かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:クラヴィコードの世界~秘められた音楽領域を探る~

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はちょっと変わったところが出しているCDをご紹介します。クラヴィコードの演奏を収録したアルバムです。

そもそも、クラヴィコードと言われてピン!と来る人は少ないのではないでしょうか?これもチェンバロの別の呼び名?と思ってしまったとしても不思議はありません。そもそも、チェンバロ用の作品はほとんどクラヴィコードで弾けてしまいますので。

けれども、れっきとした別の楽器です。特にクラヴィコードはその構造がピアノに似ているため、フォルテピアノが出るまでチェンバロを代替えする楽器としての位置づけであり、オルガン練習用としてもつかわれました。

ja.wikipedia.org

弦を叩く構造なので、ピアノの原型だと言ってもいいかもしれません。そんな楽器を演奏するのが日本人で、さらにそのロケーションが日本であると言ったら、驚かれるかもしれません。音大ならともかく、そこは市立の博物館だと言ったら、さらに驚かれることでしょう。そのロケーションこそ、このCDを手掛けた博物館、浜松市楽器博物館なのです。使われているクラヴィコードももちろん、浜松市楽器博物館所蔵のもので、1788年、ストックホルムにてP.リンドホルム制作のA=415Hzのものです。

www.gakkihaku.jp

特殊な楽器は大抵、音大にあるのが日本ですが、この浜松市楽器博物館は、そもそも浜松がカワイやヤマハのピアノ工場が多くある関係で設立されました。浜松には駅前にアクトシティのホールがありますが、それもそんな関係です。特に浜松駅は昔貨物ヤードが存在したため、その跡地が広く使えるという点が、さらに現代において音楽関係の施設へと転用できた理由でもありました(同じケースが、ミューザ川崎です)。

特に、世界の珍しい楽器のコレクションは実に豊富だと言われています。私自身も何時かは行きたいと思っている博物館の一つです。学芸員の資格は持っていますので、もし空きがあればできれば就職してもいいなあとすら。

クラヴィコードはそれほど大きな音が出ませんので、小さなホールでの演奏に向いています。実際このCDでも、アクトシティ浜松の音楽工房ホールという小さなホール(実際は楽器博物館の研修交流センター)で収録されています。

www.actcity.jp

収録されているのは、ハイドンカール・フィリップエマヌエル・バッハの作品。ハイドンは古典派ですし、カール・フィリップハイドンよりはもう少し前のギャラント期。そのどちらでも違和感ないんです、演奏を聴いていて。特にハイドンは現代ならピアノで演奏される作品を、クラヴィコードで弾いてみるという試み。どちらもクラヴィコード用に作曲されたんじゃないの?と思わんばかりです。

その推測は当たらずも遠からずで、ハイドンカール・フィリップは結構クラヴィコードでの演奏を念頭に置いて作曲したケースがあったことが確認されています。であれば、そん色ないのは当然なのですね。

カール・フィリップの「クラヴィコードに別れを告げるロンド」はそもそもが「ジルバーマンのピアノへ別れを告げるロンド」と言われており、当時のオルガン職人でありフォルテピアノも手掛けたジルバーマン制作のクラヴィコードへの愛が込められている作品。歌う演奏がその哀愁を増加させます。

その演奏するのが、宮本とも子。フェリス女子大の教授だった人でもあり、長年日本でクラヴィコードを広めてきた人でもあります。そんな人が愛情をこめて、まさに歌い上げるんです。確かにピアノに比べればまだまだな感じがありますが、ピアノに似た構造を持つからこそ、まるでピアノのように演奏もされ、だからこそ小さなアコーギクを多用して、自らの「歌」を歌うその演奏は引き込まれます。

音質という点でも優れており、今回ソニーのMusic Center for PCでDSEE HXをきかせてハイレゾ相当で聴いていますが、まるでホールにいるみたい!浜松市楽器博物館はこういったシリーズを手掛けており、このCDも実はその23番目。ぜひともこのシリーズは続けていただきたいと思いますし、できればハイレゾで配信していただけると嬉しいかなと思います。

 


聴いている音源
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲
ソナタ ト長調Hob.XVI:6
ソナタ ハ長調Hob.XVI:48
カール・フィリップエマニュエル・バッハ作曲
クラヴィコードに別れを告げるロンド
ソナタ ハ長調Wq62/210
宮本とも子(クラヴィコード

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。