かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:クレメンティ ピアノソナタ集

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、クレメンティのピアノ・ソナタ集のアルバムをご紹介します。

クレメンティはこのブログでも何度か取り上げてきた作曲家です。時代的にはモーツァルトよりも年代が上であり、かつベートーヴェンの才能を高く評価し、楽譜を出版したことで有名ですが、そもそもは「ピアノの父」と言われる名ピアニストでした。

そのクレメンティのピアノ・ソナタを集めたアルバムなのですが、実はクレメンティのピアノ・ソナタも結構な量残されており、かつ一つの作品にいくつかのソナタが集められていることが多く、このアルバムでも枝番がついているものばかりが取り上げられています。以下はピティナのページです。やはり、ピアノ曲で困ったときのピティナですね。

enc.piano.or.jp

そのうえで、使用しているピアノは、フォルテピアノ。どの機種を使っているのかまでは記載がなかったと思われますので私も記録を残していないんですが、ピティナの説明文を読みますと、おそらくイギリス式の開発にクレメンティも携わった可能性は大です。そこで、浜松市楽器博物館の、以下のエントリにつながるんです。

ykanchan.hatenablog.com

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モーツァルトの発言から、長らくクレメンティは存在を貶められたと言っていいと思います。天才モーツァルトも一人の人間ですから、嫉妬することだってあります。その嫉妬を正確なものとするのは確かに客観的な判断ではありません。この辺りを知ることができることはさすがピティナですし、浜松市楽器博物館だと思います。

ということはです、使っているフォルテピアノも、イギリス式の可能性は高い、と思います。実際、録音はイギリスで行われていますので。演奏するのは、ジョス・ファン・インマゼール。指揮者としての名声のほうが近年では有名なのですが、そもそもはピアニストだ、ということになります。しかし、聴いていますと結構フレージングを大切にする演奏スタイルです。なるほど、インマゼールの指揮は確かにそれほどフレージング無視ではないなあと、思い起こします。筋肉質かつふくよかさも存在する演奏は、フォルテピアノがまさに革命的楽器であり、その先鞭をつけたのがクレメンティであり、作品の革新性を演奏で示してみせた、ということになるのだと思います。クレメンティの「新しい時代を創る」という意志が、時空を超えてインマゼールによって再現されている・・・・・そんな印象を受けます。フォルテピアノでの演奏だからこそ際立つものがある・・・・・インマゼールから教えてもらったような気分です。

最後に収録されている作品13は、ピティナの説明を見ますとどうやら他の楽器を伴奏にもできるけれども基本フォルテピアノ独奏だと解釈できそうです。それはつまり、バッハがチェンバロやオルガンを通奏低音だけでなく独奏楽器としても扱ったように、そのチェンバロを新しい時代に合わせ革新させ、バッハの時代のように独奏楽器としても扱える楽器にする、さらにそこから進んでむしろ独奏楽器なのだ!という宣言であるようにすら思えます。実際インマゼールの演奏を聴いている限りでは、どこから見てもピアノ独奏用にしか聴こえません。勿論アンサンブルもできるでしょうが。その意味では、なぜベートーヴェンの時代になってソナタという曲が多くなったのか、そしてなぜベートーヴェンソナタにおいて、独奏楽器とピアノを対等の関係に置いたのか、どことなく理解できるのは私だけなのでしょうか。明らかにクレメンティが始めた「鍵盤楽器の革新」という流れの上に、ベートーヴェンはいたと言えます。クレメンティのピアノ・ソナタフォルテピアノで聴くということは、ベートーヴェンの革新性をさらに認識するだけでなく、そもそもその革新性はベートーヴェンオリジナルではなく、先達がいて、その先達に対してのベートーヴェンのリスペクト、あるいは共感を感じることであると言えるのではないでしょうか。それはベートーヴェンが「神」だからではなく、モーツァルト同様、一人の人間だったからこそだと、私は思います。クレメンティからそれが理解できようとは・・・・・インマゼールのこの演奏は、おそらくインマゼール自身が、その過程を理解していたゆえであると、強烈に感じるものです。だからこそ、インマゼールベートーヴェンの第九を指揮もした・・・・・そう考えるのが妥当だと言えましょう。

 


聴いている音源
ムツィオ・クレメンティ作曲
ピアノ・ソナタ変ロ長調作品24-2
ソナタ嬰ヘ短調作品25-5
ソナタト長調作品37-2
ソナタヘ短調作品13-6
ジョス・ファン・インマゼールフォルテピアノ

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