東京の図書館から、3回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、久石譲とナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェンの交響曲全集、今回はその第3回目です。第4集を取り上げます。第3集がなぜ飛んでいるかと言えば、第3集は全集でしか聴くことが出来ず図書館には入っていないためです。全集でそろえればよかったのでしょうがおそらく分売で購入したのだと思います。そのため図書館には第3集がないので借りることができなかったというわけです。私も全集をCDもしくはハイレゾで購入予定です。第1集と第2集、第4集と第九は重複になりますがしょうがないです。ちなみに飛んでしまっている第3集には第4番と第6番が収録されています。この第4集には第7番と第8番が収録されています。
①交響曲第7番
ベートーヴェンの交響曲第7番は、1811~1812年に作曲された作品で「リズムの権化」とも言われるリズムが特徴的な作品です。アニメ「のだめカンタービレ」で一躍有名になった作品でもあります。あのアニメ以降、ベートーヴェンの交響曲は有名作品以外の演奏機会も上がりました。
この演奏でもリズムは強調されており、そのためなのかテンポとしてはさほど速いものを選択していません。第1楽章はかなり速いテンポを採用してはいますが、それでもこれまで取り上げた演奏よりはあまり速く感じません。特に第2楽章以降はそれほど速いテンポとは感じないのです。他の演奏とそれほど変わるわけではありません。
むしろ聴いていて目立つのは他のパートの音。室内管弦楽団なので当たり前かもしれませんがかなりはっきり聴こえるのは珍しいです。特に第4楽章は通常の演奏を聴いている人だとこれだけ音があるのか!と驚くくらい。一人一人がソリストとしても活動しているからこそ成り立つ演奏です。まさに音が迫ってくるという感じ。圧巻です。第7番という作品にそれだけ情熱的な部分があるということを示しています。考えれば、第7番という作品はベートーヴェンが恋をしていた時期の作品で、恋人への思いのたけが詰まっている作品でもあります。久石氏の「ベートーヴェンはロックンローラー」という解釈がさらに音楽が迫るのに拍車をかけ、それこそが作品の生命、魂であると感じるほどです。
②交響曲第8番
交響曲第8番は、第7番とともに1814年に初演された作品です。第2楽章がメトロノームを考案したメルツェルのカノンを転用したと言われていますが最近はこの第8番が先でありメルツェルのカノンは弟子のシンドラーの偽作という説が有力です。
古典的な様式が見えますが随所に斬新さもある作品です。また第7番と共通するのは金管楽器にトロンボーンがないこと。その点ではやはり古典的と言えますが、久石氏はテンポとしてはこの第8番でもオーソドックスなテンポを採用しています。それでも余計な贅肉はそぎ落とされるなど、古典的な作品という姿勢を崩していません。それが生み出すのは生命力を感じる生き生きとした演奏。気品がありつつも決して偉ぶれず、爽快さもあります。
二つの演奏でさらに共通するのは、残響をうまく使っていることです。演奏としてはバサッと音を切るようにしているにも関わらず、優れた残響でそれがあまり気になりません。ホールの特性をうまく使っています。この点は久石氏の指揮者としての優れた能力です。団員がそもそもソリストとして活躍している人たちばかりということもあるとは思いますが、それでもなかなか選択できるものではありません。第8番においてはテンポとしては物凄く速いテンポを採用しているわけではないにも関わらず、かなり速いように聴こえますが、それは第1楽章だけ。第2楽章以降はオーソドックスなテンポを採用。それでも爽快さは随所に聴き取れます。それは残響をうまく使っている故です。これは音楽家としてはかなり勇気がいることです。実際私も宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」で同じような演奏を試みたことがありますが他の団員からそれは演奏としてはない、と言われたことがあります。今なら受け入れられるかもです。それだけ音をバサッと切るような演奏はあまり日本ではこれまでオーソドックスではなかったですし、さらに欧米でもそれは同様でした。
それを、久石氏は思い切って打ち破ったわけです。残響がいいホールであればそれは何ら問題ないと、演奏で証明してみせたのです。この功績はもっと評価されていいと個人的に思います。勿論今評価されていないわけではないんですが、クラシックファンの中ではいまだ古楽的と言われて卑下している人もいます。おそらくいろんな演奏を聴かず自分の好きな演奏ばかり聴いているのだろうなあと思います。ですがやはり評価するのであればできるだけいろんな演奏を聴くほうがいいと思います。そのために図書館は非常に有用な手段だと思います。
そのことも鑑みますと、できれば府中市立図書館には全集でそろえてほしかったところです・・・
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第7番イ長調作品92
交響曲第8番ヘ長調作品93
久石譲指揮
ナガノ・チェンバー・オーケストラ
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