かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立博物館所蔵CD:メンデルスゾーン 室内楽全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、メンデルスゾーン室内楽全集をご紹介していますが、今回はその第2回目です。第2集にはチェロ・ソナタが収録されています。

メンデルスゾーンソナタをそれほど多く作曲したわけではないですが、弦楽器とピアノの組わせで幾つか作曲した人です。その組み合わせからはベートーヴェンへの尊敬すら見えてきます。

例えば、1曲目のチェロ・ソナタ第1番は、3楽章形式を採ります。これはベートーヴェンのチェロ・ソナタと同様であり、まずは先人の作品をまねることから始まっていますが、音楽は前期ロマン派です。冒険していません。至って穏やかな作品です。主調が変ロ長調のわりには第1楽章冒頭が暗めに始まるので、とても気品を持っているように感じられる作品です。実際には第3楽章は明るくかつ快活なので、第1楽章とのコントラストを考えますと素晴らしい構成だと思います。

チェロソナタ第1番 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

2曲目のチェロ・ソナタ第2番は、4楽章を持つ作品となっており、ベートーヴェンの様式からの卒業(という表現を使っていいのかわかりませんが・・・・・某タレントさんが使っていましたから)が見て取れます。旋律的にも完全にロマン派ですし、メンデルスゾーンの自信のほどがうかがえます。

チェロソナタ第2番 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

では、2曲に共通する者はロマン派的なものだけなのかと言えば、大きく言えばそうなのですが、ピアノパートの充実です。例えば、第2番第1楽章の最後はピアノ独奏で終わるなど、ピアノの活躍が随所に見て取れます。この音源ではエッシェンバッハがピアノパートを担当していますが、それを見てもわかるように、ベートーヴェン以上に古典派までは伴奏であったピアノが、もう一つの楽器と対当もしくはそれ以上になっている点が特色です。それを大まかに言えば、ロマン派の特色なので、大きな枠でいえばだからこそこの作品はまさにロマン派の作品であると言えるわけです。

ですから、どこがロマン派的なのですかと質問されれば、ピアノパートの充実です、と言えるわけです。これこそ、ベートーヴェンが「ソナタ」において切り開いたものであり、それを受け継いだのがロマン派の作曲家達だったわけですから。その点で、ロマン派後半、つまり後期ロマン派以降、ベートーヴェンが神格化され「楽聖」と呼ばれるようになるのは、それなりの歴史的な事実の積み重ねがあった、というわけで、このような室内楽を聴かないと理解するのは難しいように私には思えます。そう、交響曲では難しいと思います。

ベートーヴェンと言えば交響曲、というイメージが強いように思われますが、ベートーヴェンは余りにも交響曲を神格化しすぎたきらいがあります。そのアンチとして、前期ロマン派に置いては神々しいような作品が作曲されていません。むしろ、モーツァルトを受け継いだような作品が多くみられます。これはロマン派が少なくともベートーヴェンの様式を受け継ぐと言うよりは、むしろベートーヴェンが完成させた古典派を受け継ぎながら、モーツァルトのようなもっと肩が凝らず、しかし自分たちの表現をするという、モーツァルトベートーヴェンの様式を統合させようとしたとも言えます。それこそ、「ロマン派」という名前が示す通りでしょう。

それでも、様式的にはベートーヴェンを踏襲しています。3楽章のものはありません。それは新古典主義音楽を待たねばなりません。ここに、ロマン派におけるベートーヴェンの強烈な影響力を見て取れます。ベートーヴェンの音楽が持つ人間性を、いかに自分の言葉で表現するか・・・・・その格闘の時代がロマン派であったとも言えます。そのため、後期ロマン派では神格化まで至るのですね。

室内楽はでもっと影響を受けているわけで、その上でメンデルスゾーンが格闘していた証しを見て取れるのがこの二つのチェロ・ソナタだと言えるでしょう。

チェロのシュタルクとピアノのエッシェンバッハは素晴らしいコンビを見せています。特にピアノパートは前述しましたが、対当以上なのでとても難しいのですが、さすがエッシェンバッハ、何食わぬ顔で演奏しており、それにノリノリで乗っかるチェロは生き生きとしています。え、メンデルスゾーンのチェロ・ソナタってこんなに素晴らしい作品だったの?って思います。

勿論、様式的に見てもこの二つの、特に第2番は独創的な素晴らしい作品ですが、単にベートーヴェンを踏襲したような第1番も実はメンデルスゾーンらしさが随所につまった名作であることを如実に教えてくれます。第1番は第1楽章冒頭が暗めに始まりますが、すぐ変ロ長調らしい明るさになり、とても格調高く美しい作品です。難しいパートであるにも関わらずチェロとの関係性を重視するエッシェンバッハのピアノ、そして同じくピアノとアンサンブルするシュタルクのチェロ。何度聴いても味わい深く、うっとりします。

室内楽は、各パートの「関係性」が全面にでるジャンルだと思うのですが、その関係性の素晴らしさが実に見事です。各々独奏者として一流の2人が、アンサンブルにおいて何を大事にしているかということがこういったソナタによってつまびらかになる訳で、その点でやはりこの二人は一流です。独奏でもそしてアンサンブルでも素晴らしい仕事ができることこそ、プロだと言えるでしょう。

この音源は、ゆえに「プロがプロである理由」を端的に説明しているように思います。

他に収録されている「無言歌」作品109と、協奏的変奏曲作品17も、チェロとピアノのための作品ですが、ソナタとは言えないまでも、ソナタの一楽章としても使えるほどのクオリティを持っています。特に協奏的変奏曲はバッハ以来の伝統を持つものであり、もしかするとメンデルスゾーンソナタで使いたかったのかも知れせん。




聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
チェロ・ソナタ変ロ長調作品45
チェロ・ソナタニ長調作品58
無言歌(アンダンテ)作品109
協奏的変奏曲作品17
クロード・シュタルク(チェロ)
クリストフ・エッシェンバッハ(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村