かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト 交響詩全集3

さて、今月から予定通りアップできるかと思いますが・・・・・どうでしょう。また難しくなりましたら、お休みするかもしれません。

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ブリリアント・クラシックスから出ているリストの交響詩全集を取り上げていますが、今回はその第3集を取り上げます。

作曲順に収録されているこの全集の第3集で取り上げられているのは、8番目の交響詩である「英雄の嘆き」、第9番目である「ハンガリー」、そして第10番目である「ハムレット」です。

「英雄の嘆き」は、原語の意味からしますと「英雄の葬式」とでも訳せる作品でして、革命に死した人たちを悼む作品だと言えるでしょう。

英雄の嘆き
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%B1%E9%9B%84%E3%81%AE%E5%98%86%E3%81%8D

本来は交響曲の一部とする構想であったようで、そのためこの作品はウィキでは「7月革命の理想を盛り込んだ作品」と書かれていますが、Héroïde funèbreとなっているようです。

その意味では、ベートーヴェン交響曲第6番と第9番をミックスしたような作品にしたかったのかもしれません。アレグロではなく、葬送行進曲風であることを鑑みますと、後年のリヒャルト・シュトラウスが作曲した「交響曲」を考えていたように思います。

リストの交響詩がだれに大きく影響を与えたかと言えば、実はリヒャルト・シュトラウスです。リヒャルト・シュトラウス自身はブラームスと親交が深かった作曲家ですが、リストから連なる前衛音楽の流れには敏感でした。

リヒャルト・シュトラウス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%B9

リストが形式無視だったわけではないのですが、交響詩というものが、決して形式にとらわれないという点で、形式無視とも言えるでしょう。だからこそ、この交響詩というものは、後期ロマン派において、リヒャルト・シュトラウスの時代になって前衛的なものを表現する一つの方法となったことは間違いないでしょう。

そして、その交響詩がどのような役割を果たしていったのかという歴史をみる時には、さらにもう一つの交響詩の傑作である、スメタナの「わが祖国」を挙げないわけにはいかないでしょう。リヒャルト・シュトラウスが「交響詩」や「何とか交響曲」を書いたのには、実はそのアンチという側面もあるのです。それは、ナショナリズムです。

1曲目の「英雄の嘆き」は、フランス7月革命に共感したリストの、ナショナリズムだったり、或はリベラリストとしての側面が大きく働いていると言っていいでしょう(時代もそういった時代でした)。それがナショナリズムに大きく舵を切ったのが、2曲目である「ハンガリー」です。

ハンガリー (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BC_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

一方で、ナショナリズムに囚われない作品が、3曲目の「ハムレット」です。

ハムレット (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%A0%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

この第3集に収録された作品群は、作曲順とは言え、その後の作曲家にどういった影響を与えたかということを考えるに、大きな示唆を与えてくれる作品がずらりと並んでいるのです。ナショナリズムとリベラルに傾倒したスメタナと、リベラルの方向のみを目指したリヒャルト・シュトラウス。それは時代を映すものでありました。

19世紀のヨーロッパを席巻した、リベラリズムナショナリズム。それが音楽に凝縮されているのが、この第3集、いや、リストの交響詩全体に言えることでしょう。

演奏はその意味では、多少物足りない部分もあるのではないかと思いますが、特にナショナリズムが「酔い」を誘発しやすいという点を鑑みますと、端正な演奏はむしろ、冷静に作品とその背景をみることが出来るとも言えるでしょう。いや、その「酔い」への反省というか・・・・・

多分、「前奏曲」での私の物足りなさ発言も、私も多少その「酔い」に巻き込まれている証左でもあるでしょう。それだけ、私自身のナショナリズムも、精査されるべきだと思います。音楽史でいえば、その反省、アンチとして新古典主義音楽が勃興したのですから・・・・・

この演奏は、物足りないかもしれません。しかし、19世紀から20世紀にかけての、ヨーロッパの歴史、そしてそれに巻き込まれた音楽史を、十分俯瞰したものだと言えるでしょう。その意味では、さすが「情熱と冷静の間」のバランスが取れた、名演だと言えるでしょう。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲
交響詩「英雄の嘆き」
交響詩ハンガリー
交響詩ハムレット
アルパド・ヨー指揮
ブダペスト交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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