かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:三善晃「唱歌の四季」髙田三郎「水のいのち」上田真樹「夢の意味」石井歓「風紋」

今月のお買いもの、令和2(2020)年9月に購入したものをご紹介しています。三善晃の「唱歌の四季」をはじめとした、日本人作曲家の合唱曲を収録したアルバムです。e-onkyoネットストアでの購入で、もともとはDSDでの出版のようですが私はflac192kHz/24bitのものをDLしました。

このアルバムを購入しようと決めた理由は、第2曲目の「水のいの」にあります。これはすでに作曲家本人の指揮、神戸中央合唱団の演奏で持っていますが、いかんせんこの名盤のみが録音という状態が長く続いていました。そこに、別の指揮者による解釈が登場したこと、そしてこの演奏がすべてオーケストラ伴奏である、ということです。

唯一オーケストラではないのが、最後の曲「風紋」。これはそもそもが無伴奏であるためですが、それ以外はすべてオーケストラ伴奏。しかも指揮が飯森範親、オケが東京交響楽団、合唱団が東京混声合唱団と、これも比類なき組み合わせ。特にこの組み合わせで、「水のいのち」が演奏されるという点にこそ、魅力を感じたから、なのです。

第1曲目の三善晃唱歌の四季」は、知られた唱歌である「朧月夜」「茶摘」「紅葉」「雪」「夕焼小焼」の5つを、四季感を感じられるように編曲したものです。ですから三善がやったのは編曲ということになりますが、原曲はピアノ伴奏。それをさらにオケ版にしたのが今回のもの。一見あれ?と思わせるのが「雪」で、雪がこんこん降っている序奏なのに、なぜか歌はアップテンポ。これを効くと単に四季感を出そうとしただけではなく、むしろその雪を楽しむ様子すら、しっかりとアレンジされていることが明確です。こういった点も、この曲の聴きどころ。

第2曲目の髙田三郎「水のいのち」。ピアノ伴奏を弟子がオケ版に編曲したものですが、これが見事!むしろピアノ伴奏よりも優れた描写となっている感すらあります。特に第3曲「川」は圧巻!第5曲「海よ」では泣いてしまいます。

第3曲目の上田真樹「夢の意味」も、もともとはピアノ伴奏。しかもこのアルバムの合唱団である東京混声合唱団による委嘱作品。そのせいか、かなり合唱団も気合十分!

ja.wikipedia.org

第4曲目の石井歓「風紋」。石井は弟に作曲家石井眞木を持ち、父も舞踏家という芸術一家。男性を表す風と女性を表す砂の対話の鋭さ、そして歌詞を書いた岩谷時子(!)のセンスの良さ。合唱団もオケも、その二つが絡み合う様子を真摯に表現。

演奏は、特に第2曲では作曲者とは異なる部分もあり、一見するといやあ、それではないよと突っ込みたくなりますが、全体から見ればそれもまた一つの見方なので、特段問題にするようなものではないです。むしろ、新たな解釈がようやく出てきたという点で、エポックメイキングなことです。髙田作品はもっとこのようなアルバムが出てきてほしいと願っています。東京混声の表現力はさすがです。これも作曲者指揮の神戸中央と比べると熱量は下がると思います。しかしながら、むしろ熱量がないからこそ、詩の内容をいかにしてプロとして表現するのかに重点が置かれていて、最後の「海よ」のクライマックスはさすが!

むしろ、意外と難しいのが三善晃の「唱歌の四季」ではないかと思っています。たしかにもともとは唱歌なんですが、ところどころ三善がいれた部分があり、最後のハミングはさすがの東京混声合唱団が息継ぎが苦しいのが見え見え。ハイレゾ192kHz/24bitだからこそ露呈した部分でしょうが、プロでも難しい作品というのは日本の合唱曲ではままあります。そんな曲を、日本はアマチュアが普通に歌っているんですよ!

それを、日本は芸術は資本主義に合わないとか言って、職場合唱団は潰し、市民合唱団にも偏見の目で見てきました。しかし、日本の合唱運動は大変すばらしく、真摯で芸術的価値があるものが多いのが実情です。むしろ日本の合唱活動はアマチュアが支えてきたと言っても過言ではありません。

そんな中でも、プロ合唱団である東京混声合唱団は、プロらしい活動を続けてきた稀有な団体です。決して第九を歌ったりはしませんが、日本の合唱曲をアマチュアと共にけん引してきた功績は多大なものがあると言っていいでしょう。この合唱団は日本の誇りです。もちろん、アマチュア合唱団も。

そして、プロオケである東京交響楽団。その柔軟かつ力強いアンサンブルはしっかり各作品を支えています。タクトを振る飯森氏も、決して作曲家の解釈だけにとどまらず、作曲家を尊重しつつも自分の解釈を入れている点も、自律した芸術家として優れた点だと思います。

こういった日本の合唱曲を、エクストンもどんどん出してほしいと思います。ビクターのアマチュア合唱団演奏もすばらしいライブラリですが、エクストンはむしろオケ伴奏ではどうなるか?という視点でどんどん出してほしいものです。

 


聴いているハイレゾ
三善晃作曲、鈴木輝昭編曲
混声合唱とオーケストラのための「唱歌の四季」
髙田三郎作曲、今井邦男編曲
オーケストラと混声合唱のための「水のいのち
上田真樹作曲
混声合唱とオーケストラのための組曲「夢の意味」
石井歓作曲
無伴奏混声合唱のための「風紋」
奥山陽子(ソプラノ)
秋島光一(テノール
千葉弘樹(テノール
徳永祐一(バリトン
東京混声合唱
飯森範親指揮
東京交響楽団
(Exton ovcl00464 192kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。