かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:R.シュトラウス 管弦楽作品全集5

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズで取り上げていますリヒャルト・シュトラウス管弦楽作品全集、今回はその第5集を取り上げます。

ワーナー移管後は第1集となっているこの第5集は、2つの交響詩ツァラトゥストラかく語りき」と「死と変容」、そしてオペラ「バラの騎士」からワルツが収録されています。

え、交響詩にいきなりオペラ?と思うかもしれませんが、この全集はあくまでも「管弦楽作品」の全集です。これも大いにアリ、というわけです。

リヒャルト・シュトラウスは嫌いじゃないのに、管弦楽作品を聴いてこずに来た私にとって、この第5集も初めてずくしの内容です。聴いたことのあるのは「ツァラトゥストラかく語りき」のみ。あとの二つはほぼ初めてと言っていい作品、なのです。

で、聴いてみると・・・・・おやおや、この「ツァラトゥストラ」のテンポの速いこと!これには何か意味あるぞ、と直感しました。私としては朝比奈/大フィルのゆったりとしたテンポで聴きなれてきていますので、それとは違うということは何かメッセージがあると。

一方の「死と変容」は朝比奈さんのようにゆったりしたテンポでひたすら壮大さを追求する演奏になっているんです。そしてその差にこそ、メッセージがあると考えたのです。そして、おそらくそれは、二つの交響詩の成立の差、だと思っています。

ツァラトゥストラかき語りき」は、ニーチェの原作にインスピレーションを得て作曲したものですが、「死と変容」にはそもそも原作がないんです。

ja.wikipedia.org

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まるで、「ツァラトゥストラ」は一緒に原作を読んでいるかのように進んでいく印象があるんです。まるで一気読みしているかのような。だからこそアップテンポ気味になっているのであれば、確かにこのテンポはありだと思います。こういうところのケンペの深読み、うなります。

一方の「死と変容」は、若きシュトラウスの内面をえぐった作品とも位置付けることができます。そうなると、じっくり演奏する・・・・・ここでもケンペの深読みが冴えてるなあって思います。まさに「死と変容」は、「英雄の生涯」と同じく、自らを表現したものでもあるからです。こんな風に死にたい・・・・・病弱だった若きリヒャルト・シュトラウスの内面が浮かび上がります。

どちらも、私としてはとても共感できる演奏になっています。確かに、本を読んで共感しているときの私の脳の中って、おそらくもういろんなことがつながり始め、フル回転している状態。それを表現するのにアップテンポなんだな、と。むしろ逆に死の恐怖におののいている自分はそこまで脳がフル回転しているだろうかと考えれば、そうでもないよなあ、と。

人の「内面性」というとき、それが体のどこを指すのか、です。では「人の内面性」とは?と考えたとき、魂とか精神とは表現しますが、実際的に物理的に表現するとすれば脳内としか言えないわけです。科学的に言えば、すべて人間が考えるとは脳が判断しているということになるからです。

であれば、脳内妄想という視点で解釈するのは、当然アリだということになります。だからこそ、このケンペの解釈にうなるんです。こういう科学的な解釈を、クラシック畑の人たちは避けるんです。その代表選手が朝比奈隆です。しかしケンペは内面性を表現するためにあえて科学的視点を採る。ここが、文系と理系どちらにも興味がある私にとっては、楽しくて興味深い点なんです。だからこそ、ゆったり目で鳴れてきたw私にとって、新鮮で素晴らしい演奏になっています。

その二つを聴いた後の、「ばらの騎士」。有名すぎるワルツも私にとっては初体験。確かに旋律的ではありますが、かといって当時の評論家がこき下ろすほどか?って思います。ケンペもその視点ではないかなあって思います。いやいや、その後登場する12音階などに比べれば全然リヒャルト・シュトラウスの音楽であくまでも後期ロマン派でしょ?って思うからです。それをわかっていたのはむしろ聴衆だったのではないかなあって思います。

そのうえで、検索して初めて知る、「ばらの騎士」というオペラの批判精神です。本当に日本はそういう点をすっ飛ばすんですよねえ。多分、そもそもクラシック音楽を聴いているのが日本では支配層に多いからなんだと思いますが・・・・・しかし、作曲した当時のウィーンなどでは、必ずしも支配層とは限らず、市民階級が聴いているわけです。むしろ支配層からすればクラシック音楽を聴いている市民なんて恐怖でしかなかったのではないか?って思います。

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この批判精神を知っていれば、私はこれ以前に絶対一度オペラ全部を見ているよなあ、って思うと残念です。今からでも、DVDで全部見たいなあって思います。それほど、「ばらの騎士」に対する興味はこの演奏で深まります。確かにワルツだけど、ん?どこか変だよこれ・・・・・そう、後半になってようやくウィンナ・ワルツになってくる感じで、前半はとてもワルツだと思えないんです。しかしそれこそ、作曲者の批判精神だとしたら、もう喝采するしかないんですよね。素晴らしい!

むしろ、このオペラを「批判精神」とは解説しないNHKのオペラ放送こそ、犬HKと呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

 


聴いている音源
リヒャルト・シュトラウス作曲
交響詩ツァラトゥストラはこう語った」作品30
交響詩死と変容」作品24
オペラ「ばらの騎士」作品59より ワルツ
ルドルフ・ケンぺ指揮
シュターツカペレ・ドレスデン

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