かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:クレメンティ ピアノ・ソナタ全集1-3

今月のお買いもの、平成27年5月に購入したクレメンティのピアノ・ソナタ全集の第1巻をご紹介していますが、今回はその3枚目をご紹介します。

ここまで出版順に収録されてきたこの全集ですが、この3枚目はそれが崩れます。

最初の作品11(1784年出版)はいいのですが、その次がロンド変ロ長調WoO8(1802年出版)、3曲目が作品24(1788年出版)となっているのです。

WoO8がなぜ2曲目に来ているのかは、ネットで調べる限りではわかりませんが、作曲順だともしかするとWoO8がくるのかもしれません。ブックレットの英文によると、様式的には作品11に近いとのことで、おそらく同じ時期に作曲されたが、出版は1802年との解釈とのことです。

作品24については、ピティナによると、第1番の作曲は1788年説と1781年説とがあり、第2番は1781年が有力とのことで、このアルバムではどうやら作品11の次という解釈のようです。

クレメンティ : 2つのソナタ
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/6223/

続く作品41は、作品24-2の改訂稿で、そのため続いて収録されているようです。出版年は1804年ですが、作曲年は1781年という事になりそうです。

クレメンティ : ソナタ 変ホ長調
Clementi, Muzio : Sonata E-flat major Op.41
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/10209/

この1780年前後という作曲年代は、モーツァルトだとウィーンに出た時期に当り、ピアニストとしての名を上げ始めた時期になります。そんな時代に、すでにクレメンティが一世を風靡し始めていたわけです。ともすればベートーヴェンを想わすような作品すらあるクレメンティの作品がすでにある中で、モーツァルトがその名を上げ、自立していくためには必死になって作品を書き、演奏会をこなす必要があったことでしょう。

モーツァルトクレメンティに対する評価は決して高くありませんが、それは当然のことだと言えましょう。つまりは、やっかみなのです。それは視点を変えれば、それだけ当時様々なピアニストがひしめき合い、しのぎを削っていた故、モーツァルトの地位が低かったことを意味するわけですから。

クレメンティの作品を聴くということは、その当時のモーツァルトの情況を推し量る、素晴らしい史料に巡り合うということを示しているのです。日本史でいえば、ちょうど平安中期、正史が終わったことで様々な貴族の日記を比較しながら、その時代を推し量っていくのとよく似ています。

これら4つの作品は、ベートーヴェンというよりもハイドンモーツァルトに近い作風を持っており、つまりは多少古風であるという事を示しています。もしかすると現在残っている楽譜は、19世紀に入ってクレメンティが修正している可能性もあり、それならばベートーヴェン的なディオニソス風が入ってもおかしくないわけですが、この3枚目に収録されている4曲は、比較的古風なものとなっており、クレメンティ1780年代の作風を如実に伝えているものと判断できそうです。

古風と言ってもすでに全くの古典派ですから、マストロプリミアーノはリフレインなどを多用し、場合に寄ってはリタルダンドもつけて、現代的に演奏しています。フォルテピアノであるにも拘らず、音は古風であってもその演奏が紡ぎだす世界は誠にモーツァルトははたまたベートーヴェンかと言う変幻自在ぶりで、聴く者をぐいぐい演奏に引き込んでいきます。

ここまで聴いてきたクレメンティのピアノ・ソナタは、決してベートーヴェンのような重厚なものはあまりないのですが、しかしハイドンモーツァルトとひしめき合うだけのクオリティをしっかりと持っています。マストロプリミアーノの演奏は、私達にクレメンティという作曲家の真の姿をしっかりと映し出すことに成功しています。




聴いているCD
ムツィオ・クレメンティ作曲
ピアノ・ソナタ変ホ長調作品11
ロンド 変ロ長調WoO8
ピアノ・ソナタヘ長調作品24-1
ピアノ・ソナタ変ロ長調作品24-2
ピアノ・ソナタ変ホ長調作品41
コンスタンティーノ・マストロプリミアーノ(フォルテピアノ
(Brilliant Classics 93338-3)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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