かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:久石譲とナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集1

東京の図書館から、今回から3回シリーズで取り上げます、府中市立図書館のライブラリである、久石譲指揮ナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集、今回はその第1回です。

久石譲と言えば、指揮者よりは作曲で有名です。特にジブリ映画のサウンドトラックを作曲したことで有名ですが、最近は指揮活動のほうが主となっており、その際に自作を振るということが多くなっています。最近ではドイツ・グラモフォンとの契約で注目を集めました。

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その久石氏が指揮活動を主とし始めたきっかけが、このアルバムのオーケストラであるナガノ・チェンバー・オーケストラの母体であった長野市芸術館の音楽監督に就任したことで、自動的にナガノ・チェンバー・オーケストラの音楽監督にも就任したということになります。2019年に任期満了で退任し、同時にナガノ・チェンバー・オーケストラも活動中止となり、現在は久石氏を音楽監督としたフーチャー・オーケストラ・クラシックスへと名を変えて、主に東京オペラシティコンサートホールを拠点に活動しています。

このコンビがまだ長野市芸術館で活動していた時に収録したのが、このベートーヴェン交響曲全集です。以前第九だけを取り上げています。ゆえに今回も第九はもう一度聴いてみたという形で、このシリーズとは別建てで取り上げる予定です。

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フーチャー・オーケストラ・クラシックスでのブラームスのアルバムも取り上げていますが、それを借りた後に、ベートーヴェン交響曲全集も借りることを決断しました。なぜブラームスの後だったかと言えば、実はこの全集、図書館でも第4番と第6番だけが欠落しています。以前も触れたかと思いますが、この全集は第4番と第6番だけは全集を買わないと手に入らない仕様になっています。ゆえに探していましたと言及したこともあったかと思います。現在は全集をハイレゾもしくはCDで買う方向で検討していますが、何分どちらであっても物入りなので、今年いっぱいはきつそうです・・・

さて、この第1集では交響曲第1番と第3番が収録されています。つまり、番号順ではないということになります。これは実はハイレゾでもCDでも同じになっています。

交響曲第1番
交響曲第1番は、1799~1800年に作曲した作品です。つまりまだ18世紀の作品ということになります。それゆえハイドンなどの影響も見られますがすでにベートーヴェンの個性もしっかりと反映された意欲作だと言えます。

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久石氏は、ベートーヴェンを当時の「ロックンローラー」だと捉えており、ゆえに速いテンポでアグレッシヴに突っ走ります。それについて行くオーケストラはさすがソリストぞろいなだけ素晴らしいですし、そもそもかなり速いテンポであっても十分味わい深い表現はできるのだということを証明してしまっています。古楽的なアプローチはちょっと・・・ということで毛嫌いする人もいますが、久石氏はむしろそのテンポにこそ精神が宿るという信念をもってタクトを振っているように感じます。そもそも久石氏はミニマル音楽の作曲家であるがため、ベートーヴェンの「革新性」というものに共感し、その魂をスコアから掬い取っています。ベートーヴェン交響曲第1番という作品はこれほど熱い情熱が迸るものだったのか!と目からうろこです。それが日本のプロオーケストラで聴けるなんて、何と幸せなのかと思わざるを得ません。

交響曲第3番
交響曲第3番は、1804年に完成した作品です。ちょうどフランス革命の時期にあたったためナポレオンのエピソードが有名ですが、異説も出てきている作品です。いずれにしても時代を反映してか、第2番までよりさらに飛躍した作品となっているのは確かです。

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第2番までとは違うのでテンポ的にゆったり目で演奏するものも多い中、久石氏は「ベートーヴェンロックンローラーである」という信念をここでも貫き、速めのテンポで推し進めます。第1番も第3番も共に繰り返しもあるのに、二つ合わせて演奏時間は70分ほど。第3番に至っては45分ほどという快速ぶりです。それでも何ら不満はなくむしろそのアグレッシブさが「シンフォニアエロイカ」に相応しく聴こえます。

第2楽章は葬送行進曲なので通常はゆったり演奏されますがこの演奏では13分を切っており比較的快速です。ですがそれでも違和感がないんです。おそらくですが久石氏はエピソードに対し多少の違和感を感じているのではないかという気がします。もっと言えば、そのエピソードは半分事実で半分間違っている、あるいは日本人が誤解していると考えているのかもしれません。ベートーヴェンは境界線が引ける人だったのではないかという過程の下、タクトを振っているように感じます。 それが生み出すものは、ベートーヴェンの迸る鼓動、情熱なのです。リズムを決してないがしろにせず、しかしゆったりとした感じを受けるのに演奏時間としては快速という、アウフヘーベンを実現させています。こんな演奏を日本のオーケストラで日本人指揮者で味わえるのですから・・・

久石氏がここまで快速で、ベートーヴェンを「ロックンローラー」と評するのは、恐らく第5番までの編成にあると個人的には考えるところです。先日アンサンブル・テネラメンテさんのレビューでも触れましたが、第5番までは実はトロンボーンがありません。それだけ古典的な作品なのです。そのうえで新しいことをやっているわけですが、その新しいことが浮かび上がるのはむしろ速いテンポであるという確信なのではないかと、個人的には感じます。確かにゆったり目のどっしりとした演奏でも違和感ないですが、速いテンポでも違和感がないということこそ、革新性なのだという信念に裏打ちされた演奏です。

この演奏を聴きますと、下手に海外オケとか聴けなくなります・・・

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲

交響曲第1番ハ長調作品21
交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
久石 譲指揮
ナガノ・チェンバー・オーケストラ

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。