かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ 作品集5

今月のお買いもの、平成28年1月に購入したものをご紹介しています。シリーズでカール・フィリップエマヌエル・バッハの作品集収録曲をご紹介していますが、今回は第5回目として第5集を取り上げます。

第5集に収録されているのはオルガン・ソナタソナタと言う場合、ピアノと他の楽器とのセッションであり多楽章の物を指しますから、この場合はオルガン独奏という事になります。

ピアノ・ソナタが同じ時代にハイドンモーツァルトによって作曲されていた時代に、カール・フィリップはオルガンのためのを作曲したという事になります。オルガン曲と言えば、大バッハの圧倒的な迫力の作品をどうしても想像してしまいますが・・・・・

このカール・フィリップのものは圧倒的なものを持っていると言うよりは、オルガンの音色を最大限引き出しながら、世俗作品として洗練させようとしていると言えるでしょう。

収録されているのは、Wq70-3〜-6までで、Wq70の6つのオルガン・ソナタから4つを取り上げているという事になります。本来なら番号通りに収録されているといいなと思うのですが、残念ながらそれはかなわず、順番は4、3、6、5となっています。ただこのWq70というのは面白い作品で、前奏曲が付いており、それはWq70-7となっています。

つまり、カール・フィリップとしては、父大バッハのような組曲風にしたかったのではないかと思います。3〜6を取り上げているのには理由が感じられ、この4つは1755年の作曲なのです。7の前奏曲が1756年、1と2が1758年と、実は一番新しいのですね。

そうなると、順番に演奏していないのも少し納得できるかなと思います。つまり、この4つは必ずしも連作として作曲されていない、という事になるからです。それなら。番号順でなくても納得できるという事になります。ただ、それが正しいのかはブックレットなどではわかりづらく、はっきりと断言はできません。少なくとも、これら7つを一気に一度に作曲したのではないという事だけはたしかです。

だからこそ、ソナタではあるが、組曲としての側面を与えたかったのではないか・・・・・・それが私の推測です。1755年と言えば、父大バッハがなくなってまだ5年しかたっておらず、時代としてはバロックから多感様式への移行期とも言うべき時代です。ハイドンがピアノ・ソナタを作曲しはじめたのが実はこの時期で、最初とされている作品は何と1750年、つまり大バッハが死去した年なのです。

このオルガン・ソナタはまさに、ハイドンがピアノ・ソナタを作曲し始めた時期に作曲されており、なおかつ、父大バッハ死去からそれほど立たない時期でもあることが注目点だと思います。時代は大きく動き始めていました・・・・・

全て3楽章という古典的な楽章構成、そして大バッハを彷彿とさせるような壮麗な旋律だけではなく、もっと世俗的な部分も加わった作品として仕上げている点からは、カール・フィリップ自身も新しい時代の到来を感じていたことをにおわせます。その御年、41歳。その年で新しいものへ対応しますか!という驚きは隠せません。もしハイドンがこれを知っていたとすれば、なぜハイドン交響曲においてモーツァルト的なものを取り入れようとしたのかも、納得のように思います。モーツァルトの素晴らしさへの尊敬だけではなく、先輩カール・フィリップへの畏敬もあったとみるほうがいいのかもしれません。

演奏は第3巻でも名を連ねていた、ライナー・オスター。どうやらそもそもは第4巻と第5巻は単独のリリース当初は組み物だったらしく、装丁にはアンサンブル・パルランドの文字も入っていますが、実際にはオルガン・ソナタなのでオケは登場しません。ライナー・オスターの実直な演奏は、カール・フィリップの作品を誇大化せず、その特色をじっくりと聴かせてくれます。だからこそ、壮麗なダイナミックスさがあるかと思えば、実に可愛らしい部分も存在することを、私たちに如実に教えてくれます。

オルガンにチェンバロというのはバロック的なソリストですが、だからと言ってカール・フィリップの作品をバロックとして扱うのではなく、ただ一つの作品として扱った結果、実に過渡期の作品であることを語っているのです。その上で、これら4つの作品には素晴らしさがあり、オルガン作品と言えば大バッハと決めつけないでほしいという願いすら、わたしには受け取れるのです。

その意味では、わたしはこのボックスを買うことを選択して本当によかったと思っています。図書館では他にプーランクメシアンのオルガン曲も借りてきていますが、それらを聴くとオルガン作品の概念ががらりと変わります。大バッハの作品が持つ、ともすればキリスト教の圧倒的な力の誇示のよう部分を彷彿とさせるのがオルガン作品だと認識するのは間違いだと思うのです。確かに、最大の数オルガン作品を作曲したのは大バッハかも知れませんが、それがすべてではありません。時代が下るにつれ、教会の力は衰え、少なくとも政治的にはあまり影響力を持たなくなります。それにつれて市民階級が台頭するわけですが、それにつれて作られる音楽も変質していきます。

オルガン作品も例外ではないのです。その点を見誤ると、本質を見誤るような気がするのです。このカール・フィリップの作品を聴きますと、その認識は間違いではないという事を、強力に認識し直すことができます。その点で、購入したのは間違いなかったと、感謝する毎日です。




聴いているCD
カール・フィリップエマヌエル・バッハ作曲
オルガン・ソナタイ短調Wq70-4
オルガン・ソナタヘ長調Wq70-3
オルガン・ソナタト短調Wq70-6
オルガン・ソナタニ長調Wq70-5
ライナー・オスター(オルガン)
(deutsche harmonia mundi 88843021622-5)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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