
ノクターン第3番ロ長調作品9-3
ノクターン第4番ヘ長調作品15-1
ノクターン第5番嬰ヘ長調作品15-2
ノクターン第6番ト短調作品15-3
ノクターン第7番嬰ハ短調作品27-1
ノクターン第8番変ニ長調作品27-2
ノクターン第9番ロ長調作品32-1
ノクターン第10番変イ長調作品32-2
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)


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