かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:クレメンティ ピアノソナタ全集1-2

今月のお買いもの、平成27年5月に購入したものをご紹介しております。前回からシリーズでご紹介しているクレメンティピアノソナタ全集の第1集の、今回は2枚目をご紹介します。

よくよく見ていると、この全集、作品番号順になっています。それは作曲順であるようで、この点に関しては交響曲とは異なるようです。まあ、交響曲には作品番号が付いていませんから。

例えば、私がたまに参加している瀬川氏のサロンでも、たまにクレメンティの名前が出てくることがありますが、それはピアニストのサロンだからだということが大きいでしょう。他のジャンルが好きな人たちからは殆ど名前を聴くことはありませんから。

それだけ、クレメンティがピアノ作品で有名であると言う証拠だと言えましょう。ただ、クレメンティソナチネで有名なのですが、交響曲を神奈川県立図書館で借りた時に、ウィキで調べた時からウィキ自体にピアノ・ソナタが数多く掲載されているのにソナチネだけという評価は如何なものかと思っていましたら、やはりピアノ専門のピティナもおなじ見解でしたので、再度上げておきます。これがこの全集を買おうと思った一つの理由であるからです。

クレメンティ Clementi, Muzio [ イタリア ] 1752 - 1832
http://www.piano.or.jp/enc/composers/14/

この2枚目に収録されている作品は、作品9と作品10ですが、ともにモーツァルトというよりはベートーヴェンの雰囲気を持っています。特にベートーヴェンの初期の作品の雰囲気です。ベートーヴェンがピアノ・ソナタを書くにあたって、どんな作曲家の作品に触発されていたのかという、一つの証拠であろうと言えましょう。

勿論、私自身はクレメンティだけだと結論付けるわけではないですし、そうしたくありません。というのは、意外と忘れられているのですが、ハイドンも多くのピアノ・ソナタを書いた人だからです。ベートーヴェン程あくが強い作品を書いたわけではなく、また交響曲に比べても可もなく不可もない作品が多いので無視されることが多いのですが、じつはハイドンも素晴らしいピアノ・ソナタを数多く書いているのです。

ベートーヴェン交響曲にしても、また弦楽四重奏曲にしても、ハイドンの影響を強く受けており、その上でそれを超越する、自己が確立された作品を書きましたが、だとすれば、ピアノ・ソナタに関しても、ハイドンの影響を考慮しないのはおかしな話になります。だからこそ、クレメンティだけとレッテル張りすることは、私はしたくないのです。

このクレメンティの二つのソナタは、ハイドンベートーヴェンをつなぐものとして位置付けることが出来るでしょう。

奏者マストロプリミアーノの演奏は、それを踏まえてなのか、とても柔軟です。重厚な音があるかと思えば、軽い音もあり、さらに柔らかい音もあり、単純ではありません。勿論、古典派の作曲家が残したピアノ作品がすべて短調であるわけがないのですが、クレメンティのこの2つの作品は、クレメンティが楽譜にまだ「ハープシコードのための」という言葉も入れていた頃の作品なのです。すでにフォルテピアノが出始めていた時代ですが、ハープシコードでも演奏できるようにという意図がある訳です。ですから、基本的に音は動き回ります。それはモーツァルトと一緒ですし、ベートーヴェン初期の作品にも共通します。

それでも、まるでベートーヴェンの作品のような雰囲気も持っているわけです。例えば緩徐楽章の長音を生かしたゆったりとした楽想などがそうです。それは少なくとも、ハープシコードチェンバロ)ではなく、フォルテピアノを想定していることは明らかです。

つまり、このクレメンティの2つの作品は、バロックの息吹をもっているが、少なくとも古典派の範疇に収まっていることを示しています。その上で、ベートーヴェンとの親交を踏まえると、決して硬直化させず、しなやかさを前面に出す演奏になるのは必然かなと思います。

ピティナのサイトに掲載されているモーツァルトの批判は、いかにクレメンティが技巧的に優れていたかの裏返しでもある訳で、それは次の時代に、ベートーヴェンを媒介者として、ヴィルトォーソを生み出すきっかけになったとも言えましょう。その点でも、クレメンティはもっと光が当たってもいい作曲家だと思いますし、奏者マストロプリミアーノはそこも踏まえた演奏をしているように思います。それは私達聴衆に、実に明快で爽快な世界を呈示し、与えてくれているように思います。




聴いているCD
ムツィオ・クレメンティ作曲
ピアノ・ソナタ変ロ長調作品9-1
ピアノ・ソナタハ長調作品9-2
ピアノ・ソナタ変ホ長調作品9-3
プレリュードモーツァルト風(作品19から)
ピアノ・ソナタト長調作品10-1
ピアノ・ソナタニ長調作品10-2
ピアノ・ソナタ変ロ長調作品10-3
コンスタンティーノ・マストロプリミアーノ(フォルテピアノ
(Brilliant classics 93338-2)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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