コンサート雑感、今回は令和7(2025)年5月18日にききに行きました、小金井市民オーケストラの第42回ファミリーコンサートのレビューです。
小金井市民オーケストラは東京は小金井市在住あるいは周辺に住む方々で構成されるアマチュアオーケストラです。
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現在私は小金井市に在住のため、最近小金井市民オーケストラさんの演奏会にはできるだけ足を運ぶようにしています。宮前フィルハーモニー交響楽団を聴きに行って現在の地元のオーケストラを聴きに行かないというのもなんだかなと思いますし。
小金井市民オーケストラさんは以前このブログでも何度かご紹介していますが、昨年の第41回ファミリーコンサートを取り上げたエントリをご紹介しておきます。ちなみに、定期演奏会は毎年秋または年末に行われていますが、第41回定期演奏会は奈良は東大寺の執金剛神開扉に足を運んだため行けませんでした。
昨年も芸術フェスティバルの時期でしたが、今年もまた芸術フェスティバルの一環として開催されました。場所は小金井宮地楽器ホール(小金井市民交流センター)。ここには小ホールもありますが当日は小ホールでダンスパーティーが行われていました。
さて、今回のプログラムは以下の通りです。
①ベートーヴェン 「コリオラン」序曲
②フォーレ 組曲「ペレアスとメリザンド」
③ブラームス 交響曲第2番
ですが実際には、0プロとしてバッハの管弦楽組曲第3番アリア(いわゆる「G線上のアリア」)が演奏されました。これは団員でもありトレーナーでかつ元NHK交響楽団ヴォイラ奏者で国立音楽大学教授でもありました渡部啓三さんを偲んで演奏されました。今年2025年2月25日に永眠されたとのことで、最後の出演がなんと昨年の第41回ファミリーコンサートだったとのことです。昨年の第41回が最後とは、なんと貴重な演奏会に私は昨年足を運んだのだろうかと思います。
⓪バッハ 管弦楽組曲第3番「アリア」
バッハの管弦楽組曲は、バッハがケーテンもしくはヴァイマル時代に作曲した作品が集められたもので、BWV番号で1066~1069まで4つが残されています。そのうち、第3番はBWV1068ということになります。ただ、これら4つは作曲当時は組曲とは呼ばれず「序曲」と呼ばれていました。オリジナルは残されていないため、それぞれの正確な成立年は判っていません。また以前は第5番も含まれていましたが、現在では長男フリーデマンの作曲である説が濃厚なため、アルバムなどでは第5番を含めたり含まなかったりします。
第3番の第2曲である「アリア」は、ヴァイオリン単独の曲として「G線上のアリア」としても有名で、弦楽器と通奏低音で演奏されるため弦楽器のみの合奏で演奏されることもあります。今回はその弦楽合奏で演奏されました(チェンバロを借りるのは高いためだと思います)。音楽が静謐であるため、「アリア」は追悼で演奏されることがあります。今回も追悼の音楽として採用されたということになります。追悼で演奏されましたので、オーケストラが入って来た時、そして曲が終った時の拍手は忌諱との案内が最初に流れました。また、黙祷して聴いてほしいとの要請もありましたので、私も黙祷して聴いておりました。また黙祷は曲が終わった後も1分ほど続き、会場に詰め掛けたすべての方が祈りを捧げておられました。
ファミリーコンサートと銘打っていますので、会場には親子連れも多く子供も数多く駆けつけていましたが、その子供たちも一人もぐずりもせず黙祷を捧げていたのは、感動すら覚えます。アマチュアオーケストラのコンサートでも、親の教育が大事だったり、アナウンス次第だと改めて気づかされました。
オーケストラも、亡き御霊を偲ぶかのように、多少やせた弦の音は聞こえて来るにせよ、美しいアンサンブルを構築しようとする意志が客席まで届いており、御霊に捧げるにふさわしい演奏でした。また故人の写真も舞台指揮台後ろに掲げられ、客席から在りし日のお顔が見れるようになっていたのも印象的。ただ、個人的にはヴィオラパートに初めから写真だけでの参加でも良かったのにという想いはあります。1プロの時には管楽器の横に移動して一緒に参加する形を採っていました。
①ベートーヴェン 「コリオラン」序曲
ベートーヴェンの「コリオラン」は、1807年に作曲された演奏会用序曲です。
「コリオラン」の物語に感動して書かれた作品であることもあり、演奏はかなり激しさに重点が置かれていましたが、所々美しさも追及されていたのが印象的。弦に痩せた音が多少聴こえて来るとは言えアンサンブルは力強くも美しく、力任せではないのが感動的です。よくある演奏は力任せのものでそれでも感動はするものですが、美しさも追及して力強さをしっかり感じられるのは表現力がある証拠。ファミリーコンサートと題しており親子連れで来られること、つまり子供もいることを念頭に置いている上で玄人好みの演奏をしてしまうのはあっぱれでした。
②フォーレ 組曲「ペレアスとメリザンド」
フォーレの「ペレアスとメリザンド」は、1898年にまず劇付随音楽として作曲され、1901年にフォーレ自身により組曲が組まれました。
このフォーレのほうがメーテルリンクの原作に忠実と言われますがそれは劇付随音楽なので当然と言えるでしょう。とはいえ、ドビュッシーと比べると多少ふんわりとした音楽になっているのも事実。それはドビュッシーが象徴主義、このフォーレは印象派であるという音楽の差によるものと言えるでしょう。
その「ふんわりとした」というところがアマチュアでは意外と難しいのですが、今回の演奏はそのあたりの表現が見事に「ふんわり」していて、それでいて最後の第4曲における感情の高まりなどの表現はじんわりとくる印象で素晴らしかったです。どうしても第3曲のシシリエンヌが有名ですが・・・そのフルートも美しく、透明感がありつつも存在感があるという、アマチュアオーケストラではかなりレベルの高い演奏でした。
③ブラームス 交響曲第2番
ブラームスの交響曲第2番は1877年に作曲されました。その曲調から「ブラームスの田園交響曲」とも言われます。
ここまで全体的には素晴らしいアンサンブルでしたが、このブラームスでは金管が多少雑な印象・・・短くという指示が出ているせいだとは思いますが、木管は美しいので、多分息の使い方だとは思います。それほど速いテンポとは思いませんが・・・もう少し速いテンポであるベートーヴェンのコリオランのほうが美しかったです。お疲れだったのかも・・・
この辺りは市民オーケストラの苦しいところ。どうしても若い人っていませんし。それでも客席で手を振っている家族連れなどもいらっしゃったので決して若い年齢の人がいないわけではないのですが、もう少しトレーナーの方が息継ぎなどを指導できればもっといいのにと思います。
それでも全体として曲を楽しみ、いつくしんでいるのが演奏で伝わってきて、聴いていてどんどん魂が喜んでくるのを感じるのです。これはさすが市民オーケストラですね~。決してレベルは低くないですし。ホールの小金井宮地楽器ホールは決して残響時間の長いホールではなく典型的な多目的ホールですが、音が温かいんです。まるで神奈川県立音楽堂みたい。そのホールを自家薬籠中のように伸び伸びと演奏するのは魂が震えました。比較的小さいホールということもありますが、思い切った演奏をしていて、音が体で感じるのです。これはいいわあ。子供さんたちもオーケストラの「音」をじかに感じて、クラシック音楽が好きになってくれるといいなあ。
その視点で言えば、子どもがいることを前提とした「ファミリーコンサート」であるのに、普通にアマチュアオーケストラの定期演奏会で並ぶプログラムを組んできたのは称賛に値します。これ、宮前フィルハーモニー交響楽団でもやってこれなかったことで、私が大田区民第九合唱団にいるときに毎年8月15日の「平和祈念コンサート」のベートーヴェン第九でようやく実現しました。それを毎年普通にクラシック音楽のプログラムを組んで行うのは本当に頭が下がります。できれば今後も続けてほしいです。
次回は11月に同じ小金井宮地楽器ホールで第42回の定期演奏会。メインはなんと、ドヴォルザークのチェロ協奏曲のようで、古典派はモーツァルトの時代のスタイルのコンサートを国民楽派の作品でやってしまおうという意欲的なもの。タイミング的におそらく他のコンサートとバッティングすることはないとは思いますが、なるべく日程を開けておこうと思っております。
聴いて来たコンサート
小金井市民オーケストラ第42回ファミリーコンサート
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
管弦楽組曲第3番第2曲アリアBWV1068
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
「コリオラン」序曲作品62
ガブリエル・フォーレ作曲
組曲「ペレアスとメリザンド」作品80
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第2番ニ長調作品73
工藤俊幸指揮
小金井市民オーケストラ
令和7(2025)年5月18日、東京、小金井、小金井宮地楽器ホール(小金井市民交流センター)大ホール
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