かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ 作品集4

今月のお買いもの、平成28年1月に購入したものをご紹介しています。ディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、カール・フィリップエマヌエル・バッハの作品集の、今回は第4集です。

実は、第4集と第5集はセットになっていまして、オルガン協奏曲集を収録したものになっています。ですから第4集は、カール・フィリップのオルガン協奏曲集の第1集となっています。

オルガン協奏曲は、バロック〜古典派にかけて多く作曲されたジャンルで、そのいくつかはチェンバロやクラヴィーアへ編曲もされています。カール・フィリップの父である大バッハ、ヨハン・クリスティアンも同じように作曲し、編曲していることは、何度かこのブログでもご紹介しているかと思います。

カール・フィリップもその伝統を踏襲しながらも、様式的には新しいものに取り組んでいます。むしろ様式的には父大バッハよりも先進地域であったイタリア、ヴィヴァルディに近いものを持っています。

第1曲目のWq34はまずオケが主旋律を奏して後からオルガンが出ると言う、私達がよく知っている様式になっており、合奏協奏曲のような雰囲気はあまり感じられません。トゥッティとソロのコントラストもあまりなく、ソロにオケのパートが入ってくることもしばしばです。

作曲されたのは1755年。まだバロックの気風が残っている時期に様式的には古典派に近い作品が生まれているという事になります。その上、この作品はチェンバロでも演奏できるようになっているのも特徴です。

聴いてみますと、オルガンの音がオケとさほど変わりないことに驚きます。勿論、それは録音のやり方もあるかもしれませんが、バッハのような圧倒される音ではないんですね。むしろ、オケとアンサンブルすることに重点が置かれており、その点も父大バッハとは異なる作曲をしていると見て取れる作品です。

続くWq182-3はシンフォニアです。ここではオルガンが登場しませんが、多感様式やギャラント様式であってもシンフォニアが作曲されたのだという一つの証拠です。作曲年は1773年。すでにハイドンモーツァルトが活躍している時代なんですね。つまり、古典派なんです。

となると、古典派はいったいいつから始まったのだ?という疑問が出るかと思います。では、ロマン派はいったいいつから始まったのでしょう?はっきりとその区分をすることは難しいかと思います。少なくとも、ハイドンモーツァルトの時代は古典派であっても、様式的には多感様式やギャラント様式も全盛であったという事を、私達に教えてくれる作品です。

前期ロマン派の作曲家の半分くらいの作品が、実はベートーヴェン存命中に作曲されているという事は幾度かこのブログでも指摘してきましたが、同じことが古典派ぼっ興期でも起こっていた、という事なのです。その意味では、大バッハ亡き後の音楽界は、激動の時代を経験していると言えるでしょう。わずか100年たたないうちに、バロックから前期ロマン派までに至ったのですから。

このシンフォニアが作曲されてから100年後は、既に後期ロマン派で、国民楽派が活躍したりしています。大バッハの死後150年後は20世紀で、印象派新古典主義がぼっ興し、やがて12音階や無調の時代を迎えるという事になります。

そんな中で、カール・フィリップは活躍したのだということを押さえておくことは、大切であるように思います。私達がクラシック音楽と言っているものの多くは、限られた時期に作曲されているのだということです。ですから、例えば印象派の作曲家がバロック音楽を顧みたりすることは、至って自然の事であると言えるのです(特にフランスの場合、それは愛国心とも連動していました)。

3曲目はふたたびオルガン協奏曲で変ロ長調Wq35です。Wq34と35はともに作曲年が1755年で、チェンバロでも演奏できるようになっていることからセットとも考えることもできますが、私が調べた限りではセットではないようです。カール・フィリップ鍵盤楽器の協奏曲がチェンバロもしくはクラヴィーアが殆どであることを考えると、チェンバロで作曲をしオルガンでもというほうが自然かもしれません。

大バッハが存命中、教会で演奏会を開くことが多かったのですが、カール・フィリップもそれを前提にして作曲していると考えることができるでしょう。

演奏はオルガン奏者が指揮も兼務するというスタイルを採っており、オルガンはライナー・オスター。オケがアンサンブル・パルランド。これで聴いていて不自然さがなく、むしろオケとオルガンのアンサンブルの絶妙さにうなるほどです。バランスがとてもよく、聴いていて爽快です。オルガンの抜けるような青空の音に、明るいオケの音が重なりますと、美しい風景を見ているかのように錯覚します。

演奏が紡ぎだす音が、まるで脳裡に美しい風景を映し出す・・・・・そんなプロジェクターのような音なのです。メッセージこそありませんが、美しいとはこういうことなのかと実感させられます。

仕事で、最近妙高高原へスキーに行く機会に恵まれましたが、スキー場の中腹から見る峰々は本当に美しく、久しぶりで全く滑れず歩くしかなかった私でしたが、その美しさは胸を打つものでした。そんな風景が、この演奏からは伝わってくるのです。

この演奏者達はいったいどれだけ美しい場所で仕事をしているのだろうと思います。その場所の美しさが、演奏するときに滲み出るのかもしれません。




聴いているCD
カール・フィリップエマヌエル・バッハ作曲
オルガン協奏曲ト長調Wq34
シンフォニアハ長調Wq182-3
オルガン協奏曲変ロ長調Wq35
ライナー・オスター(オルガン、指揮)
アンサンブル・パルランド
(duetsche harmonia mundi 88843021622-4)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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