かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:ピエルネ ピアノ五重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ピエルネのピアノ五重奏曲とヴァイオリン・ソナタを収録したアルバムをご紹介します。

ピエルネは、19~20世紀にフランスで活躍した作曲家です。とはいえ、あまり聞かない作曲家ですよね。勿論私も知っていたわけではなく、初めて知る作曲家です。ただ、こういうい人の作品を聴いてみようという冒険ができるのが図書館のいいところ。仮に気に入らなくてもむだになるのは図書館までの交通費だけですし、CDも一枚だけしかということはないので、ハズレであったとしても実害はないようなものです。

このアルバムに関しては、アタリだったと言えます。ピエルネはマスネに師事した人であると同時にコロンヌ管弦楽団の指揮者としても活躍した人で、当時の作曲家たちの作品の初演を手がけたりした人でもあります。作品も結構多く、ただ私たちが知らないだけ、なんです。

ja.wikipedia.org

特にCDの実店舗が減った昨今、ピエルネのような作曲家には出会いにくい状況です。ネットって自分の興味あるものしか検索しませんから。それは合理的である一方、無駄が廃されることから自分の興味の外のものを排斥します。そのため、「自分の知らない世界」を経験しにくくなるのです。図書館の役割とは、このような時代にあって、自分の興味の外にあるものを体験できるようにすること、だと思います。その意味でも、私はツタヤ図書館のような商業主義が前面に押し出されることには反対です。その商業主義を何のために使うのかという哲学こそ、重要なはずだからです。商業主義によって資金が潤沢になって、図書館が本来の目的を果たすことができるようにすることのほうがより重要なのです。そこを見誤っている論評は枚挙にいとまありません。

このアルバムには、ピエルネのピアノ五重奏曲とヴァイオリン・ソナタが収録されています。ネット検索ではヒットしませんが、CDDBのデータでは、ピアノ五重奏曲が1917年、ヴァイオリン・ソナタが1900年の成立とあります。ちょうど世紀の変わり目という時期ですね。クラシック音楽においても、印象派の時代から新古典主義音楽など、移り変わりが激しい時代。特に、収録された二つの作品は印象派の作品と言っていいでしょう。特にピアノ五重奏曲は、繊細さとダイナミックさを持つ作品で、演奏もアインザッツの強弱が鮮明で、生き生きとした演奏につながっています。

このアルバムでは、ピアノがユボーと名ピアニストが選択されており、洗練された作品を洗練された演奏で表現。食わず嫌いは本当にダメだよなあと、こういう演奏を聴きますと痛烈に思います。しかし、こういうアルバムは、商業主義の中では無駄のレッテルを張られてしまいます。実際、ピエルネが広く知られているかと言えば知られていないからです。しかし、フランス印象派においては、ビッグネームだけではないのだということ、そのビッグネームも、もしかすると日本という狭い領域だけで、世界ではもっと多くの作曲家が知られているということを、はっきりと知らせてくれるわけなんですよね。生き生きとした演奏の中に、作品を演奏する喜びすら感じられます。今回もPCでアプリのTune Browserを使ってリサンプリングの上で聴いていますが、録音が1980年代と新しい故なのか、非常に空気感あふれるものとなっています。そこで演奏がリアルで鳴っているかのように聞こえます。こういう聴こえ方は、たぶん他のジャンルを聴いている人にとっては不自然でしょうが、コンサートに行きなれている私にとってはむしろ自然な音です。この録音はロケーションがラジオ・フランススタジオ106ですが、そのスタジオにいるかのように聞こえるんです。それゆえに伝わってくる演奏者の想いが、この録音には感じられるのです。そしてその状態を信じて全霊で演奏するソリスト。こういう経験は素晴らしいものです。クラシック以外でライヴに足を運ぶ人が多いのは、単にアーティストに逢いたいだけではなく、その場の空気感がアルバムを聴くのとは異なるからであり、その異なることに魅力を感じているからなのでは?と思います。実際、クラシックにおいてもコンサートへ足を運ぶ人は、その会場の雰囲気を味わいたくて行くわけなんですから。それが図書館で借りて来るだけで経験できる・・・こんな幸せなことはありません。だからこそ、図書館の役割は増してきていると感じています。そのうえで、ライヴに足を運ぶ人が多くなれば、世の中はいい方向に変わっていくのではないかと、私は思うのです。

 


聴いている音源
ガブリエル・ピエルネ作曲
ピアノ五重奏曲作品41
ヴァイオリン・ソナタ作品36
ジャン・ユボー(ピアノ)
オリヴィエ・シャリエ(ヴァイオリン)
ヴィオッティ四重奏団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。