今月のお買いもの、平成27年5月に購入したものをご紹介しています。今回はディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、クレメンティのピアノ・ソナチネ集を取り上げます。
クレメンティは、ようやく同じコーナーでピアノ・ソナタを取り上げ始めましたが、今度はソナチネです。
ソナチネは、ベートーヴェンもたくさん書いていますが、それに匹敵する数をクレメンティも書いています。むしろ、現状ではそのソナチネのほうが有名ですが・・・・・
ベートーヴェンもそうですが、クレメンティも同様、ピアノ・ソナタを数多く書いている作曲家であるということは、忘れてはならないと思います。
クレメンティ Clementi, Muzio [ イタリア ] 1752 - 1832
http://www.piano.or.jp/enc/composers/14/
その中で、クレメンティのソナチネを位置付ければ、やはりベートーヴェンと同じようになるかと思います。ソナタよりは簡単だけれども、決していい加減ではない、というものです。ただ、ベートーヴェンはソナチネのほとんどにWoO番号を付けましたが、クレメンティは作品番号を付与しました。つまり、正式な作品というわけです。
確かに、作品36の5第1楽章などは、ピアノ・ソナタ風になっていますし(まるでベートーヴェンの第19番などと同じように!)、クレメンティが作品番号を付けるだけの理由はあるように思います。
そもそも、クレメンティのソナチネは、作品36と作品37を総称したものを言います。その中で、このアルバムに収録されたのは、作品36全曲と、作品37の1から3までです。クレメンティのソナチネで評価が高いのは主に作品36なので、クレメンティのソナチネを俯瞰するには十分だと言えます。
ベートーヴェンも聴き、参考にしたであろう作品36は、6つのそれぞれがピアノ・ソナタと遜色ない内容を備えていて、聴いていて楽しめる作品ばかりです。1797年に出版されたこれらの作品は、1820年に改訂されていて、恐らくそこでさらにブラッシュアップされて今日の姿になったであろうと推測されています。ソナチネの可愛らしさはそのままに、ピアノ・ソナタのような形式美も十分備えており、古典派の作品としてがっちりしたものになっています。
恐らく、改訂の時にベートーヴェンのピアノ・ソナタも念頭にあったことでしょう。ハイドンがモーツァルトの交響曲に触発されて自身の作品をブラッシュアップしていったのと同様の姿が、そこからは目に浮かびます。
このような作品を聴くという事は、古典派という時代の理解や、俯瞰に大いに役立ってくれます。古典派と言えばハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンとなってしまいがちなのですが、確かに聴くだけであればそれで十分だと思います。ただ、情報を発信していくとなると、やはりそれだけでは不足を感じてしまいます。私などは、3人の作品を聴けば聴く程、所謂評論の類とのかい離を感じることが多いのです。
評論家が例えば、クレメンティを知らずに書いているとは思えないのですが、書くときについ忘れてしまっているということはないだろうかとはかんがえます。それなら納得する部分が多々あるのです。それはそれだけ、やはり3巨匠の作品が抜きんでているからだということになります。ただ、例えばプロ野球の選手を輩出するためには、高校野球や草野球と言った、或はJリーグでは高校サッカー部などと言ったすそ野があるように、古典派の時代も3巨匠を生み出す「裾野」があったという事を、念頭に置いておく必要があるのです。
そしてその裾野には、私達の知らない、素晴らしい作曲家たちがいるのだということを知っておく必要があります。クレメンティは、そのうちの一人だと言えましょう。
演奏は鳥羽泰子さん。古典派のリフレインもしっかりとつけながら、縦横無尽な演奏からは、クレメンティの作品が持つ可憐さや、美しさ、情感などが聴き手に届けられていると思います。古典派の法則通りに弾けば、じつはクレメンティのソナチネはとても生き生きとしたものであるという事を、教えてくれます。
そもそも、ピティナのページを見ると、クレメンティのソナチネは、コンペの課題曲となっているものが多いことに気が付かされます。つまり、演奏家サイドではクレメンティは常識であるという事になります。鳥羽さんからすれば、コンペの課題曲でおなじみの作品を弾くという事になりますが、それを真正面から愚直に弾いてみれば、実に魅力的な作品なのですよと、言われているような気がします。
聴いているCD
ムツィオ・クレメンティ作曲
ソナチネ ハ長調作品36-3
ソナチネ ニ長調作品36-6
ソナチネ ト長調作品36-5
ソナチネ ト長調作品36-2
ソナチネ ヘ長調作品36-4
ソナチネ ハ長調作品36-1
ソナチネ ニ長調作品37-2
ソナチネ ハ長調作品37-3
ソナチネ 変ホ長調作品37-1
鳥羽泰子(ピアノ)
(徳間ジャパン TKCA-10321)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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