かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:フィルハーモニックコーラス 10周年記念第5回演奏会を聴いて

今回はコンサート雑感をお届けします。平成28年2月21日に新宿文化センターにて行われました、フィルハーモニック・コーラス第5回演奏会を聴いてのコンサート評です。

はい、予告通り、会場へ馳せ参じました。しかも、元合唱団の友人と共に・・・・・

フィルハーモニック・コーラスに関してはこれまで2回このブログでも取り上げています。

コンサート雑感:フィルハーモニック・コーラス チャペルコンサートを聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1062

コンサート雑感:フィルハーモニック・コーラス第4回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1228

第4回の時に、次は第九をやるということで、今回かなり楽しみにしていました。実力もありますし、さらに私の事情としては、昨年末一つも第九を聴きに行けなかったという・・・・・

前日はまるで遠足前の小学生のように眠れないのではないかと思っていましたが、実は私、現在体調不良でして・・・・・当日もぜいぜい言っている始末。

這ってでも行く・・・・・・その一念で、起きていることは出来ませんでした。神様に感謝ですね。

さて、今回の演目は次の通りです。

�@ヘンデル:ジョージ二世の戴冠式のためのアンセム
�Aベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」

此れだけ見ると、前プロは大したことないと思う方もいらっしゃると思いますが、実はこの前プロ、時間にして40分前後かかる大曲なのです。

ジョージ2世の戴冠式アンセム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B82%E4%B8%96%E3%81%AE%E6%88%B4%E5%86%A0%E5%BC%8F%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A0

第1曲「司祭サドク」になぜ色がついてリンクが張ってあるかと言えば、実はこの曲、サッカー好きの人にはよく知られた作品なのです。なぜなら、UEFAチャンピオンズリーグ賛歌へと編曲されているからです。

UEFAチャンピオンズリーグ・アンセム
https://ja.wikipedia.org/wiki/UEFA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A0

UEFAチャンピオンズリーグをよく見る方は、あああれか!とすぐわかるはずです。その原曲が、今回の前プロであった、ヘンデルの「ジョージ2世の戴冠式アンセム」なのです。

その「司祭サドク」は第1曲目。私も実はUEFAチャンピオンズリーグはたまに見るほどのサッカー好きなので、聴き慣れた曲が出てきた!と小躍りました。それよりも・・・・・

オケと合唱団が、なんと軽く美しいのでしょう!それでいて、決して軽薄ではなく、むしろ荘厳な雰囲気が充分表現され、ヘンデル戴冠式に込めた想いすら伝わってきます。

隣からは疲れていたようで寝息が聞こえてきましたが・・・・・でも、いいんです。それだけ、気持ち良い演奏が、発声が、きちんと客席まで届いていたということなのですから。ちなみに、私が座ったのは2階席の、舞台から見るとやや左の、2列目です。

そこまで軽い発声がきちんと届いているんです。これは全ての合唱団の方に参考にしてほしいのですが、どんなに力を入れても声は遠くまで飛んでいきません。力を抜いてこそ、声は飛んでいくんです。後は息のスピードなどでコントロールすれば、きちんと力強い声が客席まで届きます。

このヘンデルでは、フィルハーモニック・コーラスさんが見事に「軽い発声程声は遠くへ飛ぶ」ということを証明してくれたと思います。本当に素晴らしかったです。そのお隣さんも唸っていました。舞台へ降りてこれだけ発声が素晴らしいことに。

そして第九ですが、やはり、第九という作品は難しいよなあと感じさせられました。ヘンデルで素晴らしい演奏をしたオケ、合唱団が苦労している・・・・・

まずオケですが、第1楽章は緊張感がありとても素晴らしかったのですが、第2楽章でごちゃごちゃしてしまった部分があったのが「とても」残念です。ほぼプロと言ってもいいオケが、まるでアマチュアオケ(10年ほど前の宮前フィルのレヴェル)だったのですから。

第3楽章でもそれは存在し、途中のカンタービレの部分で第1ヴァイオリンのアンサンブルが合わない。第2はあっているのに・・・・・・アインザッツが決して弱くないだけにとても残念でした。ホルンも素晴らしかったのに・・・・・・少し、力が入っていたかな〜と思いました。

恐らく、第九をやるということで、かなり団員を集めたのでしょう。第2楽章のごちゃごちゃはそれで理解できます。ただ、第3楽章はファーストって、コンサートマスターボウイングに合わせるんじゃん、と・・・・・

勿論、全体としては指揮者に合わせるんです。でも、もし指揮者が熱くなった時、それに対応するのはコンサートマスターです。そのコンサートマスターが存在する第1ヴァイオリンが合わない・・・・・

考えられる理由は一つ。感情に流されてしまったんです。そう、それだけ、他のパートががんばっていたんですね。それを聴いて、思わず熱くなってしまい、指揮を見るだけの冷静さが失われたとしか判断できません。というか、それが第九という作品が持つエネルギーであり、魅力なのです。

よく私がコンサート評、或はCDの演奏評で「情熱と冷静の間が素晴らしい」というのは、そのバランスを必至に取っているからなんですね。第九という作品は内包するエネルギーが半端なく、人の魂に訴える作品なので、演奏者としてはだからこそ距離を取り、いかに感情に流されずに演奏するかが目標になります。勿論、所謂60年代のクレンペラーなどの大巨匠達のように流されつつも距離が取れている演奏もありますが・・・・・

共依存が強い日本人では、そのような演奏は私は難しいだろうと思っています。いかに感情に流されずに演奏しきるか・・・・・そこに傾注するほうが、結果熱い演奏が実現できると思っています。

第3楽章の途中からあってきたのにはほっとしました。その後、第4楽章は問題なかったからです。

ティンパニは素晴らしかった!硬く鋭い音は第九にぴったりだと思います。他のパートもそうでしたが、本当にいい仕事しました。

さて、第4楽章。その素晴らしいティンパニ連打で始まり、やがて歓喜の旋律が、低音部から顔を出しますが、実はオケの日ノ出フィル、古典的な編成なんですね。しかも、合唱団もそれに合わせて古典的に、客席から見て右からソプラノ、アルト、テノール、バスと並んでいるわけなのです・・・・・

これは中大混声が同じ第九で杉並公会堂にて舞台へ降りてきた並みのチャレンジだと思い、ワクワクしました。なぜなら、フィルハーモニック・コーラスさんは決して大人数の合唱団ではないからです。

http://ph-ch.com/

下手すれば、中大混声よりも人数少ないんです。だからこそ同じように日ノ出フィルさんも室内オケより少し大きめの編成です。その人数で、つまり男声がいつものように(どの合唱団でも)少ないのに、女声に挟まれず端に陣取ったのです。これは女声が2パート、特にソプラノが入った時、男声がかき消されることを意味しています。

第208小節。それまで座っていた合唱団が立ち上がりますが、実はこの時点で私の涙腺はすでに全開で、その前のオケの部分からすでに泣いていました・・・・・あの、歓喜の旋律がユニゾンで演奏される部分から。

昨年は、私自身もチャレンジの年だったんです。仕事を二つに増やし、なおかつ新しいことに挑戦しつづけた一年でした。その過程が走馬灯のようによみがえり、様々な縁に恵まれた昨年を思いだせば、泣くしかなかったんです・・・・・

ソリストが最初は調子が悪かったですが、合唱団がすべてを帳消しにしました(というより、恐らく合唱団の素晴らしい演奏にソリストが引っ張られました。ここも「情熱と冷静の間」が大切な部分です)。やはり、フィルハーモニック・コーラスさんは素晴らしい!コンサートごとに実力をつけ、それはまるで甲子園初出場のチームが成長しながら優勝していくのに似ています。その姿を見るだけで、勇気をもらい、それゆえに魂が震えるのですね。それが涙へと繋がったのです。

軽くかつ力強い発声は、ヘンデルベートーヴェンでも変ることがありませんでした。それが素晴らしいのです。第九という作品は私が何度も歌った経験から言えば、どうしても体に力が入ってしまい、どこかで発声がおかしくなるものなんです。それが全くありません。それだけも感動ものです、元合唱団員とすれば・・・・・

その上で、この演奏は変態演奏と判断したいと思います。なぜなら、これは素晴らしかった点なのですが、ほぼ間違いなく、vor一拍につきGott!が5拍で、後の一拍以上が残響だったからです。指揮した河地先生の解釈でしょうが、本当に素晴らしかったです。まるで人間が「自分を超えた大きな力」へ祈るような印象を持たせたからです。人間の生命と、しかし謙虚さが同居した瞬間でした。

その後の男声合唱も軽く力強い!惜しむらくは、テノール・ソロが弱かったこと。もう少し力強ければ、私などはもう泣いてしまいます・・・・・そこから、練習番号Mまでは。

しかし、そうはならなかったことは残念というか、それもまあ、アリかなと思いました。でもやっぱり、Mではもう涙腺を止めることは不可能でした・・・・・

男声が聴こえない、でも、無理に出そうとはしていないのがはっきりと聴き取れたからです。それはつまり、決して発声で無理をせず、あくまでも軽く声を飛ばすことだけに傾注していることを意味します。それが元合唱団員だからこそビンビン伝わってくるんですね。その努力に感動しないわけがないですよ・・・・・一番、合唱団が体に力を入れてしまうところなんですから。

最後までそれは徹底されており、二重フーガではテノールがしっかり聴こえてくるくらい。つまりきちんと声が飛んでいるんですね。合唱指揮の先生がよほど素晴らしいのだと思います。尊敬します。二重フーガ終りで男声から女声へと受け渡す部分はよくしゃべっており、歌詞がはっきり聞き取れたのも素晴らしかったです。

最後の「抱きあえ、いく百万の人々よ!」の部分ではしゃべっている感じではなかったですけど、でも不満は感じませんでした。恐らく美しくレガートでという指示があったのだと思いますし、実際それで不満がないという事は、それだけ実力をつけたことを意味しますから。ただ、しゃべってもいい演奏ができる力はあるので、もし次歌うことがあれば「しゃべる」ことにチャレンジしてほしいですね。

唯一の残念な点は、今回も、ffとppの差があまりなかったことです。大きなホールでやりたいんでしょうけれど、もう少し小さい箱(例えば、東京世田谷近辺であれば、杉並公会堂や中野ゼロホール、或は三鷹市芸術文化センターや府中の森芸術劇場ウィーンホールなど)を選択するということもあっていいと思います。新宿文化センター大ホールという、わたしもモツレクで歌ったことのある大きなホールできちんと声が飛ぶのですから、次は表現力ではないかなあと思います。ヘンデルではできる兆候が随所にありました。私は必ずできると信じています。

私がモツレクを歌った時には、多分合唱団員は200人を超えていたと思います。今回はそれよりずっと少ない人数で、恐らく私がモツレクを歌った時以上に充分声は飛んでいるんです。是非とも検討して頂ければと思います。

本当に素晴らしい演奏を受け取ることができ、幸せでした。みずからの体の不調を直す勇気も下さいました。この演奏会にたずさわったすべての方に感謝したいと思います。まだ次の予定は決まっていないようですが、予定が合えば、次のコンサートも足を運びたいと思います。成長した姿を見に・・・・・必ず、生きて。




聴いてきた演奏会
フィルハーモニック・コーラス 10周年記念第5回演奏会
オルグ・フリードリヒ・ヘンデル作曲
ジョージ2世の戴冠式アンセム
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
弓田真理子(ソプラノ)
田辺いづみ(アルト)
田 大成(テノール
青戸 知(バリトン
河地良智指揮
日ノ出フィルハーモニー管弦楽団
フィルハーモニック・コーラス

平成28年2月21日、東京新宿、新宿文化センター大ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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